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ミハエルの帰還

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朝からミハエルを見送る為にクラリスとフリードリヒは王宮へと急いだ。それを待ってたかのようにミハエルは部屋から出てくると


『何?わざわざ見送り?』 

嬉しそうである。


ミハエルは後ろに控えるフィリップスとテオドールに軽く手を挙げる。


『義兄上、お帰りになる前にご覧に入れたいものがあるのですが。』


フリードリヒの言葉にミハエルは

『何?』


ミハエルはフリードリヒらと共に王宮裏にあるハウスまで来ると


『何?』


興味深そうに観察しているミハエルにクラリスは

『私が先代から賜わりましたハウスですよ?ご存知ありませんでした?』


…は?

ミハエルは頭を巡らせると

『クラリス、待て待て。あの幼い頃に話していたドールハウス?』


『はい。』


…いやいやどこがドールなんだよ。


ミハエルは咳払いを一つするとクラリスに


『クラリス、これはドールハウスとは言わないだろ?』


額を抑えるミハエルにクラリスは


『さぁ、でもリザはここをドールハウスって呼んでたから…いわゆる名称よ。本当のお人形のおうちなわけないわ。国王が他国の王女への贈り物なのですから。』

淡々と話すクラリスにミハエルは


『クラリス、お前は肝心な事をよく割愛する傾向があるね?』 

これにはテオドールは深く頷いた。



『さぁ中へ。』


フリードリヒは小さな鍵を取り出し扉を開きミハエルを案内するとミハエルは慎重に足を踏み入れた。ぐるりと見渡し恐る恐る足を踏み出していく。


『コレは驚いた。よく出来ている…』

ミハエルはフリードリヒに視線を流すとフリードリヒは静かに頷いた。ミハエルは壁面に触れトントンと音を鳴らす。

『こ、これは…』

そして再び驚いたようにフリードリヒを見るもまたもフリードリヒは頷いた。


このハウス。複雑なカラクリが施されているだけでなく、壁一面は純金でできている。それをカモフラージュするかのように貼られているファンタジックな壁紙。

ミハエルはランズ王国からはビタ一文貰っていないと言っていたがビタ一文どころかガルフ王国とは桁違いの贈り物を賜っていた事になる。



ミハエルは複雑そうな表情でフリードリヒを見るもフリードリヒは久々となる王太子スマイルを炸裂させ破顔した。


…恐ろしいんだけど?ランズ王国。


ミハエルは妹が嫁いだ国ではあるがランズ王国の先を見る眼を今更ながら痛感したのである。



前を歩くクラリスとフリードリヒの背中を追いながら渋い顔をするミハエルにテオドールは


『殿下、そのようなお顔は似合いませんよ?』


ニヤリと笑うテオドールにミハエルは


『そういえばさ、テオドールだっけ?お前、クラリスに恋してるだろ?』


…は?何なんだ?藪から棒に


『私は妃殿下の側近ですが?』


ミハエルはいたずらっ子のように笑うと


『だって檻の中のライオンが子猫を食っちまわないなんてさ、その子猫を愛おしく思ってるから以外考えられないんだもん。』


…子どもか?


『殿下、恐れながら…妃殿下は学園に居た頃本の虫と呼ばれる程に本しかお友達が居ない人でしたが?』


…そんなんに恋するか!


『勤勉なのは王女としてお手本のようだ。』


『殿下、恐れながら…妃殿下は鉄パンツを履いていると揶揄されておりましたが?』


…そんなんに恋するか!



『素晴らしい。王女たるもの貞操は固くなければな。』



テオドールは怪訝そうにミハエルを見るもミハエルは嬉しそうだ。



『殿下、恐れながら。スラム街で護衛を自ら巻く妃殿下ですが?』



ミハエルは少し困ったように


『ま、まぁ昔から少しお転婆でもあったからね?』



…少しじゃねぇけどな?


『殿下、』


ミハエルは降参でも宣言するような表情で


『まだあるの?』



『恐れながら、妃殿下は自らスラムへ入り浸りますよ?』


ここまで来ると、もはや苦情。


『分かった分かった!こんなじゃじゃ馬だけどこれからも宜しく頼む。』


テオドールは尚も


『殿下、恐れながら』


辟易としながらテオドールを見るミハエルに


『人として何より大切なものをお持ちでございます。』


…は?


ミハエルは想定の外の言葉に固まると


『貴女の妹君がこの国に嫁いできて下さり
間違いなくランズ王国は活気溢れる国となりました。王族も今や一つになりつつある。』



…。なに?落としてからの持ち上げ?



『私は妃殿下には偉大な力があると思ってます。』


…いやいや今更フォロー?



『私は一生妃殿下の側近でありたいと願っていますよ。』


テオドールは眩しい笑顔をミハエルに送るとミハエルは戸惑いながらも


『そ。そうかありがとう。』


首を傾げながら前を行く2人を追った。


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