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恐るべしリントン王太子

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夜会も終え控室に集まっていた御一行さまにリントン王太子のミハエルが会いに訪れた。


『やぁ、お疲れ様。明日の朝早くにこちらを出るから、先に挨拶をと思ってね』 

穏やかな表情のミハエルを見て安堵するクラリス。

ミハエルはリラックスした表情で上着を脱ぐとテオドールの横に腰をおろした。

『にしても、ガルフ王国は何考えてんだか…』

アルフレッドが疲れた身体を伸ばしながら言うとフリードリヒも

『グランデル王国との縁談でガルフ王国は何を得るのだろうか?毒にはならないけれど蜜も無いよね。』


フリードリヒの隣に座るフィリップスがニヤリと笑いながら

『あれじゃないですか?ほら、真実の愛とやら。』


ヨハネスは驚いたように


『グランデル王女は聖なる力、持ってんの?』


顔を見合わせる面々にテオドールは


『寧ろ逆か?』


『逆?』


フリードリヒはテオドールを見た。



『いや、聖なる力は番でなくても力を発揮するんですよね?であれば今のガルフ王国、ミケル殿下にはその力が宿っているとは思えない。』


『だからせめて是が非でも聖なる力を持つ王女がほしいんだろう?』


アルフレッドの言葉にテオドールは少し考え込むと


『もちろんそれもあるでしょうけど、その力を他に取られたくないのでは?』


…?
…。



『例えば聖なる力を持っている可能性がある国。すなわち安定している国にグランデル王女を取られたくない。自分がオッドアイになれないなら他人もさせない的な。』


『うわぁ小っさ。』


クラリスは思わず心の声を漏らした。それを横目に楽しそうに微笑んでいるのはミハエル。ミハエルはテオドールに視線を向けると


『テオドール、君はなかなかやるね。』


そう言うと指を鳴らした。


『何でも帝国からグランデル王女をランズ王国が娶る方向で進んでいるとの情報が流れているらしいんだ。』











驚いた一同は互いに顔を見合わせるとヨハネスが


『待って、うちの王太子はすでに妻帯してますよ?』


『だね。でもランズ王国には後2人王子がいるもんね?』


その言葉にアルフレッド側近のファビウスが反応するもすぐに俯いた。ヨハネスは


『ファビウス。』


ファビウスはチラリとミハエルに視線を送るとまたもヨハネスが


『ファビウス!』


ファビウスは苦虫を噛み潰したように吐き出した。


『ランズ王国第3王子がグランデル王国サリナ王女の力を狙っているという噂があるとかないとか…』




『待て待て、狙うも何も。』


ヨハネスは珍しく感情をあらわに立ち上がった。ミハエルはにこやかに言う。

『まぁまぁフェイクニュースだから(笑)』


…当たり前だよ。


『でもさ、それにノコノコ乗る輩がいるとはね。こうも簡単にいくとは思っても見なかったけど。』


まるで見てきたかのように語るミハエルにクラリスは

『お兄様ったら、そんな適当な事おっしゃって大丈夫なのですか?』


『適当じゃないもん。だってそれを流させたのは私だから。』








『でもさ面白い程にこちらに都合よく動くもんだよね。ミケル殿も。』


固まる御一行さまを不思議そうに眺めるミハエルにヨハネスは


『殿下が流させた?』


『うん、そう。だってこうでもしないといつまでもクラリスに執着しそうじゃない?』

『確かに。』

頷くフリードリヒを横目にヨハネスは

『待て待て待て、何故私なのですか!それでは私が横取りされたみたいではないですか!』



慌てるヨハネスを楽しそうに


『だって君はクラリスを狙ってたんだからこれくらいしないと私の気が収まらないよ。』


…。だからって。


『ではフェイクニュースだったって事も責任持って宜しくお願いしますよ?』


ミハエルはニヤリと笑い


『そんな事しないよ?だって死ぬまでオッドアイを心待ちにするミケル殿も見たいじゃん。』


軽く話すミハエルを恐ろしそうに眺める御一行さまであった。


…やべぇ、半端なねえ。


テオドールは隣でほくそ笑むミハエルを怪訝そうに見つめた。

その視線を嬉しそうに受け入れるミハエルであった。
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