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ランズ王国王太子妃
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あれから王宮でクラリスへの視線がまるで汚物でも見るかのようになってきている。それに伴い勢力を拡大する第1王子妃のエリザベス。
ある日の午後、ガセボから執務室へ向かうクラリスとテオドールの前から、ゾロゾロと侍女を引き連れたエリザベス御一行さまが現れた。
…夫婦揃って。
テオドールがため息を付くも、すぐ心配が過る。
…まさか、大丈夫だろうな?
主であるクラリスは憧れの眼差しを送るエリザベスに平伏すのではないかと案ずるもその心配は不要であった。
勢力拡大中の御一行。侍女らは全てパナン王国から連れてきた者で斉えられている為、侍女らにとってランズ王国の序列云々など我感せず。
堂々と廊下の中央を練り歩き、クラリスの前までやってくるとクラリスは小さく微笑む。エリザベスは口角をギュインと上げ大きく微笑みを作った。どれ程の時間が過ぎたか…お互い譲らない路にテオドールはエリザベスの侍女に小さく声を掛けた。
『王太子妃がお通りです。』
侍女らは怪訝そうにクラリスを見るとクラリスはコテンと首を傾げて微笑んだ。
『何してるの?』
軽い声の主はクラリスの後ろからやってきたヨハネス第3王子である。
エリザベス御一行はヨハネスを見るとさっと廊下の脇に寄りヨハネスの路を開けた。
…出来るんかい!
テオドールは眉間にシワを刻むと侍女らを睨みつけた。
『姉上、どうされました?あっこれはエリザベス王女って違うか、エリザベス様も姉上だね。どうしようか(笑)』
先程までの重い空気を吹き飛ばす威力がこのヨハネスにはあった。エリザベスは嬉しそうに微笑むとヨハネスは
『でも、クラリス姉は王太子妃だからね。そこはきちんと弁えないとエリザベス王女のお国が知れるよ。』
そしてその視線を侍女らに向け尚も
『君たちの忠誠には感服するよ。だけどね、ここはランズ王国だ。そういうのはお国へ帰ってからやってくれ。』
そう言うと開けられた路にクラリスをエスコートし先に歩みを進めた。
執務室まで来るとテオドールは
『殿下、お茶でもいかがですか?』
テオドールの珍しい言葉にヨハネスは
『テオドールからのお誘いなんて怖すぎるよ。毒でも盛られるといけないからね。』
楽しそうに笑うとクラリスの手の甲にキスを落とすとそのまま執務室を後にした。
放心するクラリスにテオドールは
『どうかされました?まぁ妃殿下にしては、あのエリザベス様への虚勢はしんどかったでしょうね。って聞いてます?』
目を2、3度パチクリさせると
『いえ、聞いてない。』
…おい!
手の甲を見つめるクラリスにテオドールは恐る恐る
『ヨハネス様のキスがどうかされました?』
…。
『手の甲へのキスは挨拶ですから』
…。
『リントン王国では違うのですか?』
…。
…おい!何とか言えよ!
『妃殿下!』
クラリスは我に返ると
『あ、あぁそうね。ってか私にしては頑張った方なんだからたまには褒めてよ。』
…側近に褒めを乞うなよ。
『よく頑張りました。まさか路をあけられるのではないかとハラハラしましたよ。』
クラリスはケラケラ笑いながら
『アハハハ!そんな事しないわよ。路を開ける開けないであんなくだらない時間を過ごさなきゃなんないなら喜んであけるわ。だけど今は一応王太子妃よ。そんな事したら殿下にご迷惑が掛るもの。』
クラリスは鼻歌を歌いながら執務室に入ると窓を開け新しい空気を部屋に流し込んだ。
ある日の午後、ガセボから執務室へ向かうクラリスとテオドールの前から、ゾロゾロと侍女を引き連れたエリザベス御一行さまが現れた。
…夫婦揃って。
テオドールがため息を付くも、すぐ心配が過る。
…まさか、大丈夫だろうな?
主であるクラリスは憧れの眼差しを送るエリザベスに平伏すのではないかと案ずるもその心配は不要であった。
勢力拡大中の御一行。侍女らは全てパナン王国から連れてきた者で斉えられている為、侍女らにとってランズ王国の序列云々など我感せず。
堂々と廊下の中央を練り歩き、クラリスの前までやってくるとクラリスは小さく微笑む。エリザベスは口角をギュインと上げ大きく微笑みを作った。どれ程の時間が過ぎたか…お互い譲らない路にテオドールはエリザベスの侍女に小さく声を掛けた。
『王太子妃がお通りです。』
侍女らは怪訝そうにクラリスを見るとクラリスはコテンと首を傾げて微笑んだ。
『何してるの?』
軽い声の主はクラリスの後ろからやってきたヨハネス第3王子である。
エリザベス御一行はヨハネスを見るとさっと廊下の脇に寄りヨハネスの路を開けた。
…出来るんかい!
テオドールは眉間にシワを刻むと侍女らを睨みつけた。
『姉上、どうされました?あっこれはエリザベス王女って違うか、エリザベス様も姉上だね。どうしようか(笑)』
先程までの重い空気を吹き飛ばす威力がこのヨハネスにはあった。エリザベスは嬉しそうに微笑むとヨハネスは
『でも、クラリス姉は王太子妃だからね。そこはきちんと弁えないとエリザベス王女のお国が知れるよ。』
そしてその視線を侍女らに向け尚も
『君たちの忠誠には感服するよ。だけどね、ここはランズ王国だ。そういうのはお国へ帰ってからやってくれ。』
そう言うと開けられた路にクラリスをエスコートし先に歩みを進めた。
執務室まで来るとテオドールは
『殿下、お茶でもいかがですか?』
テオドールの珍しい言葉にヨハネスは
『テオドールからのお誘いなんて怖すぎるよ。毒でも盛られるといけないからね。』
楽しそうに笑うとクラリスの手の甲にキスを落とすとそのまま執務室を後にした。
放心するクラリスにテオドールは
『どうかされました?まぁ妃殿下にしては、あのエリザベス様への虚勢はしんどかったでしょうね。って聞いてます?』
目を2、3度パチクリさせると
『いえ、聞いてない。』
…おい!
手の甲を見つめるクラリスにテオドールは恐る恐る
『ヨハネス様のキスがどうかされました?』
…。
『手の甲へのキスは挨拶ですから』
…。
『リントン王国では違うのですか?』
…。
…おい!何とか言えよ!
『妃殿下!』
クラリスは我に返ると
『あ、あぁそうね。ってか私にしては頑張った方なんだからたまには褒めてよ。』
…側近に褒めを乞うなよ。
『よく頑張りました。まさか路をあけられるのではないかとハラハラしましたよ。』
クラリスはケラケラ笑いながら
『アハハハ!そんな事しないわよ。路を開ける開けないであんなくだらない時間を過ごさなきゃなんないなら喜んであけるわ。だけど今は一応王太子妃よ。そんな事したら殿下にご迷惑が掛るもの。』
クラリスは鼻歌を歌いながら執務室に入ると窓を開け新しい空気を部屋に流し込んだ。
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