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ウィリアムは珍しく動揺していた。
充実した日々、思い通りに進む執務に満足はしている。目先に悩みなどは一つもない。むしろ妃を迎えてより順調に進む政。
相変わらずパーテーションの向こう側で繰り広げられる会話に振り回されている節はあるが、それらはどれも大変価値ある会話で聞いているウィリアムにとっても心地良い時間でもあった。
元々は自分の右腕になるであろう弟ハインリッヒの実力。表舞台には出る事をせず、怠惰というべき生活を送る弟を内心、怒りと心配をしていた。その弟が日々パーテーションの向こう側で執務に取り組んでいるのが嬉しいような何とも複雑な心境であった。
目の前には先日パーテーションの向こう側で議論されていた広場の噴水の議案書。
…なるほど、うまく出来ている。
読み込んで行くと予算的にも抑えられていて完璧だ。
…なるほど、この計算式だな?エレノアが苦戦していたのは。
そんな時ウィリアムの脳裏に一つのアイデアが
思い浮かぶ。
考える前にウィリアムは口を開いていた。
『ねえ、この噴水デザインだけど…』
ウィリアムが呟くとパーテーションの向こう側から3人が駆け寄ってデスク周りに集結する。
驚くテオドールの前に
『デザインは、ハインリが?』
『そうですが、何かありますか?』
『いや、完璧だがこの周りに花壇か何か加えられないか?』
『花壇ですか?』
2人のやり取りに黙って見守る3人。
『時間によって繰り出される水のアートだ。夜にはライトアップされそれは幻想的であろうな。だがなそうゆうものは近く手に触れられないからこそより幻想的に映るのではないか?それに中には噴水に入り込もうとする輩も出てくるだろうしね。』
『なるほど、兄上の仰る通りですね。手に触れられないからこそか…』
頭を悩ますハインリッヒにウィリアムはササッとなぶり書きではあるがデザインを描き寸法なども一瞬で計算式を立てた。
『いいですね。うん。見てみて姫!』
ハインリッヒはエレノアに声を掛ける。
『はい、既に見ておりますわ。季節毎にお花を植え替えればより素敵ですわ!』
ウィリアムは笑顔で頷くと
『いいね。いくつもの顔を楽しめる訳だ。』
兄弟の力作と妃の案が盛り込まれた事業が着手されるのはそれからまもなくであった。
日も暮れ始め執務室には、ウィリアムとテオドールがお茶を飲んでいた。
『テオ、どう思う?』
テオドールは不思議そうに
『何がですか?』
『…。いや、何でもない。』
ふと窓の外に視線を流すウィリアムにテオドールは
『ハインリッヒ様ですか?それとも妃殿下ですか?』
ウィリアムは驚いたようにテオドールを見る。
『分からないはずないでしょう(笑)どれだけの付き合いだよ。』
ウィリアムとテオドールは幼なじみで親友でもある。もちろんここにハロルドも加え3人の仲は不滅である。もちろん執務中は家臣として仕えている。
『テオ、今日はこれから時間はあるか?』
充実した日々、思い通りに進む執務に満足はしている。目先に悩みなどは一つもない。むしろ妃を迎えてより順調に進む政。
相変わらずパーテーションの向こう側で繰り広げられる会話に振り回されている節はあるが、それらはどれも大変価値ある会話で聞いているウィリアムにとっても心地良い時間でもあった。
元々は自分の右腕になるであろう弟ハインリッヒの実力。表舞台には出る事をせず、怠惰というべき生活を送る弟を内心、怒りと心配をしていた。その弟が日々パーテーションの向こう側で執務に取り組んでいるのが嬉しいような何とも複雑な心境であった。
目の前には先日パーテーションの向こう側で議論されていた広場の噴水の議案書。
…なるほど、うまく出来ている。
読み込んで行くと予算的にも抑えられていて完璧だ。
…なるほど、この計算式だな?エレノアが苦戦していたのは。
そんな時ウィリアムの脳裏に一つのアイデアが
思い浮かぶ。
考える前にウィリアムは口を開いていた。
『ねえ、この噴水デザインだけど…』
ウィリアムが呟くとパーテーションの向こう側から3人が駆け寄ってデスク周りに集結する。
驚くテオドールの前に
『デザインは、ハインリが?』
『そうですが、何かありますか?』
『いや、完璧だがこの周りに花壇か何か加えられないか?』
『花壇ですか?』
2人のやり取りに黙って見守る3人。
『時間によって繰り出される水のアートだ。夜にはライトアップされそれは幻想的であろうな。だがなそうゆうものは近く手に触れられないからこそより幻想的に映るのではないか?それに中には噴水に入り込もうとする輩も出てくるだろうしね。』
『なるほど、兄上の仰る通りですね。手に触れられないからこそか…』
頭を悩ますハインリッヒにウィリアムはササッとなぶり書きではあるがデザインを描き寸法なども一瞬で計算式を立てた。
『いいですね。うん。見てみて姫!』
ハインリッヒはエレノアに声を掛ける。
『はい、既に見ておりますわ。季節毎にお花を植え替えればより素敵ですわ!』
ウィリアムは笑顔で頷くと
『いいね。いくつもの顔を楽しめる訳だ。』
兄弟の力作と妃の案が盛り込まれた事業が着手されるのはそれからまもなくであった。
日も暮れ始め執務室には、ウィリアムとテオドールがお茶を飲んでいた。
『テオ、どう思う?』
テオドールは不思議そうに
『何がですか?』
『…。いや、何でもない。』
ふと窓の外に視線を流すウィリアムにテオドールは
『ハインリッヒ様ですか?それとも妃殿下ですか?』
ウィリアムは驚いたようにテオドールを見る。
『分からないはずないでしょう(笑)どれだけの付き合いだよ。』
ウィリアムとテオドールは幼なじみで親友でもある。もちろんここにハロルドも加え3人の仲は不滅である。もちろん執務中は家臣として仕えている。
『テオ、今日はこれから時間はあるか?』
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