上 下
93 / 94

弟2人の内緒話

しおりを挟む
『兄上、ありがとう』


エリックがヨハネスの執務室にお酒を片手に現れた。


『お前、そんなの持って現れるなよ…』


呆れるヨハネスにエリックは


『どうして?もうこんな時間だよ?』


ヨハネスが窓を見ると既に日が暮れ始めていた。
エリックに付きそうようにソファに腰をおろした。


『聞いたよ。散々叱られたって?義姉上に。』


ヨハネスはバツの悪そうに


『お前と違い王子様オーラが半端ないからね?』


エリックはニヤリと笑いながら


『キャスも散々だったてね?初めてリンゴを噛ったって騒いでたよ(笑)』


…俺もだけどね?



『新鮮だったろ?たまには。』


楽しそうなエリックに

『俺はもういいよ。自分の世間知らずに自己嫌悪だよ。』


『我々の世間とあそこの世間は違うからね。気にしなくて大丈夫だよ。』


…お前に心配してもらわなくてもいいけどね?



ヨハネスは注がれたワインを優雅に口に含んだ。

『なに?兄上どうしたの?』


『キャス…』


エリックは不思議そうに


『キャス?キャスがどうしたの?』


ヨハネスは少し考え


『嫁いで来た時はさ、幼い王女だと思ってたんだ。それから先がさキャスの印象がコロコロ変わるんだ。エリーヌのように仮面脱着式とかではなく、あれ全部素なんだよ。』


『何?気になるの?』


ヨハネスは否定もせず


『もちろん真実の愛はエリーヌにある。』

エリックも

『私もマリーヌにあるよ。』


頷く2人は頭を悩ませながら

『『でもなんか気になるんだよ。』』


『確かに容姿は美しい。だけど、それを感じさせない砕けた性格だし、表に出れば威厳も何故か湧き出てくるだろ?』


語るヨハネスにエリックもまた


『才女であるのにその素振りを微塵も出さず、要所でサラッと出てくるし、生まれながらの王族の品格もある。それでいて拗ねると可愛い♡』


納得する2人は顔を見合わせる。


『兄上は幸せ者だ…』

エリックがそう吐き捨てるとヨハネスもまた

『我が国の王太子だからね。魅力的な王太子妃が来てくれて喜ぶ所だ。』


『だけど。久々に帰国して兄上は変わったよね?あんなに笑顔を量産する王太子じゃなかったよね?』


『それこそキャスの力だよ。キャスも初めは苦労していたからね。ってかさムヌク王国の王子3人が夢中になるキャスって何者なんだよ…』


ヨハネスの呟きにエリックは


『生まれながらの王女らしくない王女って所だね。』 


2人は軽くワインを空けるとお互いの私室へと戻って行った。



その後エリックの手配により黄色い妖精の絵姿がムヌク王国に持ち込まれ王宮で密かに楽しむ2人であった。もちろん当の本人と各国に存在する黄色い妖精の絵姿の回収を目論むカールトンは知る由も無い。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

うちの王族が詰んでると思うので、婚約を解消するか、白い結婚。そうじゃなければ、愛人を認めてくれるかしら?

月白ヤトヒコ
恋愛
「婚約を解消するか、白い結婚。そうじゃなければ、愛人を認めてくれるかしら?」 わたしは、婚約者にそう切り出した。 「どうして、と聞いても?」 「……うちの王族って、詰んでると思うのよねぇ」 わたしは、重い口を開いた。 愛だけでは、どうにもならない問題があるの。お願いだから、わかってちょうだい。 設定はふわっと。

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉

海林檎
恋愛
※1月4日12時完結 全てが嘘でした。 貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。 婚約破棄できるように。 人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。 貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。 貴方とあの子の仲を取り持ったり···· 私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

さよなら私の愛しい人

ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。 ※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます! ※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。

二人目の夫ができるので

杉本凪咲
恋愛
辺境伯令嬢に生を受けた私は、公爵家の彼と結婚をした。 しかし彼は私を裏切り、他の女性と関係を持つ。 完全に愛が無くなった私は……

処理中です...