王女の企み【完】

makojou

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大王国の夜会

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王国名と名前をアナウンスされるとファンファーレが鳴る。エスコートの王子と王女は入場すると、会場の真ん中でエスコートの王子は後方の、大王国貴族らの前へと移り、王女は執事にエスコートされ正面の椅子に腰を下ろす。

ヴェルヴァス王国はまだまだ先。


『ったく、くだらぬ事を‥まるで見世物ではないか。だからこんな所来るのを反対したんだ。』

ブツブツ文句を並べるアルフレッド。先程からの重い空気はますます重くなる。

ルリネットも見世物には同感であったが黙って耐えていた。


そんな時、我が国を呼ぶアナウンスと共にファンファーレが成り、扉が開く。

華やかな会場、街で見た色とりどりの花華の様な衣装に身を包む令嬢達。

私もカーテシーをし顔を上げると、隣のアルお兄様は‥


なんと、完全無欠の王子様。王子様が令嬢の方をみて微笑むとキャー♡と黄色い声が上がる。


そんな顔できるんかい!初めて見たわ!


そしてアルお兄様は、その声の中に向かって歩いていくと後を追う令嬢までいるではないか‥

私の方は、さっきの執事にエスコートされ正面の椅子に座る。

王女の数は、1.2.3.4.5‥12人か。
ここで何としても探し出さなければ!私の未来のお義姉様を。


そんなこんなで、開会の儀とやらも終わり、その後の社交は必要ないので足早に部屋に戻る2人。




『疲れたな‥』
ボソっと呟きソファに腰を下ろす。

そりゃ、普段撒かない愛想をふりまいておられたのだから疲れるでしょうよ。

私はモニカの淹れてくれた紅茶に癒やされ思い付いたかのようにアルお兄様に抗議する。

『お兄様~!どうして私の執事はハズレなのですか~?』

ギョっとし、エドワードをチラリと見て

『お、おい。何て事を言うのだ!』

『どうして?ねえ、エドワード、この執事はどうやって割り当てされてるの?』


眉間にシワを寄せるエドワードを見ながら


『ルリネット、この度の王太子妃選びの際の執事は本来の執事ではないと先程言ったであろう?』
笑顔強ばるアルフレッド。


『聞いたわよ。でも今このときは私の執事なのでしょう?王族だからってこちらが気を使っていては、いつまでたっても距離は遠いまま。そんなの執事じゃないし本末転倒だわ。だったら普通の執事が欲しいわ!』


『エドワード、申し訳ないけど、地図とチェスの駒だけ持って来てくださらない?』


不思議そうなエドワードであったが、無理難題ではないので
『お待ち下さいませ。』

と言って部屋を出て行った。



『おい!リネット!何がハズレなのだ?』

『だって、お兄様が教えてくれたのよ?ダリス大王国の王子はサルばかりって。』

『サルとは言ってない!』


『女に見境ないって、言ってたじゃない?だから王子ってことはハズレでしょ?』



『ゴホン‥私はここにおりますが‥出来ましたら居らぬ所でお願いしたい。』

大きな溜息と共に話し終わるエドワードに

『あらぁ、仕事が早いわ!お兄様あながちハズレでは無いかもですよ!』


エドワードが持ってきた地図を受け取り、テーブルに広げる。そこにチェスな駒を並べていく。




『王女、この位置取りは?』

地図を見ながら頭を傾げるエドワードに

『エドワードは頭が弱いのね。この駒はその国の王女よ』


『‥それで?』


『だ、か、ら~今はこの自国の地図の上。これからの日程でどなたがこのダリス大王国の王太子妃の椅子に近づいていくかを追うのよ。』

『‥何のために。』


『何のためって。回りの動向は気になるでしょう?』


『王女、この山間部に埋もれているのは?』


『失礼ね。埋もれてなんていないわよ。山間部、山ね。山の上から高みの見物よ。』


『‥どなたが?』


『ねえ、貴方バカなの?見てみなさいよ。参加国の王女で一人だけ自国に立っていないのは誰?』



『ルリネット王女ですが。』


『そうよ。私は山の上から動向を確認しながら、この地図を更新していくのよ。』


『では、この海の上のへんな枠は何ですか?』


『へんな枠ではなくて、これはボート。どんな所でも脱落者は出るでしょう?その駒を地図上から消すのは忍びないもの。そんな時の脱出用ボートよ。』


『‥』


2人の様子をソファに座って眺めていたアルフレッドだが、流石に申し訳なく思い、エドワードに言う。


『ハズレは寧ろエドワードだったな。すまない‥』


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