上 下
80 / 93

懐かしい友

しおりを挟む
リデュアンネが謹慎して1ヶ月が経った頃、アルフレッドは町で珍しい人と出会った。

『ルイザじゃないか?どうしたの?』

リデュアンネの侍女でもあるルイザは候爵令嬢でもありリデュアンネとアルフレッドの幼なじみでもある。

『殿下、お久しぶりにございます。』

『やめてくれ、私たちだけしかいないのだ』

ルイザを見ると、明らかに変装をしている。これは偶然では無く、自分を待っていたのだろう。


『ルイザ、時間はある?久しぶりなんだからお茶でもしていこうよ』

わざと無邪気に誘うとルイザは少しだけならと付いてきた。




『‥で?話しがあるんじゃないの?』

黙り込むルイザに

『リデュの事か‥。あれは酷いね。今、情報の出どころを調べさせてるから、もう少し待っていて。』

『‥』


『ソフィアもとても気にしているんだ。根も葉もない事を書くなんて許せないって。』


目の前にいるルイザは昔から、考えを話す前に頭で逡巡させる癖がある。ルイザはソフィアと同じく候爵令嬢であるのに、何故か幼なじみのリデュに仕えている。ルイザほどの美貌であれば婚約者なんてすぐに見付かるだろうに。
黒い長い髪を結い、メガネを掛けているルイザが小さく口を開く。


『殿下は、何故いきなり婚約を?』


『いきなりって、まぁいつかはしなきゃだしね。それに私が妻帯もせずリデュたちの側に仕えるのもあまりよろしくないだろう?一応元婚約者だしね。』

『やはり、そこですか‥』


『‥?まぁ、ルイザも知っての通り我々の婚姻は政略結婚がほとんどだからね。結婚してから育んでいくのも悪くないと思わない?』


『それがマーサ候爵家ですか‥』

『‥?いけない?』


『今からお話しすることは、私の独り言です。いいですか?』


『‥もちろん』



『リデュは昔から公爵令嬢として厳しく育てられてきたわ』


『そうだね』


『リデュは公爵令嬢だったけれど、結構抜けている所があるわ。』


『うん、天然ね。』


『でも、それって貴方が王子様の仮面を付けて社交界を乗り切ってきた様に、リデュは脳内お花畑にして社交界を乗り切ってきていたの。』

『どうゆうこと?』


『王太子の婚約者よ?妬みも半端ないわ。それを相手にせず天然の振りをして乗り切っていたのよ。』


『‥』


『それにね、リデュは貴方の婚約者ではあったけれど、他国の王太子からの求婚も一度や二度ではなかったわ。』

『えっ?』

『他国の王太子がお忍びでいきなり公爵家に来るのよ?追い返す訳にもいかないわ。そんな時は王太子の婚約者としてリデュは逃げずに対処していたわ。いつも私には王子様がいますって。それこそ天然を装ってね。リデュは少し幼い所があるから愛など恋など知らなかったかもしれない。それでも貴方を大切に想っていたわ。アルフレッド‥。』


『‥何が言いたい?』


『リデュは貴方の幸せの為に我慢しているわ。自分だけが幸せになるのではなくあなたの幸せも誰よりも願っている。貴方の婚約者が東国一の才女であるなら、リデュは西国一の才女だわ。』


『リデュの我慢って?』


『それは貴方が考えることよ。アルフレッド』




そう言い残しルイザは去って言った。



『リデュアンネ・フォン・トゥモルデン』


私のかつての婚約者。今では遠くへ行ってしまった‥こんなにも近くに居るのに遠い。


これがアルフレッドの現実である。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

公爵令嬢の婚約解消宣言

宵闇 月
恋愛
拗らせ王太子と婚約者の公爵令嬢のお話。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました

コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…

【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと

恋愛
陽も沈み始めた森の中。 獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。 それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。 何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。 ※ ・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。 ・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。

処理中です...