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殿下との距離

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『で?何がどうした?』

部屋に戻るとソファにゆっくりと腰を下ろし長い足を組む殿下は真っ直ぐに私を見つめた。

声にならない私に殿下はそっと立ち上がりハーブティーを差し出した。

『何も入ってはおらん』

目を見開く私にニヤリと笑い
『大丈夫だ』と言う。

再び前に座ると静かに話しだした。

『何故、俺に話さない?アルフレッドか?』

すぐさま首を振る私に

『じゃあ何故だ?』

殿下はじっと私の言葉を待っている。

『私はオリビア帝国の復活を願っております』

『ほぉ‥それで?』

それ以上の言葉が出ない私に代わり殿下が口を開く

『それは両国皆願っておるだろう。西国も復活に向けて動いているだろうが‥それは我が国とて同じ。』

『…戦争ですか?』

『リデュアンネの持っているものが東国の目に触れれば、そうなるであろうな。だからこそ話せないのだろう?』

この男は知っている。全てを知っているのだ。

『クックックッそうだ、知っている。リデュアンネは心の声がダダ漏れだぞ。』

『ならば何故?』

『何故だろうな‥そうだ、リデュアンネから聞きたいからかもしれないな。』

こちらを見つめる眼差しが温かく勘違いしそうになる。信じてもいいの?でもたかが人質。お飾りの王太子妃。

『そうか、お飾りなのがいけないな。お飾りだからくだらない事を考えだすのだな。我が妻は。』

静かに立ち上がり私の横に腰をおろすと一気に私をを抱き寄せた。彫刻の様な顔が私の目を射抜く。恐ろしい感覚に包まれる。怖い。涙が溢れてくる。その時、優しく唇が重なった。先程までの恐怖が何故か温かく幸せな感覚と変わっていく。

軽く重なる程度であった口づけがだんだんと激しくいつしか、口を開けられ舌が入ってくる。ここまで来た時には私は私がどうなっているのかも解らなくなっていた。


極度の緊張からいつしか私は意識を手放していた。
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