上 下
17 / 93

西国からの使者

しおりを挟む
いつもの様に執務室に午前中は籠もっていたある日。西国からの使者が東国に来ている事をカインから聞いた。

『ご存知ありませんか?アンドレ・ブロイとか名乗る者がリデュアンネ様にお目通りをとの事でございました。何でも幼馴染とかで』

アンドレ・ブロイ‥ブロイ候爵の次男だったはず。
幼馴染と言われても夜会でお目にかかる程度。
‥なに?あっ、アルフレッド殿下の側近になったとか言ってたかしら。会わない訳にはいかないか‥

『アンドレ様ね。分かったわ。お通しして』

しばらくしてアンドレ様がカインとともに執務室に来られた。
『リデュアンネ様、アンドレ・ブロイ様をお連れしました。』

『入って』

扉が開くと私が声を掛ける前に、カインを押し退け大袈裟な程に手を広げ
『リデュ!久しぶりだね~あっ今は妃殿下とお呼びしなければなりませんね。』
わざとらしく敬語に変えて話すとカインに積もる話があるからと部屋を出る様促す。
『しかし!』
譲らないカインであったが私が
『そうね懐かしい話もあるし、少しだけテオドールに明日のスケジュールを確認してきてくれる?』

渋々部屋を出るカインを横目にアンドレ様はニヤリと口角を、上げた。


『リデュアンネ嬢。いや王太子妃様?か。』
棘のある物言いに私は
『リデュアンネで結構です』

『そうか、ではリデュアンネ。単刀直入に言う。
我が国では、帝国復活の動きがある。もちろんアルフレッド殿下が行く行くは皇帝になられる。そこでだ。リデュアンネがするべき事がある。わかるな?』

『すみません、わかりません』

帝国復活の動き、これは私も大賛成であるがそこは友好的解決の元、分裂した両国が一つにならなければ意味がない。

『はあ、そんなだからここに送られるんだ。クラウディアは今や西国を守る聖女であり王太子妃だ。君が公爵令嬢の役割を果たさずして誰が果たすんだよ。しっかりしてくれよ。全てのピースを埋めるには君が果たさなくては成り立たないんだからね。』

随分と勝手な言い分だ。がしかしトゥモルデン家は西国にあるのも事実。
これを盛れ‥と手渡された小さな小瓶。

おそらくは毒であろう。不要な人間を消す最も卑怯なものを手渡された私は手が震えた。

『なに、簡単なことさ。夜、君が彼と子づくりに励む前に酒でも、飲むだろう?これを毎日少しづつ盛る。即効性はないから君に疑いが向くことはない。そしたら君はアルフレッド殿下の側妃にでもなればいいさ』

夜?毎日?子づくり?
私の表情を読み取ったのか、

『まさか、白い結婚なわけ?嘘だろ‥白い結婚を、経て国にオメオメと帰ってくるつもりだったの?君の席はもう無いよ。本当勘弁してくれよ。使えないな。とにかくくだらない夢は捨て君のやるべき事を果たしてくれ。これはアルフレッド殿下の命令だ。


アルフレッド殿下。貴方が望んでいた事はこれですか?
しばらく放心状態であった私であったが、カインが戻って来るとアンドレ様は
『時間ですね。久々過ぎて積もる話が出来て光栄でした。どうぞ妃殿下も、お元気で』
と去って行った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの剣になりたい

四季
恋愛
——思えば、それがすべての始まりだった。 親や使用人らと退屈ながら穏やかな日々を送っていた令嬢、エアリ・フィールド。 彼女はある夜、買い物を終え村へ帰る途中の森で、気を失っている見知らぬ少年リゴールと出会う。 だが、その時エアリはまだ知らない。 彼との邂逅が、己の人生に大きな変化をもたらすということを——。 美しかったホワイトスター。 憎しみに満ちるブラックスター。 そして、穏やかで平凡な地上界。 近くて遠い三つの世界。これは、そこに生きる人々の物語。 著作者:四季 無断転載は固く禁じます。 ※2019.2.10~2019.9.22 に執筆したものです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

結婚して5年、初めて口を利きました

宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。 ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。 その二人が5年の月日を経て邂逅するとき

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。

拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。 一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。 残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

処理中です...