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決着の時

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翌日またも広間で前日に引き続きアン王女がキャンキャンと吠えていた。

この日は国王は前日の身体的疲労から広間には現れ無かった。


『殿下、どうゆうおつもり?私は昨日自由に王宮を出歩く事も出来ず、あんな小さな部屋に閉じ込められ!失礼にも程があるわよ?』

アレクセイはいきなりのカウンターパンチに辟易とした表情で


『元より自由に動き回る事なんて出来て無かったよ。昨日話したであろう?それにね?今君は隣国の王女としてもてなされている立場じゃない事わからない?』

『だから昨日も申しましたが、ルシャードも王妃も言わばグル。何とでも口裏は合わせられるのよ?』


『何のために?君を巻き込んだ所で母上のした事が無くなる訳じゃないんだからね?』


…。


やっと大人しくなった王女を横目にヴィオランテは小さく息を吐いた。ヴィオランテとてメープル王国の王妃。何も国同士を巻き込むつもりなどとうてい無かったのである。

『母上。』

いきなり掛けられ言葉にヴィオランテは我に返ったかのようにアレクセイを見た。


『母上、ステファニーの事は申し訳ないと思っております。だからこそ母上のお怒りが鎮まるのを私はただ待つのみでした。しかし今となってはもうステファニーはロマニア王妃となりレオナルド国王と仲睦まじく暮らしております。我々はそれを安堵し喜ぶのが筋ではないのですか?でなければ母上のステファニーへの気持ちはただのエゴでしかありませんよ?』


『エゴ?』


『そうです。ステファニーが我が国の王太子妃となるのはステファニーの為ではなくただ母上のエゴ。本当にステファニーの事を思ってらしたのであればここは喜ばれるはずです。』


『エゴ…、わ、私は自分のエゴの為に…』


ヴィオランテはゆっくりとヴィクトリアへ視線を流した。その視線を受けたヴィクトリアは


『ヴィオランテ様。それがエゴであろうと何であろうと貴女の気持ちは至極真っ当ですわ。この国の為に幼い頃からステファニー様に時間も費用も掛け育てられた所に、わけのわからない出来損ないがその椅子をかっさらっていったようなのなもの。私とてその立場なら同じように考えたと思います。』

ヴィオランテは驚いたようにヴィクトリアを見ると目を見開き次の言葉が見つから無かった。


『もし許して頂けるのであれば、貴女の大切な息子である殿下の評判を公式の面前で地に落とした私が言うのも何ですが、必ずや殿下、いえ我が国の信頼を取り戻す様に尽力する事をお約束いたします。』


…。


『今の私はとても悔しいのです。貴女の息子である殿下が、私との婚儀がおかしくなっていた頃と揶揄されている事が。私こそおかしくなっていたのだと思います。大切な息子、大切な夫の価値を過小に評価されている事がとてもやるせないのです。気持ちは同じですわ、お義母様。』


ヴィオランテは言葉を失い頭を逡巡させていた。


『殿下、私は昨日図書室に向かう中、知らない扉を開いてしまいました。好奇心からそのまま歩みを進めあの部屋に入り込んだ所を皆さんにお助け頂いたのですわ。このようなご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした。』


誰もが知る真実を前にヴィクトリアは深々と頭を垂れた。



…。


…。


…。


アレクセイ、レオナルド、ルシャードは慎重な面持ちでそれぞれ頭を巡らせていた。


『ほらね?さぁ私は自国に戻りますわ。』



この空気の中、一人だけ空気の読めない王女が高らかに笑っていた。











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