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初めての夜
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二人で盛り上がりあっという間に時間が過ぎた。
「プルルルル」
「お時間となりまーす」
終わらないで欲しい時間はあっという間だった。
「そろそろ帰ろうか」
「うん。付き合ってくれてありがとう」
お礼を言いたいのはこっちだ。
お会計を済ませ店を出る。
「楽しかった。また行こう。」
勇気を出して振り絞った言葉だった。
「そうだね。」
いつもの冷静な彼女に戻っていた。
雨も止んで二人で駅に向かう。
「…。」
「…。」
改札を抜けて同じホームで電車を待っていた。
カラオケの最中にわかった事がある。
彼女の住んでる地域は一つ手前の駅だった。
気まずい空気の中アナウンスが流れる。
「電車が参ります。黄色い線の内側に…」
僕は幸せの気持ちでいっぱいだった。
でも一つだけ気になる事がある。
どうして彼女は駅に戻ってきたのだろう?
不思議に思いながら電車に乗る。
何とか話したいと思い話題を出した。
「拓実って知ってる?」
「拓実君?」
何故ここで彼の名前を出したのだろうか?
自分でも良くわからなかった。
「バイクで通ってるのは見掛けたよ。」
「僕も帰りに見掛けた。」
そんな話をしていたら彼女の駅に到着した。
「…。また明日ね」
寂しい思いを我慢して言葉を発した。
「ドアが閉まりますご注意ください」
アナウンスが流れドアが閉まる。
「なんで降りないの?」
彼女は降りずに僕の隣にいる。
電車が走りだした。
「帰りたくない」
僕は理解が出来なかった。
彼女は何を言っているんだろう?困惑した。
「親が心配するよ?」
内心は嬉しいが戸惑いもありこんな事を言っていた。
「私親いないの」
掛ける言葉が学生の僕には思い付かなかった。
僕も小学生の頃に親が離婚をして母子家庭になった。
でも二人いない事は経験が無い。
「嫌な事聞いてごめん。」
「大丈夫」
そんな事を話していたら最寄りの駅に到着した。
「じゃあ家来る?」
何を言っているんだろう。
初めて二人でカラオケに行っただけなのに。
言った後に恥ずかしくなった。
「行っていいなら…」
予想外の返答が来た。
確かに母親は夜職をしているので家には誰もいない。
心臓がドクドク波打つのがわかる。
「香奈の家には誰がいるの?」
気になってしまい思わず聞いてしまった。
「親戚の叔母とお兄ちゃん」
複雑な感じがしたのでそれ以上は聞かなかった。
夜道を二人で歩き我が家に向かう。
もちろん家に女性と向かうなど母親以外で初めてだ。
「ご飯買って行こうか」
「うん」
近くのコンビニに寄りお弁当を買った。
僕の家は三階建の二階の部屋だった。
階段を登る二人の足音が聞こえる。
隣の家はお風呂に子供と入ってるだろう
母親と子供の声が聞こえた。
「汚いけど…」
「お邪魔します。」
こうして香奈が初めて家に来た。
自分の部屋に入り二人で買ったお弁当を食べた。
「お兄ちゃんはどんな人なの?」
内心怖い兄貴だったらどうしよう?
など考えていた。
「あまり帰って来ない」
少し嫌な予感がした。
「叔母さんはどんな人?」
「私達にあまり興味が無い」
そこで香奈の顔が一瞬悲しそうな顔になったので
話題を変えた。
好きな歌手の話好きなテレビなどくだらない話をした。
気付いたら時間は二二時になっている。
「帰らなくて大丈夫?」
「うん。」
「泊まって行く?」
「そうする。」
物凄く緊張していた。
不安や楽しみなど含めてぐちゃぐちゃになっていた。
「シャワー借りていい?」
「えっ?うん。」
完全に動揺していた。香奈が家のお風呂に入る。
思春期の男だ。変な事が頭をよぎる。
タオルの位置を伝えて僕は部屋に戻った。
実際は十五分程だろうか?
僕には凄く長く感じた。
「ありがとう…」
濡れた髪に僕のTシャツを着た香奈が目の前にいた。
凄く色っぽく見えた。
「あまり見ないで。お風呂入って来たら?」
同棲などしてるカップルなどはこんな感じなのだろうか?
そんな事を思っていた。
「うん。入ってくる」
ドキドキした気持ちを抑えながら風呂に向かう。
風呂はシャンプーの匂いが充満していた。
「さっきまで香奈がいたのか…」
思春期の男には刺激が強かった。
いつも以上に丁寧に洗い焦って出て来たと
思われない様に時間をなるべく掛けた。
十分程でお風呂を出て部屋に戻った。
「パタン!」
香奈が手帳の様な物を隠す様に閉じた。
「早かったね」
香奈が言った。
「日記とか書くの?」
「…まぁそんな感じ」
そんな会話をした。
何故急いで隠す様にしたのだろう?
恥ずかしいのかな?ぐらいに考えていた。
「そろそろ寝ようか。」
香奈から言い出した。
ベッドは一つしかない為香奈をベッドに誘導して
僕は下に寝転がった。
「優しいね。」
香奈が静かに囁く様な声で言った。
経験が無い僕はどうしていいかわからなかった。
「一緒に寝る訳にはいかないよ。」
鼓動が早くなっているのを凄く感じた。
「おやすみ」
「おやすみ」
電気を消して寝ようとした。
三十分程経過しただろうか。
女性と一緒の部屋でなんか寝た事がない。
眠れる訳がない。
身体を起こしふと香奈の方を見た。
目を閉じて静かに呼吸をしていた。
緊張しないんだな。
少し悲しい気持ちになった。
「眠くないの?」
いきなり話かけられ、ドキッとした。
「寝付けなくて。」
「クスッ」
香奈が笑った。
「なんだよ。」
恐らくこの時僕は緊張しているのがバレバレだった。
「ごめん。緊張してて可愛いなと思って。」
図星だ。
「こっち来て」
突然のお誘いに戸惑った。
「寒いから二人の方が温かいでしょ?」
彼女なりの優しさだと思う。
「じゃあ失礼して」
勇気を出して彼女と同じ布団に入った。
布団の中は彼女の体温で温かった。
彼女に背を向ける様にして布団に入る。
「…。」
「…。」
何を話していいのかがわからない。
「ねぇ。なんで黙っているの?」
僕は所謂童貞だ。
こういう場面でどうしていいかわからない。
振り返り彼女を見るとこちらを見ていた。
目が合った。
少しの沈黙の後、彼女は静かに目を閉じる。
僕の鼓動が早くなる。
勇気を振り絞り彼女の唇に僕の唇を重ねた。
「そのまま続けて。」
彼女に言われるがまま唇を重ねながら、
上着に手を掛ける。
彼女の綺麗な肌が露わになった。
その日僕は一つ階段を登った。
「プルルルル」
「お時間となりまーす」
終わらないで欲しい時間はあっという間だった。
「そろそろ帰ろうか」
「うん。付き合ってくれてありがとう」
お礼を言いたいのはこっちだ。
お会計を済ませ店を出る。
「楽しかった。また行こう。」
勇気を出して振り絞った言葉だった。
「そうだね。」
いつもの冷静な彼女に戻っていた。
雨も止んで二人で駅に向かう。
「…。」
「…。」
改札を抜けて同じホームで電車を待っていた。
カラオケの最中にわかった事がある。
彼女の住んでる地域は一つ手前の駅だった。
気まずい空気の中アナウンスが流れる。
「電車が参ります。黄色い線の内側に…」
僕は幸せの気持ちでいっぱいだった。
でも一つだけ気になる事がある。
どうして彼女は駅に戻ってきたのだろう?
不思議に思いながら電車に乗る。
何とか話したいと思い話題を出した。
「拓実って知ってる?」
「拓実君?」
何故ここで彼の名前を出したのだろうか?
自分でも良くわからなかった。
「バイクで通ってるのは見掛けたよ。」
「僕も帰りに見掛けた。」
そんな話をしていたら彼女の駅に到着した。
「…。また明日ね」
寂しい思いを我慢して言葉を発した。
「ドアが閉まりますご注意ください」
アナウンスが流れドアが閉まる。
「なんで降りないの?」
彼女は降りずに僕の隣にいる。
電車が走りだした。
「帰りたくない」
僕は理解が出来なかった。
彼女は何を言っているんだろう?困惑した。
「親が心配するよ?」
内心は嬉しいが戸惑いもありこんな事を言っていた。
「私親いないの」
掛ける言葉が学生の僕には思い付かなかった。
僕も小学生の頃に親が離婚をして母子家庭になった。
でも二人いない事は経験が無い。
「嫌な事聞いてごめん。」
「大丈夫」
そんな事を話していたら最寄りの駅に到着した。
「じゃあ家来る?」
何を言っているんだろう。
初めて二人でカラオケに行っただけなのに。
言った後に恥ずかしくなった。
「行っていいなら…」
予想外の返答が来た。
確かに母親は夜職をしているので家には誰もいない。
心臓がドクドク波打つのがわかる。
「香奈の家には誰がいるの?」
気になってしまい思わず聞いてしまった。
「親戚の叔母とお兄ちゃん」
複雑な感じがしたのでそれ以上は聞かなかった。
夜道を二人で歩き我が家に向かう。
もちろん家に女性と向かうなど母親以外で初めてだ。
「ご飯買って行こうか」
「うん」
近くのコンビニに寄りお弁当を買った。
僕の家は三階建の二階の部屋だった。
階段を登る二人の足音が聞こえる。
隣の家はお風呂に子供と入ってるだろう
母親と子供の声が聞こえた。
「汚いけど…」
「お邪魔します。」
こうして香奈が初めて家に来た。
自分の部屋に入り二人で買ったお弁当を食べた。
「お兄ちゃんはどんな人なの?」
内心怖い兄貴だったらどうしよう?
など考えていた。
「あまり帰って来ない」
少し嫌な予感がした。
「叔母さんはどんな人?」
「私達にあまり興味が無い」
そこで香奈の顔が一瞬悲しそうな顔になったので
話題を変えた。
好きな歌手の話好きなテレビなどくだらない話をした。
気付いたら時間は二二時になっている。
「帰らなくて大丈夫?」
「うん。」
「泊まって行く?」
「そうする。」
物凄く緊張していた。
不安や楽しみなど含めてぐちゃぐちゃになっていた。
「シャワー借りていい?」
「えっ?うん。」
完全に動揺していた。香奈が家のお風呂に入る。
思春期の男だ。変な事が頭をよぎる。
タオルの位置を伝えて僕は部屋に戻った。
実際は十五分程だろうか?
僕には凄く長く感じた。
「ありがとう…」
濡れた髪に僕のTシャツを着た香奈が目の前にいた。
凄く色っぽく見えた。
「あまり見ないで。お風呂入って来たら?」
同棲などしてるカップルなどはこんな感じなのだろうか?
そんな事を思っていた。
「うん。入ってくる」
ドキドキした気持ちを抑えながら風呂に向かう。
風呂はシャンプーの匂いが充満していた。
「さっきまで香奈がいたのか…」
思春期の男には刺激が強かった。
いつも以上に丁寧に洗い焦って出て来たと
思われない様に時間をなるべく掛けた。
十分程でお風呂を出て部屋に戻った。
「パタン!」
香奈が手帳の様な物を隠す様に閉じた。
「早かったね」
香奈が言った。
「日記とか書くの?」
「…まぁそんな感じ」
そんな会話をした。
何故急いで隠す様にしたのだろう?
恥ずかしいのかな?ぐらいに考えていた。
「そろそろ寝ようか。」
香奈から言い出した。
ベッドは一つしかない為香奈をベッドに誘導して
僕は下に寝転がった。
「優しいね。」
香奈が静かに囁く様な声で言った。
経験が無い僕はどうしていいかわからなかった。
「一緒に寝る訳にはいかないよ。」
鼓動が早くなっているのを凄く感じた。
「おやすみ」
「おやすみ」
電気を消して寝ようとした。
三十分程経過しただろうか。
女性と一緒の部屋でなんか寝た事がない。
眠れる訳がない。
身体を起こしふと香奈の方を見た。
目を閉じて静かに呼吸をしていた。
緊張しないんだな。
少し悲しい気持ちになった。
「眠くないの?」
いきなり話かけられ、ドキッとした。
「寝付けなくて。」
「クスッ」
香奈が笑った。
「なんだよ。」
恐らくこの時僕は緊張しているのがバレバレだった。
「ごめん。緊張してて可愛いなと思って。」
図星だ。
「こっち来て」
突然のお誘いに戸惑った。
「寒いから二人の方が温かいでしょ?」
彼女なりの優しさだと思う。
「じゃあ失礼して」
勇気を出して彼女と同じ布団に入った。
布団の中は彼女の体温で温かった。
彼女に背を向ける様にして布団に入る。
「…。」
「…。」
何を話していいのかがわからない。
「ねぇ。なんで黙っているの?」
僕は所謂童貞だ。
こういう場面でどうしていいかわからない。
振り返り彼女を見るとこちらを見ていた。
目が合った。
少しの沈黙の後、彼女は静かに目を閉じる。
僕の鼓動が早くなる。
勇気を振り絞り彼女の唇に僕の唇を重ねた。
「そのまま続けて。」
彼女に言われるがまま唇を重ねながら、
上着に手を掛ける。
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その日僕は一つ階段を登った。
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