不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第四章

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半壊しているアーダルリアの宮殿に足を踏み入れると、なんとそこには多くの精霊が潜んでいたのだ。何故こんな所に?と思ったのも束の間、疲れ草臥れ、そして薄汚れてはいるが、神々しいばかりのオーラを放つ一人の女性が目の前に立っていたのだ。
俺と共に宮殿に来ていたアーダルリアの兵は皆膝を突き、頭を垂れている。つまりこの女性が
「教皇の奥さん????」
「ちょっ、団長っ!?不敬ですよ!!」
レインに脇腹を強めに突かれる。
こいつのこの行動自体、俺に対して『不敬』じゃね?
「いえ、この国をお救いくださいましたフィルハート国の王子様や団長様にこのような姿をお見せすること自体が不敬でございます。お許しくださいませ」
と、皇后は俺に謝罪と深いお辞儀で精一杯の『感謝』を述べてきてくれる。
この行動の何処に『感謝』が含まれるかというと、とても綺麗なオーラが俺を包んだからだ。
精霊たちも喜んでいる。
「顔を上げてください。まずは状況を把握しましょう。それからフィルハートに援軍を送ります」
「畏まりました。では、まだ何とか保たれている奥の間でお話ししましょう。お出しできる飲み物や菓子は申し訳ないのですが・・・・・・・」
「ふっふっふ!心配無用!」
俺は懐から隠し持っていた『日本茶のパック』と羊羹を取り出したのだった。

「一体何処に隠し持っていたのですか・・・・・・・・・・」
と呆れるレインにそれらを渡し、案内された間へ足を踏み入れる。


「まぁっ!なんと甘いお菓子ですこと!!それにこの『緑茶』が甘さを更に引き出すとても良いお飲み物!こんな素敵な物を食べる日が来るなんて!」
皇后は涙を流しながら本当に美味そうに咀嚼している。
ただ、後少しで食べきる頃に名残惜しそうに、小さく小さく切ってはチマチマと口に入れていく姿が子供のようでとても愛らしい。
「ははは、俺の分も差し上げますから豪快にお食べください。実は、俺甘い物苦手なんですよね~~~」
「まっ!!!よろしいのですか!!!」
左手は「そんな~」という拒否のジェスチャーをしながら右手は「さささ~」と皿を攫っていく。
もうおかしくておかしくて!
「はははははははっ!何て可愛らしい方なんだ!このような方があんな愚物の奥方なんて!」
「まっ!『愚物』だなんて!それに『汚物』も付け加えてくださらない?」
この奥方、結構『言う』タイプだな。
ちなみに
「俺、王子なのに誰も俺に敬意を払わないのは何故だ?」
とキュリアス殿下の小さな独り言は誰にも聞かれることはなく、彼には見えない精霊がそっと慰めていたのは俺だけが知っていればいいことだ。

教皇の奥方『アーデル』様とは今後の話をし、終わった頃にはすっかり次の日の朝になっていた。
「我々フィルハートは一度国に戻り、援助等の会議を開き、早急に手はずを整えて、再び戻って参ります故、それまで奮闘願います」
「だから、スイレンその言葉、フィルハート第二王子である私の台詞・・・・・・」

いや~~~王子の存在、すっかり忘れていました。
テヘ(ニヤリッ)
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