不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

文字の大きさ
上 下
225 / 227
第四章

40 面白い人

しおりを挟む
半壊しているアーダルリアの宮殿に足を踏み入れると、なんとそこには多くの精霊が潜んでいたのだ。何故こんな所に?と思ったのも束の間、疲れ草臥れ、そして薄汚れてはいるが、神々しいばかりのオーラを放つ一人の女性が目の前に立っていたのだ。
俺と共に宮殿に来ていたアーダルリアの兵は皆膝を突き、頭を垂れている。つまりこの女性が
「教皇の奥さん????」
「ちょっ、団長っ!?不敬ですよ!!」
レインに脇腹を強めに突かれる。
こいつのこの行動自体、俺に対して『不敬』じゃね?
「いえ、この国をお救いくださいましたフィルハート国の王子様や団長様にこのような姿をお見せすること自体が不敬でございます。お許しくださいませ」
と、皇后は俺に謝罪と深いお辞儀で精一杯の『感謝』を述べてきてくれる。
この行動の何処に『感謝』が含まれるかというと、とても綺麗なオーラが俺を包んだからだ。
精霊たちも喜んでいる。
「顔を上げてください。まずは状況を把握しましょう。それからフィルハートに援軍を送ります」
「畏まりました。では、まだ何とか保たれている奥の間でお話ししましょう。お出しできる飲み物や菓子は申し訳ないのですが・・・・・・・」
「ふっふっふ!心配無用!」
俺は懐から隠し持っていた『日本茶のパック』と羊羹を取り出したのだった。

「一体何処に隠し持っていたのですか・・・・・・・・・・」
と呆れるレインにそれらを渡し、案内された間へ足を踏み入れる。


「まぁっ!なんと甘いお菓子ですこと!!それにこの『緑茶』が甘さを更に引き出すとても良いお飲み物!こんな素敵な物を食べる日が来るなんて!」
皇后は涙を流しながら本当に美味そうに咀嚼している。
ただ、後少しで食べきる頃に名残惜しそうに、小さく小さく切ってはチマチマと口に入れていく姿が子供のようでとても愛らしい。
「ははは、俺の分も差し上げますから豪快にお食べください。実は、俺甘い物苦手なんですよね~~~」
「まっ!!!よろしいのですか!!!」
左手は「そんな~」という拒否のジェスチャーをしながら右手は「さささ~」と皿を攫っていく。
もうおかしくておかしくて!
「はははははははっ!何て可愛らしい方なんだ!このような方があんな愚物の奥方なんて!」
「まっ!『愚物』だなんて!それに『汚物』も付け加えてくださらない?」
この奥方、結構『言う』タイプだな。
ちなみに
「俺、王子なのに誰も俺に敬意を払わないのは何故だ?」
とキュリアス殿下の小さな独り言は誰にも聞かれることはなく、彼には見えない精霊がそっと慰めていたのは俺だけが知っていればいいことだ。

教皇の奥方『アーデル』様とは今後の話をし、終わった頃にはすっかり次の日の朝になっていた。
「我々フィルハートは一度国に戻り、援助等の会議を開き、早急に手はずを整えて、再び戻って参ります故、それまで奮闘願います」
「だから、スイレンその言葉、フィルハート第二王子である私の台詞・・・・・・」

いや~~~王子の存在、すっかり忘れていました。
テヘ(ニヤリッ)
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ
BL
異世界に飛ばされた健(たける)と大翔(ひろと)の、食堂経営スローライフ。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

処理中です...