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第四章
37 スタンピード
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瘴気は消え去っていた。ヨルムンガンドが翠蓮の眷属となりこの子の力を分け与えられたから、全て食せたのだ。
だが、アーダルリアから瘴気が消えたにも拘わらず、何かがおかしい。
何かの気配がこの地に近づいてきている。
地響きが段々と大きくなってきて、砂煙も上がっている。
空からは「キー」とか「ギャー」とかとても人間が出す音ではないのが、聞こえてくる。
まだ、それは遠く肉眼では見えづらいがそれでも『何か』がアーダルリアに入り込もうとしているのだ。
『ソレ』は我々神獣が対処しても良い『生物』なのだが、翠蓮は・・・・・・・
「さすがに『魔物』の対応はこの世界の住人がしないといけないよな~。いつでも『俺ら』がいるわけじゃないんだからさ~。ということで朱雀、レインの所に行って中に入るように伝えて」
「ふん!良かろう。お前に遣われるなら本望だ。だが、『指示を出す人物を指名する』のは我にやらせよ」
「お任せします、朱雀。誰が指示出そうとも、俺は文句言いません!」
「そうか、そうか。よし、では飛んでいくかの~~~」
「ということでの、指揮は第二殿下のキュリアスが執るべきだ」
「スイレンは無事なのですね。良かった・・・・・・・・」
「これこれ、翠蓮は大丈夫だが民がまだ避難しておらん。何を気を抜いおるのだ」
「失礼しました!!!朱雀殿。では、これより私が指揮を執る!朱雀殿はスイレンの元にお戻りください」
「ふむふむ、了解した。後は任せたぞ。我ら神獣の手出しは『無用』と翠蓮から言われたでの」
「っ!!!!スイレンがそのようなことを・・・・・ということは」
元々聡明なフィルハートの王子だ。翠蓮が謂わんとしたことを瞬時に理解したようだ。
「皆の者、これから指揮は私が執る!今、アーダルリアに『魔物』が接近中だ!聞こえるだろう、雄叫びが!地響きが!!これはスタンピードに近い魔物の大群が押し寄せている号令だ!ならば闘うしかない!我らの命を護るために!ただ、無様に命を散らすのは許さない!よって、闘うのはスイレンにより鍛え上げられた我が国兵フィルハートの騎士のみだ!!アーダルリアの騎士はスイレンが護っているであろう民を安全地帯に避難させよ!よいな!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」
雄叫びの中に一人の大きな声がかき消されずに残った。
「しかし!我らアーダルリアの兵がフィルハートの貴方方に護られるだけなんて、申し訳ない!!!ですから、少しでも闘いに参加をっ!」
「ならん!貴殿たちはあの『スイレン』の訓練を受けてはおらん!スイレンの訓練は生半可な物ではないのだ・・・・・・思い出しただけでも吐き気が・・・・・ぅぉぇ~~~」
「殿下――――――――――――――――――――!!!」
副団長の『ヴォルフ』が殿下の背を撫でるが、彼も翠蓮の訓練を思い出したのか手で口元を覆っている。
一体翠蓮はどんな訓練を課したのか・・・・・・・聞かない方が良さそうだ。
「我々は『死なない自信』がある!だが、貴殿らは?無駄に命は散らせん!この場はフィルハート第二王子キュリアス・フィルハートの命に従って貰えぬか?」
「・・・・・・畏まりました、殿下。どうか!どうかっ!!民を生きている民の為に、アーダルリアをお守り願います!!!」
「任せておけ!!菖蒲殿はどうされる?」
「ん?私~~~。私はね、闘いには参加しないわ。重傷人の手当に重点を置くわね。レイン、悪いんだけど、そんな私を護ってくれないかしら?翠蓮の所に行きたいのは山々だろうけど」
「構いません!団長のお側に行きたいのは確かですが、生きているとわかっただけでも良かったし、あの人のことだ。ピンピンと跳ね回って魔物を斃しまくっているに違いありませんから。私が優先すべき事は『民の安全』です。団長も理解してくれているはずです」
「そうね。あなた本当に強い子になったわね~~~。ちなみにレインも治癒が少し使えるんだから、安全地帯では協力して頂戴ね☆」
「もちろんです!!私の力は『民のため』にあるのですから!」
最初は力が使えず、片隅で剣を振り続けていたレインがここまで格好良く、強く育つとは誰が考えただろうか。
本物の『宝』というものを探すのは本当に大変なことだ。見落としていることも多かろう。
その見落としを少しでも減らそうと、キュリアスは決意した様子だ。
だが、アーダルリアから瘴気が消えたにも拘わらず、何かがおかしい。
何かの気配がこの地に近づいてきている。
地響きが段々と大きくなってきて、砂煙も上がっている。
空からは「キー」とか「ギャー」とかとても人間が出す音ではないのが、聞こえてくる。
まだ、それは遠く肉眼では見えづらいがそれでも『何か』がアーダルリアに入り込もうとしているのだ。
『ソレ』は我々神獣が対処しても良い『生物』なのだが、翠蓮は・・・・・・・
「さすがに『魔物』の対応はこの世界の住人がしないといけないよな~。いつでも『俺ら』がいるわけじゃないんだからさ~。ということで朱雀、レインの所に行って中に入るように伝えて」
「ふん!良かろう。お前に遣われるなら本望だ。だが、『指示を出す人物を指名する』のは我にやらせよ」
「お任せします、朱雀。誰が指示出そうとも、俺は文句言いません!」
「そうか、そうか。よし、では飛んでいくかの~~~」
「ということでの、指揮は第二殿下のキュリアスが執るべきだ」
「スイレンは無事なのですね。良かった・・・・・・・・」
「これこれ、翠蓮は大丈夫だが民がまだ避難しておらん。何を気を抜いおるのだ」
「失礼しました!!!朱雀殿。では、これより私が指揮を執る!朱雀殿はスイレンの元にお戻りください」
「ふむふむ、了解した。後は任せたぞ。我ら神獣の手出しは『無用』と翠蓮から言われたでの」
「っ!!!!スイレンがそのようなことを・・・・・ということは」
元々聡明なフィルハートの王子だ。翠蓮が謂わんとしたことを瞬時に理解したようだ。
「皆の者、これから指揮は私が執る!今、アーダルリアに『魔物』が接近中だ!聞こえるだろう、雄叫びが!地響きが!!これはスタンピードに近い魔物の大群が押し寄せている号令だ!ならば闘うしかない!我らの命を護るために!ただ、無様に命を散らすのは許さない!よって、闘うのはスイレンにより鍛え上げられた我が国兵フィルハートの騎士のみだ!!アーダルリアの騎士はスイレンが護っているであろう民を安全地帯に避難させよ!よいな!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」
雄叫びの中に一人の大きな声がかき消されずに残った。
「しかし!我らアーダルリアの兵がフィルハートの貴方方に護られるだけなんて、申し訳ない!!!ですから、少しでも闘いに参加をっ!」
「ならん!貴殿たちはあの『スイレン』の訓練を受けてはおらん!スイレンの訓練は生半可な物ではないのだ・・・・・・思い出しただけでも吐き気が・・・・・ぅぉぇ~~~」
「殿下――――――――――――――――――――!!!」
副団長の『ヴォルフ』が殿下の背を撫でるが、彼も翠蓮の訓練を思い出したのか手で口元を覆っている。
一体翠蓮はどんな訓練を課したのか・・・・・・・聞かない方が良さそうだ。
「我々は『死なない自信』がある!だが、貴殿らは?無駄に命は散らせん!この場はフィルハート第二王子キュリアス・フィルハートの命に従って貰えぬか?」
「・・・・・・畏まりました、殿下。どうか!どうかっ!!民を生きている民の為に、アーダルリアをお守り願います!!!」
「任せておけ!!菖蒲殿はどうされる?」
「ん?私~~~。私はね、闘いには参加しないわ。重傷人の手当に重点を置くわね。レイン、悪いんだけど、そんな私を護ってくれないかしら?翠蓮の所に行きたいのは山々だろうけど」
「構いません!団長のお側に行きたいのは確かですが、生きているとわかっただけでも良かったし、あの人のことだ。ピンピンと跳ね回って魔物を斃しまくっているに違いありませんから。私が優先すべき事は『民の安全』です。団長も理解してくれているはずです」
「そうね。あなた本当に強い子になったわね~~~。ちなみにレインも治癒が少し使えるんだから、安全地帯では協力して頂戴ね☆」
「もちろんです!!私の力は『民のため』にあるのですから!」
最初は力が使えず、片隅で剣を振り続けていたレインがここまで格好良く、強く育つとは誰が考えただろうか。
本物の『宝』というものを探すのは本当に大変なことだ。見落としていることも多かろう。
その見落としを少しでも減らそうと、キュリアスは決意した様子だ。
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