222 / 227
第四章
37 スタンピード
しおりを挟む
瘴気は消え去っていた。ヨルムンガンドが翠蓮の眷属となりこの子の力を分け与えられたから、全て食せたのだ。
だが、アーダルリアから瘴気が消えたにも拘わらず、何かがおかしい。
何かの気配がこの地に近づいてきている。
地響きが段々と大きくなってきて、砂煙も上がっている。
空からは「キー」とか「ギャー」とかとても人間が出す音ではないのが、聞こえてくる。
まだ、それは遠く肉眼では見えづらいがそれでも『何か』がアーダルリアに入り込もうとしているのだ。
『ソレ』は我々神獣が対処しても良い『生物』なのだが、翠蓮は・・・・・・・
「さすがに『魔物』の対応はこの世界の住人がしないといけないよな~。いつでも『俺ら』がいるわけじゃないんだからさ~。ということで朱雀、レインの所に行って中に入るように伝えて」
「ふん!良かろう。お前に遣われるなら本望だ。だが、『指示を出す人物を指名する』のは我にやらせよ」
「お任せします、朱雀。誰が指示出そうとも、俺は文句言いません!」
「そうか、そうか。よし、では飛んでいくかの~~~」
「ということでの、指揮は第二殿下のキュリアスが執るべきだ」
「スイレンは無事なのですね。良かった・・・・・・・・」
「これこれ、翠蓮は大丈夫だが民がまだ避難しておらん。何を気を抜いおるのだ」
「失礼しました!!!朱雀殿。では、これより私が指揮を執る!朱雀殿はスイレンの元にお戻りください」
「ふむふむ、了解した。後は任せたぞ。我ら神獣の手出しは『無用』と翠蓮から言われたでの」
「っ!!!!スイレンがそのようなことを・・・・・ということは」
元々聡明なフィルハートの王子だ。翠蓮が謂わんとしたことを瞬時に理解したようだ。
「皆の者、これから指揮は私が執る!今、アーダルリアに『魔物』が接近中だ!聞こえるだろう、雄叫びが!地響きが!!これはスタンピードに近い魔物の大群が押し寄せている号令だ!ならば闘うしかない!我らの命を護るために!ただ、無様に命を散らすのは許さない!よって、闘うのはスイレンにより鍛え上げられた我が国兵フィルハートの騎士のみだ!!アーダルリアの騎士はスイレンが護っているであろう民を安全地帯に避難させよ!よいな!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」
雄叫びの中に一人の大きな声がかき消されずに残った。
「しかし!我らアーダルリアの兵がフィルハートの貴方方に護られるだけなんて、申し訳ない!!!ですから、少しでも闘いに参加をっ!」
「ならん!貴殿たちはあの『スイレン』の訓練を受けてはおらん!スイレンの訓練は生半可な物ではないのだ・・・・・・思い出しただけでも吐き気が・・・・・ぅぉぇ~~~」
「殿下――――――――――――――――――――!!!」
副団長の『ヴォルフ』が殿下の背を撫でるが、彼も翠蓮の訓練を思い出したのか手で口元を覆っている。
一体翠蓮はどんな訓練を課したのか・・・・・・・聞かない方が良さそうだ。
「我々は『死なない自信』がある!だが、貴殿らは?無駄に命は散らせん!この場はフィルハート第二王子キュリアス・フィルハートの命に従って貰えぬか?」
「・・・・・・畏まりました、殿下。どうか!どうかっ!!民を生きている民の為に、アーダルリアをお守り願います!!!」
「任せておけ!!菖蒲殿はどうされる?」
「ん?私~~~。私はね、闘いには参加しないわ。重傷人の手当に重点を置くわね。レイン、悪いんだけど、そんな私を護ってくれないかしら?翠蓮の所に行きたいのは山々だろうけど」
「構いません!団長のお側に行きたいのは確かですが、生きているとわかっただけでも良かったし、あの人のことだ。ピンピンと跳ね回って魔物を斃しまくっているに違いありませんから。私が優先すべき事は『民の安全』です。団長も理解してくれているはずです」
「そうね。あなた本当に強い子になったわね~~~。ちなみにレインも治癒が少し使えるんだから、安全地帯では協力して頂戴ね☆」
「もちろんです!!私の力は『民のため』にあるのですから!」
最初は力が使えず、片隅で剣を振り続けていたレインがここまで格好良く、強く育つとは誰が考えただろうか。
本物の『宝』というものを探すのは本当に大変なことだ。見落としていることも多かろう。
その見落としを少しでも減らそうと、キュリアスは決意した様子だ。
だが、アーダルリアから瘴気が消えたにも拘わらず、何かがおかしい。
何かの気配がこの地に近づいてきている。
地響きが段々と大きくなってきて、砂煙も上がっている。
空からは「キー」とか「ギャー」とかとても人間が出す音ではないのが、聞こえてくる。
まだ、それは遠く肉眼では見えづらいがそれでも『何か』がアーダルリアに入り込もうとしているのだ。
『ソレ』は我々神獣が対処しても良い『生物』なのだが、翠蓮は・・・・・・・
「さすがに『魔物』の対応はこの世界の住人がしないといけないよな~。いつでも『俺ら』がいるわけじゃないんだからさ~。ということで朱雀、レインの所に行って中に入るように伝えて」
「ふん!良かろう。お前に遣われるなら本望だ。だが、『指示を出す人物を指名する』のは我にやらせよ」
「お任せします、朱雀。誰が指示出そうとも、俺は文句言いません!」
「そうか、そうか。よし、では飛んでいくかの~~~」
「ということでの、指揮は第二殿下のキュリアスが執るべきだ」
「スイレンは無事なのですね。良かった・・・・・・・・」
「これこれ、翠蓮は大丈夫だが民がまだ避難しておらん。何を気を抜いおるのだ」
「失礼しました!!!朱雀殿。では、これより私が指揮を執る!朱雀殿はスイレンの元にお戻りください」
「ふむふむ、了解した。後は任せたぞ。我ら神獣の手出しは『無用』と翠蓮から言われたでの」
「っ!!!!スイレンがそのようなことを・・・・・ということは」
元々聡明なフィルハートの王子だ。翠蓮が謂わんとしたことを瞬時に理解したようだ。
「皆の者、これから指揮は私が執る!今、アーダルリアに『魔物』が接近中だ!聞こえるだろう、雄叫びが!地響きが!!これはスタンピードに近い魔物の大群が押し寄せている号令だ!ならば闘うしかない!我らの命を護るために!ただ、無様に命を散らすのは許さない!よって、闘うのはスイレンにより鍛え上げられた我が国兵フィルハートの騎士のみだ!!アーダルリアの騎士はスイレンが護っているであろう民を安全地帯に避難させよ!よいな!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」
雄叫びの中に一人の大きな声がかき消されずに残った。
「しかし!我らアーダルリアの兵がフィルハートの貴方方に護られるだけなんて、申し訳ない!!!ですから、少しでも闘いに参加をっ!」
「ならん!貴殿たちはあの『スイレン』の訓練を受けてはおらん!スイレンの訓練は生半可な物ではないのだ・・・・・・思い出しただけでも吐き気が・・・・・ぅぉぇ~~~」
「殿下――――――――――――――――――――!!!」
副団長の『ヴォルフ』が殿下の背を撫でるが、彼も翠蓮の訓練を思い出したのか手で口元を覆っている。
一体翠蓮はどんな訓練を課したのか・・・・・・・聞かない方が良さそうだ。
「我々は『死なない自信』がある!だが、貴殿らは?無駄に命は散らせん!この場はフィルハート第二王子キュリアス・フィルハートの命に従って貰えぬか?」
「・・・・・・畏まりました、殿下。どうか!どうかっ!!民を生きている民の為に、アーダルリアをお守り願います!!!」
「任せておけ!!菖蒲殿はどうされる?」
「ん?私~~~。私はね、闘いには参加しないわ。重傷人の手当に重点を置くわね。レイン、悪いんだけど、そんな私を護ってくれないかしら?翠蓮の所に行きたいのは山々だろうけど」
「構いません!団長のお側に行きたいのは確かですが、生きているとわかっただけでも良かったし、あの人のことだ。ピンピンと跳ね回って魔物を斃しまくっているに違いありませんから。私が優先すべき事は『民の安全』です。団長も理解してくれているはずです」
「そうね。あなた本当に強い子になったわね~~~。ちなみにレインも治癒が少し使えるんだから、安全地帯では協力して頂戴ね☆」
「もちろんです!!私の力は『民のため』にあるのですから!」
最初は力が使えず、片隅で剣を振り続けていたレインがここまで格好良く、強く育つとは誰が考えただろうか。
本物の『宝』というものを探すのは本当に大変なことだ。見落としていることも多かろう。
その見落としを少しでも減らそうと、キュリアスは決意した様子だ。
11
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった
藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。
毎週水曜に更新予定です。
宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる