不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

文字の大きさ
上 下
181 / 227
第三章

53 キレる!!

しおりを挟む
「シャキッとしろよっ!みっともない!!!」
「「っ!!!!!!!!!!!」」
この場にいた全員が、否、フィルハートの者たちだけが目を丸く見開き、呆然となる。
「鬱陶しいんだよっ!後悔ばっかりしてんじぇねーーーよっ!これから前を向けば良いだろうがっ!!!つか、俺の『言葉』を真に受けんな!テメーらの考えだって、伝統だってあったんだろうが!!!それを覆すなんざ、簡単にできるもんじゃねんだよっ!」
「ま、ま~~翠蓮落ち着いて」
「チッ!」
俺は大きく舌打ちをすると、だんまりを決め込んだ。
「あらら、翠蓮がここまでふて腐れるなんて、久しぶりね~~~」
「うるせーよ」
「はいはい。ま、翠蓮の言い分は最もなことよ?あんた達ちょっと自分たちの行動に酔ってないかしら?」
「どういう・・・・・・・・・」
ジオルドが本当に何を言われているのか理解出来ていないようで。
桃季が「あ~~~これは翠蓮が怒っても仕方ねーな」とめっちゃ納得してやがる。
「桃季は黙ってなさい、全く。あんたが、いや翠蓮とあんたが口を開けば『いらないことばかり』言うんだから」
「俺もかよっ!つか、桃季巻き込むんじゃねーよ!」
「うっせーーーわ!!じゃ、テメーが姉さんの手を煩わせず、自力で解決してみせろ!」
「おおうっ!表に出ろ、桃季!良い度胸じゃねーかっ!」
「ああ!?良いぜ??後悔すんじゃねーぞ!」
俺たちは立ち上がって、扉に向かおうとしたところを葵に思いっきり拳骨を落とされた。
「「っ!?@△□?☆」」
「まじで、お前ら五月蠅い。そこで大人しく正座していろ」
本気で怒っている葵には反論できないのが『弟組』の俺たち。
仕方なく、大人しく正座しながら酒を呷る。
「・・・・・・・・酒は手放さないのが、さすがだな・・・・・・・」
「飲まなきゃ、怒りでどうにかなりそうだ」
「は~~~。ま、大人しくしていればいい」
葵はなんとも言えない表情で、俺たちから離れた。

「ま、あの二人は放っておいて構わないわ。ただね、翠蓮が怒る気持ち私わかるのよ?」
「ああ、俺も竜胆も、な。俺たちがわかるのに当事者たちが理解していなかったら腹立つわな」
菖蒲は大きく溜息を、葵は大きく頷き、竜胆は冷たい視線を向けるだけ。
その意味が本当にわからないようなので、
「貴方たちは頑張ってきたんでしょ?昔からの慣習に捕らわれても、自国を豊かに住みやすいように改善しようと。国民を第一に考えて行動をしてきたのでしょう?」
「あ、ああ、それは間違いない。我らがあるのは民のおかげだからな」
「ええ、それでいいんじゃない?今、貴方たちの前に私たちがいるから心に『余裕』ができた。だから、違う事に目を向けられるようになった。違う?」
「あ・・・・・・・・」
「余裕、なかったのか、俺たちは・・・・・・・・」
気付いてなかったのか、本当に。
「『瘴気』の対策が第三・第四騎士団の任務だとしても、飢餓や天災に頭を悩まさない日々はなかっただろう?考えてだろう、対策を、皆で」
「俺たちの世界で俺は『国民』でしかないから飢餓や天災に意識を取られることはなかったけど、お前たちは違う。国を担う王族なんだ。意識を多方面に向けることは容易ではないだろう?」
「『目』を他の方向に向けることが出来たのは「俺たち」という『人間兵器』がいたからだ。俺たちだから解決できると信じてくれたから、他に目を向けられた」
「「っ!!!」」


「それって悪いことかしら?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

誰だって何でもかんでも自分一人でできるわけではないのだ。
自分のことだけで手一杯で、それが普通で当たり前の人間社会において他人を慮った行動を起こせる人間なんて『余裕がある』人間でしかないと俺は思う。
はたまた、否定するわけでは決してないが、漫画やアニメで出てくる最強と呼ばれる『勇者』ならば出来るだろう。
『聖女』と呼ばれる者ならば出来るのだろう。
『α』と位置づけられた絶対的強者ならば可能であろう。
ただ、俺たちは等しく『ただ』の人間だ。
『人間兵器』と呼ばれる俺たちにだってできないことは山ほどあるし、嫌いな物だってある。
だから助け合うのだ、人は。動物は!
だから、

「謝る必要なんて無いだろう?」


「あ・・・・・・・・」
「そうなのか・・・・・・・・・」


漸く俺が憤ったことを理解したようだ。
だから、

「ありがとう、スイレン。君が、この世界に間違って召喚されたことで私たちは助けられた」
「ありがとう、スイレン。君が成した功績は俺たちを『現実に導く』ことだな」

「はっ!嗤わせるなよ?元々持っていたお前らの力を俺が引き出してやっているだけだ。まだまだ俺たちの足下にも及ばない!気を抜くなよ?緩めるなよ?自分の目を、意識をもっともっと拡げろ。もっと自分を高見に追い込め!それがお前たちにはできるんだから」

「ええ、私も保証するわ。貴方たちは一人では為しえないけれど、皆で力を合わせたら私たち誰か一人くらい倒せるんじゃないかしら?」
「「「「おいっ!菖蒲!!!!」」」」
「あんら~~~私だってちょっと不満なのよ?あんた達ばかり手合わせして!私だって、この子たち、いえ、こいつらをちょっと伸してみてんだけど???」
「「「「っ!!!!」」」」
菖蒲の口調が変わった。これはかなりキレている証拠。
この時は反論せず、
「「「「どうぞ、どうぞ!!!!」」」」
というのが、正解だ。

「殿下たち、ちょっと菖蒲のストレスの発散につきあってやってくれ!ま、俺たちもお前らの現在の力量を測れるしな~~~」
「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええ」」」」」」」」」


で、物の見事に、10分も持たず全員菖蒲に伸されてましたとさ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった

藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。 毎週水曜に更新予定です。 宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。

【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ
BL
異世界に飛ばされた健(たける)と大翔(ひろと)の、食堂経営スローライフ。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

アズ同盟

未瑠
BL
 事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。  一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。  アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て  ……いや、お前は誰だ?  やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。  アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

平凡くんの学園奮闘記

nana
BL
平凡男子の真城 紡(ましろ つむぎ)が、頑張って王道学園で生活するお話。

処理中です...