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第三章
49 超える者
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再度魔国に脚を踏み入れるとどんよりとした真っ黒い靄や空気が今は清浄化され、澄んでいて、そして心地よい風が吹き抜けていく。
「すごいでしょう、翠蓮。この風、レインが吹かせているのよ?」
「ああ、この風、『癒しの力』が入っているんだな」
「そうなのよ!特訓した甲斐あったわ!あの子、直接人に触れての治癒より自分の特性を活かして『癒す』方が能力値上がるみたいなのよ」
「そうなのか・・・・・・・やはり『治癒』のスペシャリストにあいつらを任せて良かった」
菖蒲だから任せたアシュレイ兄弟。
菖蒲は俺たちの中で一番『治癒』に長け、治せない病気や怪我はない。
ただし、寿命と闘う病気は治せない。
それは人の「一生を左右する傲慢な力」だからだ。
領分は弁えている。
だが、特例がある。
俺たち人間兵器が五体のどこかを欠損した場合などは『再生』の能力を使用できる。
ただし、誰にでも行えることではなくて『血の契り』を交わした俺たち五人だけにだ。
この行為も『タダ』で行えるはずがない。
治癒対象者の幾分かの命の期間を代償とするのだ。
つまり、頭部や心臓などが失われた場合は、この『再生能力』は使えずただ死を嘆くだけ。
代償とする期間は、再生程度にもよる。
だから菖蒲は俺たちの身体を一番に心配し、治癒という研究を続けているのだ。
「レインは自分の特性を理解しているけども、レイフォードはちょっと躓いているのよ」
「は?レイが???」
「そう。あの子なまじ攻撃もできちゃうでしょ?それが良くないのよ~~。でも、ま、あんたが今まで指導していたおかげで『治癒』の『質』は最高レベルよ」
「それでいい気がするんだが?」
「自分に厳しいのよ、あの子。可愛い子ね、ほんと♡」
俺は一生懸命にその授かった『力』を、瘴気に充てられ混迷の最中にいる魔族に、迷わず奢ることなく懸命に治療に取り組み、額から滝のように流れ落ちる汗を拭うことなく一身に俺の気配も悟れないレイをそっと後ろから抱きしめた。
「あ、スイ・・・・だんちょ・・・・・・・・・・」
「うん、レイ、大丈夫。ゆっくりでいい。お前の能力はとてもとても綺麗だ。誇っていい。だから、焦るな。迷うな。俺の言葉を信じろ」
「・・・・は、はいっ!」
段々とレイフォードの息遣いのムラが治り、緩やかに変化して、当りの空気が一変した。
「「っ!!!!!!!!!」」
俺と菖蒲は声も上げられないほど驚き、その場に崩れ落ちたのだ。
ここまで綺麗な『力』を持つ者を見たことがなくて・・・・・・・・。
「翠蓮、あんた、もしかしたらあの子、あんたより凄いかもよ?」
「かもな・・・・・・はははははは・・・・・・やべっ」
「まじ、ヤバいわよ、いや、まじで」
「言うなよ、菖蒲姉さん」
レイフォードの『水』の力は、成長すれば、いや、最高潮まで達すれば、菖蒲姉さんの治癒能力はもちろんのこと、『水』に関しては俺を上回ると確信せざるを得ない程、綺麗で澄んでいて・・・・・・・・・・
愕然とさせられたのだ。
「ま、とりあえず、まだ抜かれてはいないわ。私たち気を抜いたら一瞬でやられるわよ」
「ああ、全くだな・・・・・・。俺、ここのこと終わったら暫くマジであいつら説得して日本で修行し直すわ」
「それがいいわね。私も付き合うわよ。たった数日の付き合いであそこまで成長されたら、私の立つ瀬ないもの・・・・・」
「だな」
俺たちは再度決意した。
更に強くなると。
こいつらより先にいなければならないと。
だって、
レイフォードが力の使いすぎで倒れてしまったから。
自分の領域をまだ理解していない。
そんな者に『戦場』を任せられるか!!!
本当の闘いを、生を刈り取る諸行を知っている俺たちだけが上に行けばいい。
俺たちだけが業を背負えば良い。
いや、
俺たちが力持つ者を
目覚めさせなければならない!!
「すごいでしょう、翠蓮。この風、レインが吹かせているのよ?」
「ああ、この風、『癒しの力』が入っているんだな」
「そうなのよ!特訓した甲斐あったわ!あの子、直接人に触れての治癒より自分の特性を活かして『癒す』方が能力値上がるみたいなのよ」
「そうなのか・・・・・・・やはり『治癒』のスペシャリストにあいつらを任せて良かった」
菖蒲だから任せたアシュレイ兄弟。
菖蒲は俺たちの中で一番『治癒』に長け、治せない病気や怪我はない。
ただし、寿命と闘う病気は治せない。
それは人の「一生を左右する傲慢な力」だからだ。
領分は弁えている。
だが、特例がある。
俺たち人間兵器が五体のどこかを欠損した場合などは『再生』の能力を使用できる。
ただし、誰にでも行えることではなくて『血の契り』を交わした俺たち五人だけにだ。
この行為も『タダ』で行えるはずがない。
治癒対象者の幾分かの命の期間を代償とするのだ。
つまり、頭部や心臓などが失われた場合は、この『再生能力』は使えずただ死を嘆くだけ。
代償とする期間は、再生程度にもよる。
だから菖蒲は俺たちの身体を一番に心配し、治癒という研究を続けているのだ。
「レインは自分の特性を理解しているけども、レイフォードはちょっと躓いているのよ」
「は?レイが???」
「そう。あの子なまじ攻撃もできちゃうでしょ?それが良くないのよ~~。でも、ま、あんたが今まで指導していたおかげで『治癒』の『質』は最高レベルよ」
「それでいい気がするんだが?」
「自分に厳しいのよ、あの子。可愛い子ね、ほんと♡」
俺は一生懸命にその授かった『力』を、瘴気に充てられ混迷の最中にいる魔族に、迷わず奢ることなく懸命に治療に取り組み、額から滝のように流れ落ちる汗を拭うことなく一身に俺の気配も悟れないレイをそっと後ろから抱きしめた。
「あ、スイ・・・・だんちょ・・・・・・・・・・」
「うん、レイ、大丈夫。ゆっくりでいい。お前の能力はとてもとても綺麗だ。誇っていい。だから、焦るな。迷うな。俺の言葉を信じろ」
「・・・・は、はいっ!」
段々とレイフォードの息遣いのムラが治り、緩やかに変化して、当りの空気が一変した。
「「っ!!!!!!!!!」」
俺と菖蒲は声も上げられないほど驚き、その場に崩れ落ちたのだ。
ここまで綺麗な『力』を持つ者を見たことがなくて・・・・・・・・。
「翠蓮、あんた、もしかしたらあの子、あんたより凄いかもよ?」
「かもな・・・・・・はははははは・・・・・・やべっ」
「まじ、ヤバいわよ、いや、まじで」
「言うなよ、菖蒲姉さん」
レイフォードの『水』の力は、成長すれば、いや、最高潮まで達すれば、菖蒲姉さんの治癒能力はもちろんのこと、『水』に関しては俺を上回ると確信せざるを得ない程、綺麗で澄んでいて・・・・・・・・・・
愕然とさせられたのだ。
「ま、とりあえず、まだ抜かれてはいないわ。私たち気を抜いたら一瞬でやられるわよ」
「ああ、全くだな・・・・・・。俺、ここのこと終わったら暫くマジであいつら説得して日本で修行し直すわ」
「それがいいわね。私も付き合うわよ。たった数日の付き合いであそこまで成長されたら、私の立つ瀬ないもの・・・・・」
「だな」
俺たちは再度決意した。
更に強くなると。
こいつらより先にいなければならないと。
だって、
レイフォードが力の使いすぎで倒れてしまったから。
自分の領域をまだ理解していない。
そんな者に『戦場』を任せられるか!!!
本当の闘いを、生を刈り取る諸行を知っている俺たちだけが上に行けばいい。
俺たちだけが業を背負えば良い。
いや、
俺たちが力持つ者を
目覚めさせなければならない!!
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