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第三章
35 頼もしい幼なじみ
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そして、青龍の力が回復し、フィルハートに戻る日。
フィルハート勢はこの世界を目に焼き付けるため、屋上からこの都市を見下ろしている。
俺たちは、部屋であいつらの成長度を語り合っていた。
「正直、まだスイの手助けを出来るレベルではないわね」
「こっちもです。『力の質』は向上したのですが、技を取得することは叶いませんでした」
「俺もだ。確かに『質』は上昇した。だが、それだけだ」
「・・・・・・・・手を尽くしてくれたこと、感謝する。・・・・・俺の方も似たようなもんだ。確かにあちらの世界にいるよりは随分強く逞しくなった。だが、それだけだ・・・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」
つまりは、そういうことだ。
「す、スイっ!私たちも付いていくから!だから、他の男に抱かれるなんてっ!」
「そうです!スイが犠牲を払う必要なんてっ!」
「いや、覚悟はできているんだ、実際は・・・・・・。ただ、ちょっと抵抗があるだけで」
「巫山戯たことを言うな!翠蓮、本当の事を言え。自分の心を隠すな!」
「葵・・・・・・・」
俺の肩を痛いくらいにギュッと掴む彼の手は震えている。
「い、いやだ・・・・・嫌だよっ!殿下たち以外に抱かれるなんて!だけど、仕方ないだろう!あいつらの力量じゃ自分たちの身を守るだけで手一杯だろうし!お前らだって、こっちの世界とは力の『質』も『量』も違ってくるからサポートくらいしかっ!」
「黙れ翠蓮!!・・・・・・あとどれくらい俺たちの力の『質』か?それとも『量』を上げたら良い?」
「葵???」
「お前が向こうの世界に行って、更に強くなったことはわかった。俺たちだってまだ強くなれる!あちらの世界で一週間猶予をくれ。今以上に力を使いこなしてみせるからっ!」
「あ、あお・・・・ぃぃ・・・・・・ひぅ・・・」
「泣くなよ、全く・・・・・・・菖蒲もリンもそれでいいか?」
「もちろんよ!愛する者たちを引き裂くことを止められるなら努力を惜しまないわ!」
「俺もだよ。翠蓮は俺の大切な人だから、嫌なことをして欲しくない」
「ふ・・・・ぁ・・・・・・ありがとう、皆」
葵の胸に涙と鼻水を締め込ませながら俺は幼なじみたちに心からの感謝を伝える。
「本当にスイは俺たちの前では泣き虫だな、昔から」
「ん・・・・・弱み見せられるお前たちだけだから」
「今は違うだろう?」
「ん・・・・・・あいつらがいるから・・・・・・・」
「そうだな・・・増えたな、翠蓮の理解者」
「良い傾向だな」
「桃季を忘れたら可哀想よって!そういえば!」
がさごそと菖蒲が持ってきた鞄を漁っている。
「じゃっじゃじゃ~~~ん!!桃季特性スタミナ弁当戴いてきたわよ!」
「「「おおおおおおおおおおおっ!」」」
「まだ、開いちゃいけないらしくて。向こうに着いたら食べろだって。桃季曰く『向こうの世界でお前たちの力は乱れるだろうから、これを食って、瞑想に浸ればある程度回復をする。そのように念を入れて作ったからな!』だって!」
「なら、一週間の猶予いらないな」
「ああ、あの桃季の・・・・・・」
「呪(まじな)い入りだからな」
「それは頼もしいですね」
「ああ、さすが陰陽師の系譜一族だな」
忍びで有りながら、嘗ては陰陽師として名を馳せていた一族で、現代の当主が桃季だ。
俺たちとは違い、桃季は式神を使役する。
実は、桃季の店で働いている従業員は式神だったりするのだが、それはフィルハート勢には関係ないことだし、『陰陽師』が何かを説明している時間など正直ないのだ。
「スイ、こちらの世界は堪能した!だから「あ、殿下、その前に」
と俺はジオルドの発言に口を挟むと、
「竜胆、菖蒲、葵そちらの世界に行き、殿下たちをバックアップします。しかし、この者たちも力を使えば立ち上がることも困難な程、体力を消耗するでしょう。それは何故か?と問えばわかりますか?」
「うっ!理解はしている・・・・・・・」
「なので、この者たちを城に招くことを許可戴きたい」
「???そんな些末なこと、当たり前だろう?帰国したらすぐ侍女に伝えようと思っていたのだが?」
と、本当に不思議そうに首を傾げながら俺に疑問を投げかける。
「しかも、城下町を案内する手はずと、『焔』に行く手配もしようと考えていたんだけど?」
「・・・・・・・・・・・・うん、やっぱり俺の旦那様だよっ!」
「「!!!!」」
「ならば、桃季に猫ちゃんファミリーを預けて、行くぞ!!」
と、言ったはいいが、猫ちゃんズも俺から離れなくて、一緒に行くことになった。
ま、フィルハートに付いた途端、
サーシャ様や一時帰国されていたナルミア様、ヘルミナ様に可愛がられて、大変満足そうだったのは、気のせいではない。
フィルハート勢はこの世界を目に焼き付けるため、屋上からこの都市を見下ろしている。
俺たちは、部屋であいつらの成長度を語り合っていた。
「正直、まだスイの手助けを出来るレベルではないわね」
「こっちもです。『力の質』は向上したのですが、技を取得することは叶いませんでした」
「俺もだ。確かに『質』は上昇した。だが、それだけだ」
「・・・・・・・・手を尽くしてくれたこと、感謝する。・・・・・俺の方も似たようなもんだ。確かにあちらの世界にいるよりは随分強く逞しくなった。だが、それだけだ・・・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」
つまりは、そういうことだ。
「す、スイっ!私たちも付いていくから!だから、他の男に抱かれるなんてっ!」
「そうです!スイが犠牲を払う必要なんてっ!」
「いや、覚悟はできているんだ、実際は・・・・・・。ただ、ちょっと抵抗があるだけで」
「巫山戯たことを言うな!翠蓮、本当の事を言え。自分の心を隠すな!」
「葵・・・・・・・」
俺の肩を痛いくらいにギュッと掴む彼の手は震えている。
「い、いやだ・・・・・嫌だよっ!殿下たち以外に抱かれるなんて!だけど、仕方ないだろう!あいつらの力量じゃ自分たちの身を守るだけで手一杯だろうし!お前らだって、こっちの世界とは力の『質』も『量』も違ってくるからサポートくらいしかっ!」
「黙れ翠蓮!!・・・・・・あとどれくらい俺たちの力の『質』か?それとも『量』を上げたら良い?」
「葵???」
「お前が向こうの世界に行って、更に強くなったことはわかった。俺たちだってまだ強くなれる!あちらの世界で一週間猶予をくれ。今以上に力を使いこなしてみせるからっ!」
「あ、あお・・・・ぃぃ・・・・・・ひぅ・・・」
「泣くなよ、全く・・・・・・・菖蒲もリンもそれでいいか?」
「もちろんよ!愛する者たちを引き裂くことを止められるなら努力を惜しまないわ!」
「俺もだよ。翠蓮は俺の大切な人だから、嫌なことをして欲しくない」
「ふ・・・・ぁ・・・・・・ありがとう、皆」
葵の胸に涙と鼻水を締め込ませながら俺は幼なじみたちに心からの感謝を伝える。
「本当にスイは俺たちの前では泣き虫だな、昔から」
「ん・・・・・弱み見せられるお前たちだけだから」
「今は違うだろう?」
「ん・・・・・・あいつらがいるから・・・・・・・」
「そうだな・・・増えたな、翠蓮の理解者」
「良い傾向だな」
「桃季を忘れたら可哀想よって!そういえば!」
がさごそと菖蒲が持ってきた鞄を漁っている。
「じゃっじゃじゃ~~~ん!!桃季特性スタミナ弁当戴いてきたわよ!」
「「「おおおおおおおおおおおっ!」」」
「まだ、開いちゃいけないらしくて。向こうに着いたら食べろだって。桃季曰く『向こうの世界でお前たちの力は乱れるだろうから、これを食って、瞑想に浸ればある程度回復をする。そのように念を入れて作ったからな!』だって!」
「なら、一週間の猶予いらないな」
「ああ、あの桃季の・・・・・・」
「呪(まじな)い入りだからな」
「それは頼もしいですね」
「ああ、さすが陰陽師の系譜一族だな」
忍びで有りながら、嘗ては陰陽師として名を馳せていた一族で、現代の当主が桃季だ。
俺たちとは違い、桃季は式神を使役する。
実は、桃季の店で働いている従業員は式神だったりするのだが、それはフィルハート勢には関係ないことだし、『陰陽師』が何かを説明している時間など正直ないのだ。
「スイ、こちらの世界は堪能した!だから「あ、殿下、その前に」
と俺はジオルドの発言に口を挟むと、
「竜胆、菖蒲、葵そちらの世界に行き、殿下たちをバックアップします。しかし、この者たちも力を使えば立ち上がることも困難な程、体力を消耗するでしょう。それは何故か?と問えばわかりますか?」
「うっ!理解はしている・・・・・・・」
「なので、この者たちを城に招くことを許可戴きたい」
「???そんな些末なこと、当たり前だろう?帰国したらすぐ侍女に伝えようと思っていたのだが?」
と、本当に不思議そうに首を傾げながら俺に疑問を投げかける。
「しかも、城下町を案内する手はずと、『焔』に行く手配もしようと考えていたんだけど?」
「・・・・・・・・・・・・うん、やっぱり俺の旦那様だよっ!」
「「!!!!」」
「ならば、桃季に猫ちゃんファミリーを預けて、行くぞ!!」
と、言ったはいいが、猫ちゃんズも俺から離れなくて、一緒に行くことになった。
ま、フィルハートに付いた途端、
サーシャ様や一時帰国されていたナルミア様、ヘルミナ様に可愛がられて、大変満足そうだったのは、気のせいではない。
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