不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第三章

13 崩れる

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「お前たち、こっちに来ても良かったのか?仕事は?」
「はい、陛下に許可を戴きましたから心配には及びません」
「それよりスイの傍にいらっしゃられる方々は?」
レイのその言葉で漸く思い出したのだった。
「あ~~~気にしなくていい」
「じゃ、ねーーーーーーーーーーだろっ!スイ!」
「てめー誰がこの部屋管理してやったと思ってんだ?」
「そうよっ!こんな美形さんたちを私に紹介しないなんて!!!」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「あら、何で黙るのよ?」
そう言いながら俺に撓垂れかかってくるこいつ。
俺は、俺たちはこいつの本性を知っている。
とりあえず、乱暴にこいつを引き離すと、
「ええっ!団長らしくありませんね!女性の扱いが雑すぎるなんて?」
「「「女性???」」」
もちろん「?」は俺の世界の人間たち。
「「「「「「・・・・・・・・・・・・はっ??????」」」」」」
もちろん「は?」はフィルハートの者たち。
ま、そうだろう、うんうん、そうなるわな~~。
うん!
「いいか、よく聞けよ。こいつは『男』だ!!何だったらこいつの下に付いてるもん取り出してやるぞ?」
「いや~~~ん、スイったら~~積極的~~~☆」
「だーーーーーーーーっ!!引っ付くなっ!!!竜胆(りんどう)助けろ!!」
「嫌だね。菖蒲(あやめ)姐さんを任せられるのは葵(あおい)兄さんだけでしょ」
「ぐふっ!急に俺に振るな、リン!つか、スイなら簡単に逃げられるだろうがっ!」
「ホールドされてんだよっ!!つか、離れろアヤ!!」
「え~~もっと私に構って~~~」
「そろそろ脱線を元に戻せ、呆気にとられているぞ、ほれ?」
葵が指さす方向には固まって微動だにしない6人組が。
その中に、カクンと膝から力が抜けたように床に座り込む者たちがいた。
「「「「殿下っ!!!!」」」」
彼らの側近たちは慌てて二人に駆け寄る。
「殿下?」
アルバートが二人に声をかけるが、それに応える声はなく、聞こえてくるのは小さな嗚咽だったのだ。
「スイが、スイがげ、んきで、よか・・・・・た」
「っ!?」
「ぁあ、逢えたぁ・・・・・す、いに・・・・・逢え、た・・・・・・」
「殿下・・・・・・・はぁ~~もう・・・・・」
安堵の声を聞いただけで俺の心は「きゅっ」としまり、そして、
二人の前でしゃがみ、乱暴に抱きついてやった。
「「っ!!!!」」
「こんなに痩せて、窶れて・・・・・・」
「だって、スイがいないと寝られない、眠くもならない」
「楽しくない・・・・・・食べても美味しくない・・・・・」
「うん」
がっしりと付いていた筋肉は、暫く逢わないうちに落ちてしまい、綺麗に引き締まっていた肉体美は損なわれてしまっている。
あの分厚く逞しい筋肉で俺を抱いていた身体は今は存在していないのだ。
二人は背中に回した手で俺の服にギュッとしがみついてくる。
「すまない、スイ」
「ごめん、スイ」
「「だから・・・・・・・・」」
「許さない。許すわけないだろう、簡単に?」
「「っ!!だよね・・・・・・・」」
当たり前だろう?
俺だって苦しんだ、悩んだ、悲しんだ!!
簡単に裏切られた!!
信じていたのに!
俺だって二人に隠れて、傷だらけになって、瀕死の重体になって!
二人の想いを裏切った。
でも、それには意味のあったことで!
無駄ではなかったのに!
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