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第三章

11 知っていた

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生涯を共にと填められた結婚指輪。
それを自ら外し、渡され、距離を取ることを言われたその日。

俺は知っていて、元の世界に戻らなかった。
愛した二人があの世界にいたから。

戻る術があると知っていても、この世界に戻らなかった。
大切な人たちがあの国にいたから。

だけど、もうあの国に、あの世界に留まる理由は何一つない。
見届けたかった開校式は、俺がいなくてもナルミア様がしっかりと取り仕切ってくださる。
あのお方に任せておけば、万事終わる。

だから、もういいだろう、元の世界に戻っても。

愛していたはずなのに、その愛が偽りだっただけなのだ。
否、俺の『愛』が偽りなはずは・・・・・・・・。
偽りだったのかもしれない。
だって、『帰る』とあっさりと判断できてしまったのだから。

「愛している」という言葉は、嘘だったのだろうか?
否、そのときは愛されていたのだ。
だが、それは簡単に反故にできる「愛」だっただけだ。
だから、簡単に指輪を外せる。
簡単に俺を裏切れる。
否、裏切ったという考えすらないのかもしれない。
だって、そこにあったのは『真実の愛』ではなかったのだから。

『真実の愛』ならば、あんなあっさりと愛した証の指輪を外し、俺に渡すはずがない。
あの行為はある意味で暴虐で、傲慢で、そして、愚かだった。

だから、俺は帰った。
元の世界に。

あの世界に神獣様を召喚できた時点で、『次元は繋げられる』とわかっていた。
そして、問うて確信した。
いつでも元の世界に戻れると。
だから、俺が住んでいたマンションの部屋を維持するため、時間停止の術を同僚に掛けて貰うよう白虎に言付けた。
それがこうして役に立っている。

今は、元の世界で、元の部屋で、俺は仲間と共に酒を飲んで寛ぐことができているのだから。

「スイ、お前この後どうする?」
「ん~~~調合かな?秘薬の在庫がなくなってきたし」
「あら、それ私にも頂戴ね?貴方のいい値でいいから」
「もちろんだ。お前らは?」
「俺らもいるな~~~。明後日から3日ほど、部下の懲罰をするからな~」
「あらあら、貴方たちが必要なんじゃなくて、その部下が必要になるんじゃなくて?」
「ん?いらんだろう、あいつらには。それ相応の報いを受けねばな。ただ俺様自身気合いが入りまくりすぎて怪我をするかもしれんからな」
「お前の事はどうでもいいが、『ら』?と言うことは複数なのか?」
「ま、な。ん?」

会話の途中で空気が凍り、そして部屋の上空に小さな黒い点が現われ、段々と大きくなっていく。
俺たちはクナイや縄鏢などを構え、迎え撃つ準備を整えた。
が、

ドサドサドサッ!!!

「「「「「「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」」」」」」



白服を着た大きな人間が降ってきたのだった。


俺は目を見開き、そして、
「青龍・・・・・・・・・・・・・?」
「ふん!お前がいつまでもウジウジしているのが見てられんのだ!いい加減にしろっ!!」
勢いよく怒鳴るも、ここまでこの人数を連れてきたことに力を使いすぎ、小さな蒼い蛇に姿を変えて、俺の首に巻き付いてきた。
「ぐっぐるじいっ!!!」
しかも、首を絞めにかかってくる。
「さっさと話し合って、解決しろっ!俺は1週間ほど力は使えん!!!その間に解決することだな!!」
と、言って力を抜いたと思ったら、そのままお眠りなさりました。
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