117 / 227
第三章
6 魔王
しおりを挟む
スイがいなくなって、探して捜して捜しても、何処にも見つからず、情報も得られなくなって早数週間。
スイがどこにもいない世界に戻っただけなのに、宮殿内はどこか寂しく、冷たい。
レインは漸く仕事に復帰したが、私たちとは目を合わさず、ただ単調に仕事を熟すだけ。
皆の表情には焦燥、疲労などが見られ、目の下の隈が目立つ者さえ現われた。
私たちも仕事が手につかないくらい、身体がだるくて重い。
碌に眠れていないせいなのはわかっている。
だが、ベッドに潜り込んでも眠りたいはずの身体は拒否をし、寝させてくれはしないのだ。
そろそろ私の身体も限界を迎えようとしている最中に、ざわざわと宮殿内が騒がしくなった。
「何だ?この世界にやってきた『神子』の気配がしないが?」
「「ま、魔王っ!?」」
真っ黒の髪と瞳。頭には角が生え、背中にはこれまた立派な漆黒の翼がはためいている。
この世界で知らぬ者はいない、魔王国の王、『レギウス・アルセルク』が、宮殿内を闊歩していたのだ。
「何故、ここにおられるのですか?レギウス殿」
「ん?ああ、第三王子か?親書を送っても返事がないから赴いたまで。何も魔族だからといって嫌う必要はないだろう?」
「っ!!!何をっ!」
魔族は人族を攫い、食事として『性』を貪り尽くし殺すと言われている。
誰しも魔王国には近づかないし、近づけない。
近づけない理由は人を食事として捉えているだけでなく、『瘴気』が凄いからだ。
「その瘴気がお前たち人間の仕業だと言うことがまだわからないのか?」
「我々が悪いと?」
「ああ、そうだ。我ら魔族に良い感情を持たぬ人族の責任であろう?」
「人を食事としてしか見ていないお前らに何がっ」
「食事?ああ~人の間で言われていることか?人間の『性』など不味いだけだ。好んで誰も食わん。だが、何故かそんな根も葉もない嘘が出回って我ら魔族は大変困っている」
「嘘のはずが・・・・・・・・」
「はっ!笑わせる!ま~~いい。かの者がここにいないのなら用はない。ん?ああ~『元の世界』に戻ったのか」
「「っ!!!え?」」
レギウスが向ける目線の先には神獣の青龍がひっそりと佇んでいたのだ。
スイがどこにもいない世界に戻っただけなのに、宮殿内はどこか寂しく、冷たい。
レインは漸く仕事に復帰したが、私たちとは目を合わさず、ただ単調に仕事を熟すだけ。
皆の表情には焦燥、疲労などが見られ、目の下の隈が目立つ者さえ現われた。
私たちも仕事が手につかないくらい、身体がだるくて重い。
碌に眠れていないせいなのはわかっている。
だが、ベッドに潜り込んでも眠りたいはずの身体は拒否をし、寝させてくれはしないのだ。
そろそろ私の身体も限界を迎えようとしている最中に、ざわざわと宮殿内が騒がしくなった。
「何だ?この世界にやってきた『神子』の気配がしないが?」
「「ま、魔王っ!?」」
真っ黒の髪と瞳。頭には角が生え、背中にはこれまた立派な漆黒の翼がはためいている。
この世界で知らぬ者はいない、魔王国の王、『レギウス・アルセルク』が、宮殿内を闊歩していたのだ。
「何故、ここにおられるのですか?レギウス殿」
「ん?ああ、第三王子か?親書を送っても返事がないから赴いたまで。何も魔族だからといって嫌う必要はないだろう?」
「っ!!!何をっ!」
魔族は人族を攫い、食事として『性』を貪り尽くし殺すと言われている。
誰しも魔王国には近づかないし、近づけない。
近づけない理由は人を食事として捉えているだけでなく、『瘴気』が凄いからだ。
「その瘴気がお前たち人間の仕業だと言うことがまだわからないのか?」
「我々が悪いと?」
「ああ、そうだ。我ら魔族に良い感情を持たぬ人族の責任であろう?」
「人を食事としてしか見ていないお前らに何がっ」
「食事?ああ~人の間で言われていることか?人間の『性』など不味いだけだ。好んで誰も食わん。だが、何故かそんな根も葉もない嘘が出回って我ら魔族は大変困っている」
「嘘のはずが・・・・・・・・」
「はっ!笑わせる!ま~~いい。かの者がここにいないのなら用はない。ん?ああ~『元の世界』に戻ったのか」
「「っ!!!え?」」
レギウスが向ける目線の先には神獣の青龍がひっそりと佇んでいたのだ。
12
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった
藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。
毎週水曜に更新予定です。
宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
アズ同盟
未瑠
BL
事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。
一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。
アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て
……いや、お前は誰だ?
やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。
アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる