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第二章

42.レイフォードの悩み

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第一騎士団が主になって耕している畑には、既に根付き、花を咲かせている植物まである。
「さすがレオンとユーステスだな」
「そうですね・・・・・・・」
「おうわっ!!」

誰も居ないと思っていた俺の隣にいきなりレイフォードがゆらりと現われた。
「な、な、どした?暗いぞ?」
「いえ、ちょっと自分の力のなさに凹んでいるところです」
「???」
「アラベスク団長の加護の力で植物が育ちやすい土へと耕され、ユーステスの加護の『活性』で植物が早くも育ち始めています」
「そうだな?」
見たらそれは誰でもわかる。
なら、何が言いたい?
「私の力では、皆さんを勇気づけることも未来を見せることもできない・・・・・」
「レイ・・・・・」
「私の力は治癒ができるけれども、スイ団長のように失った声、光、音など取り戻すことも出来ないっ!!」
いきなりしゃがみ込み、顔を自分の膝で隠している。
端々に水を啜る音が漏れてくる。
「レイ・・・・・・・確かに、今回お前の出番は少なかったかもしれない。だけど、怪我を治したのは誰だ?綺麗な水を民に与えたのは誰だ?お前だろう?」
「それは自分ができるからです」
「そうだ。お前ができるからだ。今はそれでいいんじゃないのか?」
子供の様に首を横に振るレイ。
「それだけでは、それだけでは駄目です!もっともっと!!」
「ま、今回この國に来てよかったかもな」
「???」
「自分の力が未熟とわかったんだろ?」
「・・・・・・はい・・・」
「なら、帰ってから特訓だな」
「えっ??」
まだ流れている涙を気にもせず、俺に顔を向けてくる。
「本当に、お前ら兄弟は・・・・・・綺麗な顔が台無しだろうが」
親指で水滴を拭ってやると、
「あ、あ、い、恥ずかしい・・・・・・」
顔を赤らめて、自分のハンカチで拭う。
やはりイケメンってのは常にハンカチとか持ってんのか?
今度殿下たちの服探ってみよう。
「すみません、スイだんちょ「スイだろ?今聞いているのは俺だけだから」
「はい、スイ」
はにかみながら嬉しさを顔に表す。
「特訓というのは?」
「う~~ん、治癒の対象人数を増やすことと『質』を上げる訓練だ」
「『質』ですか?」
「ああ、お前なら出来るだろう、数日くらい『加護』なしで生活することなんて」
「はっ???」
数日『加護』から離れることで、一度身体の中から得ている力を取り除き、新しく『加護』を入れ込む。そうすることで書き換えができるはずだ。
うん、できるはず・・・・・・・・・・・。
「ま、心配するな!俺がなんとかするから、今は自分の事だけ考えてろ」
「はいっ!」
レイの頭の中には今、未来が描かれているのだろう、わくわくとした表情が前面に押し出されている。
「スイ・・・・・・あの、少しだけ・・・えいっ!!」
「うわっ!!!」
ドンと抱きついてきたため、俺は踏ん張りがきかず、尻餅をつく。
「いてっ!」
「・・・・・・・兄様ばかりスイに甘えているのが羨ましかったんです」
「ん???むしろ俺がお前たちに甘えてるだろう?」
「いえいえ、スイに甘えてばかりですよ、私たち兄弟。ふふ」
俺の胸に額を押しつけて、小さくイヤイヤをする。
「大きい子供だな」
「今はそれでいいので、頭を撫でてください。そうしたらまた頑張れますから」
「はいはい」
可愛らしい『頼み』を穏やかな心で聞き入れる。



引っ付いているレイをいい加減離そうとすると、穏やかな吐息が聞こえてくる。
「レイ?」
小さく揺すると、寝ているのがわかり、
「おいおい、俺より大きい人間運べるわけねーだろう」
と、途方に暮れたのだった。
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