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第二章
35.泣く
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「スイっ!?」
私たちは駆け寄り、声をかけるも無反応。
ただ表情は今にも涙が零れそうになっていて。
「スイ・・・・・・・・?」
「ふ・・・・・・」
少し水を含んだ声音が聞き出せた。
私たちはそんなスイをキツく抱きしめる。
自分たちにどんな人間の血か分からない物が付こうとも・・・・・・・・
「・・・ぅ・・・・ぁ・・・」
「泣いて良いんだよ、スイ?」
「それか先に風呂ですっきりして、ゆっくりと思いっきり俺たちに泣いている姿を見せてくれ」
「ふ・・・・・ぅん・・・・・・ふろ・・・ありがと・・・ジオルド、ジル」
「「っ!!」」
顔を俯かせ、そのまま汚れを落としに行く。
正直、私たちも血の臭いを纏わせたスイから冷静に話を聞くことなどできないだろうと思っていた。
スイが冷静にではなく、私たちがだ!
あんなスイを今まで見たことがない。
まだ出会って数月ではあるが、スイがこんなに憔悴し、凹むような人物では無いことは知っている。
それが、好ましくて、可愛くて、愛らしくて。
私たちに最も必要とする『モノ』を持っている人物だ。
そんな大切な人のあんな姿を見て冷静でいられるわけがない。
己の頭を冷やす必要があると思い、隣の兄上たちの部屋で風呂を借りることにした。
例え、ここまで啜り泣く声が聞こえてきていても、耐えなければならない。
本当の姿を見せてくれるまで。
部屋に戻ってもまだスイは浴室にいるようで、あまりに長いため心配になって彼がいる風呂の扉を開けると、冷たい水を頭から浴び続けているではないか。
「スイッ!」
私は慌てて水を止め、ジルはタオルでその冷め切った身を包むと漸く私たちに目の焦点が合った。
「ジル・・・?」
「うん」
「ジオルドッ!」
「ああ」
いきなり冷たい身体で抱きついてきたかと思うと、
「うわぁぁぁっぁぁぁ」
と、大声を上げて泣き出したのだ。
ああ、なんと愛おしい・・・・・・・。
なんと綺麗な人なのだろう・・・・・・・・。
ただただ、その感想しか出てこない私は愚かだろうか?
この季節、昼は暖かいが夜は冷え込むので、暖炉に火を灯しスイをフカフカのタオルで包んで、その前に座らせる。
もちろん後ろから私たちが抱きしめる格好でだが。
「スイ、もう話せる?大丈夫?」
「無理なら今日は寝よう」
「・・・・・ううん、大丈夫」
そして、スイが語る内容が如何に『不条理』だった。
『瘴気』を作り出した原因が、我らの世界の責だとは思いもしなかった・・・・・・・・・・
私たちは駆け寄り、声をかけるも無反応。
ただ表情は今にも涙が零れそうになっていて。
「スイ・・・・・・・・?」
「ふ・・・・・・」
少し水を含んだ声音が聞き出せた。
私たちはそんなスイをキツく抱きしめる。
自分たちにどんな人間の血か分からない物が付こうとも・・・・・・・・
「・・・ぅ・・・・ぁ・・・」
「泣いて良いんだよ、スイ?」
「それか先に風呂ですっきりして、ゆっくりと思いっきり俺たちに泣いている姿を見せてくれ」
「ふ・・・・・ぅん・・・・・・ふろ・・・ありがと・・・ジオルド、ジル」
「「っ!!」」
顔を俯かせ、そのまま汚れを落としに行く。
正直、私たちも血の臭いを纏わせたスイから冷静に話を聞くことなどできないだろうと思っていた。
スイが冷静にではなく、私たちがだ!
あんなスイを今まで見たことがない。
まだ出会って数月ではあるが、スイがこんなに憔悴し、凹むような人物では無いことは知っている。
それが、好ましくて、可愛くて、愛らしくて。
私たちに最も必要とする『モノ』を持っている人物だ。
そんな大切な人のあんな姿を見て冷静でいられるわけがない。
己の頭を冷やす必要があると思い、隣の兄上たちの部屋で風呂を借りることにした。
例え、ここまで啜り泣く声が聞こえてきていても、耐えなければならない。
本当の姿を見せてくれるまで。
部屋に戻ってもまだスイは浴室にいるようで、あまりに長いため心配になって彼がいる風呂の扉を開けると、冷たい水を頭から浴び続けているではないか。
「スイッ!」
私は慌てて水を止め、ジルはタオルでその冷め切った身を包むと漸く私たちに目の焦点が合った。
「ジル・・・?」
「うん」
「ジオルドッ!」
「ああ」
いきなり冷たい身体で抱きついてきたかと思うと、
「うわぁぁぁっぁぁぁ」
と、大声を上げて泣き出したのだ。
ああ、なんと愛おしい・・・・・・・。
なんと綺麗な人なのだろう・・・・・・・・。
ただただ、その感想しか出てこない私は愚かだろうか?
この季節、昼は暖かいが夜は冷え込むので、暖炉に火を灯しスイをフカフカのタオルで包んで、その前に座らせる。
もちろん後ろから私たちが抱きしめる格好でだが。
「スイ、もう話せる?大丈夫?」
「無理なら今日は寝よう」
「・・・・・ううん、大丈夫」
そして、スイが語る内容が如何に『不条理』だった。
『瘴気』を作り出した原因が、我らの世界の責だとは思いもしなかった・・・・・・・・・・
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