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第二章

34.焔※残虐表現あり

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「す、スイっ!?」
白い騎士服のスラックスを所々朱で染め、体中から鉄の錆び付いた匂いを発している。
それより、
「スイ、その手に持ったものは・・・・・・」
「ああ、これか?」
スイは私たちにその包みを転がすと、結び目が解け中から人の首が出てきた。
「ひっ!す、スイ!?」
「こいつらの国の名は『焔(ほむら)』。どこかわかるか?」
スイは私たちに紋様の描かれた布を見せる。
その紋様は両旗の間に炎が勢いよく描かれていた。
まさにその国は・・・・・・・・
「ここから『東』にある、『鎖国』している国だ」
「ふ~~ん」
どこか関心が薄い彼は、転がされた頭を鷲づかみ
「ちょっと滅ぼしてくるわ」
「「はっ!?」」
とんでもないことを、さらりと言ってのけた。
「滅ぼすって・・・・・・・そんなことっ!」
「ん~~これ、俺の同族。なんでこっちにいるのか知らねーけど、俺が責任を取る必要あんだろう?」
「へ?いやいやいやいや!何で!何で君が責任取るの!?」
おかしいでしょ?
というか、スイの同族がこっちの世界にいる??
訳がわからない!!!
「それも含めて調べて、滅ぼしてくるわ」
「っ!!!ちょ、ちょっと待って!落ち着こうか、スイ!」
頭が転がっているのは正直気持ち悪くて、悍ましくてどうにかして欲しかったが、スイは全く意に介していない。
残念なことに『慣れている』のであろう。
どんな生活をしてきたのか、想像に絶する。
「『焔』はここからかなり遠い国で、我々はかの国の事情をよく知らないのだ。何せ『鎖国』しているのだからな」
当初この世界に『鎖国』という言葉は存在しなかったのに、その『焔』という国がどこの国とも交渉も貿易もしない『鎖国』政策をとってきて、それで単語としてできた言葉の一つだ。
「そんな国にスイ独りで行かせられるわけないだろう?」
当たり前であろう、どんなに強くともスイは人間だ。
訳も分からない国へたった独りで送り出すことなど、夫として、否、人としてあってはならないことだ。
それでもスイは、
「いや、俺だけで行く。正直足でまといでしかない」
「「っ!!!」」
「それに俺が殺戮兵器になっている姿を見たいのか?」
それは見たくはない、絶対に!
だからそれを止めなければならないのに、
「あの国滅ぼさないと多分この世界が駄目になる、だから、行ってくるわ」
今度は騎士服をちゃんと羽織り、マントを閃かせ、首を二つ鷲掴み、青龍に乗る、
ここまでされて、そしてスイの無表情でも『怒り』が含まれる瞳を見て、引き留められないと判断した。
「必ず戻ってこい、スイ」
「うん」
「どんなスイでも愛している」
「・・・うん。行ってきます」
スイは月明かりのない夜空へ高く高く登って消えていった・・・・・・・・・。


それから5日後。
漸くホルシオが落ち着きだした頃、スイが今度は朱雀に乗って戻ってきたのだった。



全身を真っ赤に染めて・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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