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第二章

31.重い想い

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ドンッという大きな音と共にスイとアルバートが向かった方向から、光の柱が上がり、そして、その先には大きな白い扉が戸を開き、死者の魂を迎え入れている。
何とも厳かで、綺麗で、温かくて・・・・・・。
言葉に出来ない程の見事な光景に、暴動を起こしていた民も立ち止まり、涙を流し、項垂れて、力なくへたり込む。
死者の顔が、表情が、遠くにあるはずの森から何故か見えるのだ。
『見える』と言ったら語弊があるが、それでもその言い方が一番正しい。
ジルから聞いた話では、顔が判るほど原型を留めている遺体がなかったと報告を受けた。だが、どうであろう、ここから見える彼らの表情は「ほっ」として、そして、安らかで・・・・・・。
何より、想う人に笑顔を見せて旅立って行っている。
私の目の錯覚かと思い、周りを見渡すと、その者の家族や恋人が手を伸ばして、別れの言葉を口にしている。
ああ、これは錯覚ではなく、本当に見えているのだ。
スイ、よくやってくれた!
こんな力が君にあったなんて!
私はまだまだ君の事を知らないな。
もっともっと君を見て、もっともっと君と話して、もっともっと・・・・・・・・・

ずっと一緒にいような・・・・・・・私の・・・・・・最愛の人よ・・・・・・




スイがまた多くの人の人心掌握に成功した。
その一人がこの俺だ。
スイは綺麗だ。そして、可愛い。
内面など俺の心が浅ましく汚れているように思えるほど、綺麗すぎるのだ。
それなのに自分を『人間兵器』として卑下するのは、本当に戴けない。
こんなに素敵な場面を作り出す人間のどこが心のない『兵器』なのかっ!
今度その言葉を口にしたら、容赦はしない。
デロデロに甘やかし、愛し、足腰が立てなくなるまでドロドロに愛してやる!
もっともっと、自分に自信を持って欲しい。
そうでなければ、俺が生きる理由などない。
俺はスイに生かされた。
スイによって、人生を楽しめるのだ。
『自分は知らない』なんて顔をいつもしているが、そんなわけないだろう!
俺だけではない!
ほら、見ろっ!
沢山の民が君の行動にいたく感動し、涙を流しているのだぞ?
それを君が否定しては駄目だ!絶対に!
否定するのであれば、どこかに閉じ込めて、息が出来ない程に愛してやる!
肯定しないのであれば、いかに君が素晴らしい人間かを、世界に広め回ってやる!!
覚悟しろ!
ただ、一言言わせてくれ・・・・・・・。

最高だ、君は!
最高のパートナーで、最高の伴侶だよっ!
だから、早く俺の腕の中に帰ってきておくれ
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