不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第二章

23.傲慢令嬢エレノア

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「スイ、ホルシオの子供たちも学校に入学させるのか?」
「ん、そのつもりで連れて帰ったんだよ」
「それであの姉上の発言なのだな。教えてくれてもよかったのに」
「ナルミア王女から言われていたんだよ。『二人には少しでも休んで欲しい』って。バーミリアからずっと動いているからって。あと、「少しは姉を頼りなさいっ!」って怒ってたぜ?」
「「あ、うん。姉上に談判しに行くのは止めておく」」
「それがいい。好意を無駄にしないこと!」
「「はい」」
ダラダラと話しながら廊下を歩いていると、『どうして私がこんな目に遭わなければならないのですかっ!』という、どこか聞いたことのある声が俺たちが向かう先の方から聞こえてくるではないか。
迷わず俺たちは回れ右をして、かなりの遠回りになるが執務室を目指すことにした。
「な~、あれって反省の色なし?」
「だろうね、全く」
「親の顔が見たいと言う言葉はこの場合、当てはまらないな・・・・・苦労しているな、宰相」
「「は~~~~」」
あのお嬢様は牢から出されはしたものの、声から反省は全くしていないのだろう。
「その通りです、スイ殿」
「「「うわっ!!!」」」
いきなり近くのドアからヌメッと現われたのが、昨日の姿が嘘のように窶れ、顔は青を通り越して白になり、目の下の隈がはっきりと浮き出て、そして、白い髪が増えてしまっている。
「さ、宰相っ!?」
そう言えば先ほどの議場では、影も形もなかったことを思い出した。ナルミア様から名前を出されたにも関わらずだ。
なんか、もう・・・・・・・・・
お疲れ様です。
「あの子はスイ殿のお計らいにも感謝をせず、反省も何もなく、挙げ句に衛兵に対し公爵令嬢にあるまじき暴言と態度により牢から出され、私からの処遇をただ待つ愚かな娘です」
「「「は~~~」」」
気の毒すぎて、何て言っていいのか。
「お父様っ!!どうして、私がこの様な扱いをっ!あ、あなた!まだいらっしゃったのっ!さっさとこの宮殿から出て行けと言ったでしょう!聞けぬようなら、その首刎ね落としますわよっ!」
「「「っ!!!!」」」
えらい言いようだな、このお嬢。
呆れて俺は惚けていると、ジオルドが俺の前に出て、彼女の視線から俺を除いたのだ。
「エレノア、君は罪人として刑務所に入りたいのか?」
「何故ですのっ!貴方様を誑かしたそのふしだらな男を、私が断罪して差し上げてますのに!!!」
俺ってふしだらなの?
「聞くに堪えない罵詈雑言だな、全く・・・・・・。宰相からの処分ではなく、私からの処分にしようか?」
「あら、漸くその者の処分を決められましたのね!良かったですわ!これで汚い貴族以外の汚物を排除出来ますのね!!」
「「「っ!!!」」」
「エレノアっ!?」
「あら、お父様、いかがなさいましたの?貴族だけがここに居て良い場所でしょう?何がおかしくて?」
本当に何もわかっていない。君の父君がどのような政策を推し進めているのか。
「君は、親の顔に泥を塗るだけではすまないの?」
「まあっ!私に話しかけないでくださる?爵位もないただの騎士のくせに」
「エレノアッ!!!私は言ったはずだ!スイを侮辱するなら許さないと!」
「何故私が怒られますの?」
何を言ってもこの人は駄目だ。
折角ナルミア様が便宜を図ってくださったのに。
もう、この女性は・・・・・・・・・・。
「君には死罪を言い渡す!これは私の意志であるため、決定事項ではない!だが、私は貴様を許すことは絶対に無いと思えっ!」
「っ!!な、なんでっ!何で私がっ!ジルフォード様からも何とかおっしゃってください!」
ジルに縋り付こうとするが、それをさらりと躱し、
「俺も同意見だ。俺たちの大切な伴侶を一度ならず二度までも侮辱をした。スイが君に対して便宜を図ろうとしてくれたにも関わらず、君はそれを自分でなかったことにした。そして、貴族令嬢にあるまじき発言!あり得ない!貴様はバッチェリー宰相がなさっている仕事を知らないのかっ!どれだけこの国の貧しい人たちが君の父上に助けられているかっ!君の顔を二度と見たくない。ジオルド、宰相、スイを連れて失礼する!後は任せる」
「ああ、そうしてくれ。スイ、ごめん。後で謝らせてくれ」
「いいよ、別に。旨いもん食わせてくれたらそれで」
「ん、食べに行こう、落ち着いたら」
「ん・・・・・・・・待ってる」
「スイ殿、私からも謝罪致します。衛兵、エレノアを再度牢へ!貴族用の牢ではなく一般の牢へぶち込んでおけっ!」
「「はっ!!」」
「いやーーーーーーーーっ!離してっ!ジオルド様!お父様―――――――――っ!!!」
彼女の悲鳴を聞きながら、俺はジルに促されるまま執務室に戻った。
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