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第二章

20.自称婚約者登場

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そして、翌日帝都に戻り、第三騎士団の団長室で報告書を読んでいると、ナルミア様が来訪し、
「スイ、準備は滞りなく進んでいるわよ~。オーガスト兄様たちもね」
「それは僥倖です」
「あと、ジオルド、貴方の騎士団がテンヤワンヤしていたからキュリアス兄様の団が手伝いを買って出てくれたわよ」
「それはありがたい!後ほど兄上に感謝を伝えます」
と、朗らかなムードが漂っている執務室がいきなり、
バタンッ!!!
「ジオルド様!!!どういうことですのっ!私という婚約者がいながら結婚だなんて!」
金色の縦巻きロールにピンク色を地としたフリルの付いたドレスを纏った、スタイルの良い女性が突如乱入してきたのだ。
顔も綺麗だ、スタイルもいい。しかし、如何せん、センスがない!
ああ、全く似合っていないのだ、顔にドレスが!
歳は俺たちと変わらないくらいだろう、それなのにピンクでヒラヒラでゴージャスを着ているのだ。ドレスに着せられてる感が否めない。
「あら、あなた、一塊の騎士に過ぎないのに、何故こちらにいらっしゃるの?出て行きなさい!」
そのゴージャス年増女が俺に指図する。
あ~そういや、上着着てないから、マントもエギュレットもないんだった。
「エレノア!その人は「いいです、殿下。私はこれにて失礼致します」
一礼をし、去ろうとしたのが、
「待て、スイ。命令だ」
「承知しました」
命令とあらば従うのが部下の使命である。
「エレノア、スイに謝罪を」
「何故ですの?私が頭を下げる理由などありませんよ。それともこの貧相なチンクシャが貴方様に言い寄ってきて、突き放せないのですか?」
ブチッ!
「エレノアっ!それ以上スイを侮辱する様ならば、私は許さない!」
「何故ですの?もしかしてあなたがジオルド殿下の伴侶となられた方?ならば、すぐに別れて頂戴!この方は私の許嫁で婚約者。私が愛し、ジオルド様が本当に愛しているのも私ですの!泥棒猫はさっさと隊舎に戻りなさい!いえ、さっさと王宮から出て行きなさい!二度と私たちの目の前に現われないで頂戴!!」
「申し訳ございませんが、それには従えません。私に命令を出せるのは殿下以上の方々でございますので」
「あら、私がジオルド殿下の本当の伴侶なのですから、殿下と同等いうことですわよ。さっさと出て行って頂戴。見たくも無いわ、何の力もないただの騎士がこの部屋にいること事態異常なのよっ!衛兵!さっさとコレを連れ出しなさい!」
強烈な年増は外に控えている衛兵に命令するも、誰一人として従わない。というか、従えないのだ。
「エレノア、いい加減にしないか!」
「事実を申したまででしょう!」
「私は君を婚約者として認めたことなど一度も無い!勝手に纏わり付かないでくれ、と何度も言ったはずだ!はっきり言おうか?私は君のことを『これっぽっちも気にしていない』と」
「ひ、酷いですわっ!あの男がそう言わせているのですね!!!」
もはや修羅場劇場だ。
「殿下、私は一度部屋に戻ります」
再度一礼をし、呼び止められたが、気にせず第四の執務室ではなく訓練場の方へ足を向けた。
途中で、
「スイ殿、お疲れ様です。失礼ですが、娘を見かけなかったでしょうか?金髪でピンク色のドレスを着た」
「ああ、娘さんでしたか。今、ジオルド殿下の執務室にいらっしゃいますよ」
「っ!!!まさか、アレに追い出されましたか?」
「ええ、『一塊の騎士に過ぎない』俺がいてはならない部屋だそうで」
「ひぃっ!!!本当に失礼を!!!アレは、連れて帰り何かしらの処遇を与えます!」
冷や汗が溢れ出て、白のシャツの襟元を濡らしている。
「そんなに怖がらなくていいですよ。俺は貴方方『公爵家』に何かしらの罰を与えようとは、一切考えていません。それに貴方は優秀な方なので、居てくれないと『俺』が困るので」
「そう言って戴けると助かります。あ、『教師』を何人か雇えることとなりました」
「そうですか!よかったです!では、来月に向けて準備をしなければなりませんね。ご協力感謝致します。これからも頼りますので、その際は何卒よろしくお願い致します」
「いえいえいえいえいえいえ、こちらこそ!娘の件はこちらで必ず処罰を与えます。本当に申し訳ございませんでした」
彼は一礼をして、ジオルド殿下の元に走り去った。
彼の名は『ロミリオ・バッチェリー』公爵で、王族に次いで偉い方なのだが、身分に凝り固まらず、優秀な者は民間からでも起用し、そして、仕事もきっちりかっちりとして必ずやり遂げてくれると、超評判の良い方なのだ。それなのにあの娘は・・・・・・
「は~~~親の気苦労が半端ないだろうな」
彼の後ろ姿を眺めて出た言葉が、これだ。
もうはっきり言って同情しかない。
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