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第二章

11.夫婦

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「へ~~そういう事か・・・すまない、俺のクソな親父が関わっているかもしれない。何て言ったって『3年前』だからな」
クソ親父がバーミリアで悪事を働いたのも3年前。
距離からして関わっていないわけがない。
「ただな、親父の肩持つわけでは絶対にないが、あいつはただの馬鹿で、力も何もない阿呆だ。だから、たった一人でできる所行じゃない」
「スイ、実の父親の扱いが・・・・・」
「はあ???あんなのと血が繋がってると思うだけで吐きそうだ」
「ただ『東の国』というのが曖昧だな。バーミリアや我が国フィルハートから見て東の国は多い。どう絞れば良いのか」
「思ったのですが『召喚の儀』を知っている国はどれだけあるのでしょうか?」
「「「「「「それだっ!!!!!!!!!!」」」」」」
そうか、そうだ!
「レイ、よく気付いてくれた!あいつの力ではこちらの世界に来ることができない。というか、俺でもできないんだからな。ということは、必然的に誰かによってこちらに呼ばれたということ」
「だが、スイ。一つ問題がある。『召喚の儀』を知っている国をどうやって探すかだ」
「「「「「「あっ!!!」」」」」」
そこから探さないと駄目なのか~~~~。
「ん、でも父上や宰相たちなら知っているかも?」
「一応戻り次第聞いてみるか、重要ポスト集めて」
「だな。それが一番手っ取り早い。ということで、ジオルド兄上頼みましたよ」
「こういう時だけ『兄上』呼びって・・・・・・・ま、いいけど」
一応話は纏まったので、
「はい、これ」
と、アルバートとエリアスに一枚ずつ紙を渡す。
「「え??」」
「うん、俺たちからの祝い!明日楽しんできて!!」
「「「「えっ!?」」」」
アシュレイ兄弟はその紙を凝視している。
そう、
「ホルシオで超有名なレストランを夜に予約しているから、明日は朝から思い思いに自由に過ごそう。楽しんでおいで」
「私たちと四六時中一緒だと息が詰まるだろう?」
「あと、個室を予約しているから夫婦で楽しんできたらいい」
呆然として、そのまま固まってしまった4人。
「あ、おい?どうした??」
「え、あ、ああっ!だ、団長!!いいのですか?」
「ん?いいから渡してるんだけど?」
レインの目は漸く俺に焦点が合い、モジモジとしながら問いかけてくる。
年上のはずだが、可愛いな~~~。
「殿下、団長、ありがとうございます」
「「「いやいや、どういたしまして」」」
「「「はっ!」」」
レイン以外の3人も漸く正気に戻り、各々お礼の言葉をくれる。
そして、表情は喜びに溢れていて、こちらとしても喜んで貰えて嬉しい。
「団長たちはどうするのですか?」
「ん、俺たちも仕事を忘れて観光予定」
「奥さんの買い物に付き合うのも旦那の務めだしね」
「3人でよっくり街中を歩くなんて初めてで、浮かれてしまうな」
「あは、そうだな。明日は一日各夫婦でゆっくりしよう」
とりあえず、まずは
「腹減ったからランチ食べに行こうぜ」


マントを外していると、王族とか団長とか判別がつかないらしく、気さくに露天商が声をかけてくれる。
王族なのに出店の肉串などを食べている姿は、普通ならありえない。
毒味とか必要だと思うが、それは精霊たちが教えてくれるので大丈夫。
結構食べ歩きだけで腹が膨れる。
この街の食材はいろいろな物が流通しているらしく、港があることから隣国からの輸入品も多い。
そして、今日は漁に出られたのだろう、新鮮な魚が多く見られる。
ふと隣の店を見ると調味料を扱っているようで、目に留まったのが「味噌」らしき物だった。
味見をさせてもらうことが出来たため、少量いただくと、やはり味噌で、どうしてこの世界に存在するのか不思議だった。
それを尋ねると、
「大昔この世界に召喚された巫女様が作り方を広め、好まれた物だよ。あと、こちらの物もね」
と、渡されたのが醤油とわさび。
つまり、巫女様の出身地は「日本」だったという事だ。
「スイ、その調味料がどうかしたのか?」
「あ、うん。これ俺の産まれた世界のしかも俺の国の典型的な調味料なんだよ」
「ほ~~~。ならそれを使って何か作ってくれないか」
「うん、そうする。帝都に戻ってからだけど。さすがに調理器具がホテルでは足りない」
「そっか、残念。楽しみにしておくからね」


人だかりができている箇所があったので、近寄ると掲示板に

『一つ 月に一度は必ず街中の清掃を行う
理由として、『瘴気』は汚れた箇所に集まるからだ
二つ 週末に海の神に感謝を捧げる祭を開催する
理由として、自然が無条件で我々に恵んでくれる訳ではない。感謝してこそ、恩恵があるのだ。それを忘れてはいけない
清掃に参加しない者に、自然の恩恵は授からないだろう
自然は見ている、我らの行いを
汚す事はしても綺麗にしない者たちを自然が助ける理由はない
ホルシオから『瘴気』をなくそう
ホルシオを更に活気ある街にしよう
様々な都市、国から尊敬される都市にしよう!』

早速、ここの若き領主は行動に移したようだ。
少し宗教じみている気がするが、ま、いいだろう。
この掲示を見た者たちには、考えを改めている者が多く見られる。
一方で嫌悪している人もいるのは確かだが、掲示に書かれていることは『嘘』ではない。清掃活動をし恩恵を受けた人がいるならば、考えを改めるであろう。そうであってほしい。
ここで、荷物も増えたことだし、俺とジオルドはホテルに戻ることにして、ジルフォードたちはもう少し街を視察してくることになった。
ジルフォードもホテルに戻ろうとしたが、ジオルドが「ジルは子供の頃外に出ていないのだから、今のうちに見ておいた方が良い」と言ったことで、「それもそうだな。市井を知ることも上に立つ者の務めだよな」と納得して、彼らと分かれたのだ。
「結構買ったな~、祖国の調味料!」
「何か意味不明な物が多いけどね。私が美味しいと思ったら取り寄せようか?」
「ええええ、ジオルドの味覚次第なの!?それなら自分で取り寄せるわ」
「ははは、冗談だ。片付けたらどうする?このままゆっくりするかい?」
どうしようか、と考えなくても俺は少し行きたいところがあった。

「ホルシオって孤児院とか孤児を受け入れる施設ないの?」

「教会があったけど、そこで受け入れはしていないのか・・・。ん?でも、国から支援金が出されいてるはずだから、受け入れを拒否できないのだが・・・・・・。臭うな」
「そういうこと。ということで、マントつけて行くぞ。下手に出られたらウザいから」
「そうだな」
ジオルドのマントを取って、エポーレットに着けてやると、何か耳まで真っ赤にして照れていた。
「い、いや、その・・・こういう夫婦みたいな感じ・・・・・スイはしてくれないだろうな~って私たち思っていたから、嬉しくて・・・・・・・」
「あっ!ああ、そういうこと!前にさ、夫の分くらい俺がしようと思ったらアシュレイ兄弟に『私たちの仕事を取らないでください』と言われてさ・・・・・・・正直に言って。俺にして欲しい?」
「あ、ああ、もちろんだろう?疲れが一気に飛ぶだろうね」
「そっか・・・・・・うん、アシュレイ兄弟に「いや、いいよ、それは」
「でも」
「あの兄弟の仕事なのは確かだからね。それを取ってしまったら、申し訳ないから、彼らがいないときだけしてくれる?」
「うん!それなら任せろっ!」
ジオルドは俺を抱きしめて、そして俺のマントを着けてくれた。
「何かこういうの・・・いいね」
「だろう?恥ずかしいけど、嬉しいね」
「ああ、うん」
お互いに照れて、俯いたけど、示し合わせたように顔を上げて、啄むような軽いキスを送り合う。
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