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第二章
10.領主
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朝9時に領主の元を俺たち王子とエリアスとアルバートで訪れた。受け側は皆ホテルで休んで貰っている。
スイは見送りにも来なかったから、相当なダメージだったのだろう。
「昨日伺ったフィルハート帝国第二騎士団団長エリアス・グラスゴーだが」
「お聞きしております。ご案内いたします。どうぞこちらへ」
我々が通された箇所は昨日エリアスが通された間と同じだという。
確かに違和感がある。
豪華な内装をしていても拭えない何かがある。
出されたカップにしろ、お茶にしろ、茶菓子にしろ、あまり高級な物とは思えない。
「すみません、王族の方々をお待たせいたしまして」
現われたのは、私たちと同年代であろう青年が綺麗な礼で私たちに挨拶をしたのだった。
「いや、こちらこそすまない。ところで、こちらの当主は?」
「父は3年ほど前から行方不明となっており、私が後を継いでおります」
「そうだったか。すまない。ところで・・・・・・」
「ああ、殿下たちが感じていらっしゃる通りです」
ここからまさかの展開があろうとは・・・・・。
「ここにあるのは安物ばかりの張りぼてです。約3年前から『瘴気』が発生し、それを祓うために私財を投入して参りました。しかし、限界が近づいております」
「何故『3年前』なのだ?」
全ての事が『3年前』から始っていることを不思議に感じる。
「はい、東の国から来たという放浪者がこのホルシオに『清掃など金にならない』と宣ったそうです。それから、領民が変わってしまった」
バーミリアと同じ事がこのホルシオでも起きていたのだ。
キーワードは『東の国』。
「そうか、それで祭事を行う資金も無く、今に至るのだな?」
「お恥ずかしながらその通りです」
それが本当ならば、否、本当であろう。
何故ならこの屋敷の者の衣服は皆贅沢な生地ではなく、安物の生地を綺麗に繕っているだけだからだ。
「資金はこちらで用立てる。祭りを、海の神に関する祭りを週末に開け!あと、領民に『清掃がどれほど重要か』を説くのだ」
私はスイや精霊たちから教えて貰った『瘴気が発生する原因』を伝えると、
「え、あ、ああっ!あの異国の放浪者はいったい!この都市をどうしようとっ!?」
確かにだ。
このホルシオをどうしようと企てていたのか・・・・・・・。
ただ、このホルシオだけに留まらないのだろうことは見当がつく。
何故ならその東の国の放浪者がこの土地にもういないのだから。
「すぐに手配を致します!ご配慮、本当に感謝致します、殿下!!」
「いや、私たちではなく、私たちの・・・・・伴侶に言ってくれ。アレは大層喜ぶぞ」
「『奥様』ですか?『奥様』は何がお好きでしょうか?こちらでご用意できるものであれば・・・・」
「いや、それはいい。今は自分の領民の事だけ考えよ。私たちの、な、ジルフォードなんか言ってくれないか?」
「いえいえ、兄上が全てお話されておりますから、私如きがね~~~」
「え、あ、ジル、額に青筋が・・・・・」
「あっ!では、私から一つ貴殿に頼みたい事がある」
「何でございましょうか?」
「我々の伴侶は、魚介類が本当に好きでな。こちらに来ることを本当に楽しみにしていたのだ。だから、美味い物、屋台でいいから領民たちが作る物を食べさせてやってくれ」
「「「「・・・・・っ!!!」」」」
「は、はいっ!!!手を尽くします!!!」
領主は何を言われるのか冷や冷やしていた分、割と普通のことだったので拍子抜けしてしまい、腰を抜かしてしまった。
「ははは。そんなに身構えるな。お前は領民を大切にしている領主であることが、精霊たちからわかる。悪いようにはしない。君は帝国の誇り高い領主の一人である事を誇っていい」
「あ、あ、あぁぁっ!」
青年は今までどれだけ苦しんだのだろう。
自分が不甲斐ないせいで、と、どれだけ思い込んでいたのだろう。
ジルフォードが彼の背を優しく撫でる。
その彼は、雄叫びはさすがに上げないが、嗚咽を漏らし、自分の衣服を掻きむしる。
その姿にジルは、抱きしめるのは「スイだけ」と決めているので、自分の手持ちのハンカチで涙を拭いてあげたのだった。
報告するためにホテルに戻ると、
「え、そうなの!?じゃ、今度そこ連れてってよっ!」
「ええ、スイが行きたいのなら、是非!ね、兄様」
「団長が気に入るものがあるかわかりませんが」
「楽しみ!!」
受け側3人がリビングで楽しそうに団欒していたのだ。
「あ、お帰り、皆!」
「お帰りなさいませ」
「上着、お預かり致します」
レインとレイフォードが、上着をハンガーにかけてくれる。これを伴侶がしてくれたら嬉しいのだが、スイはまずしないだろう。
なぜなら、自分のですらレインがしてしまうからだ!
夫婦のコレ、必要作業じゃない?と、夢を見ている歳ではないか。
「スイ、昨日はごめんね。もう大丈夫?」
「ん、平気。俺もごめん、怒っちゃって。そっちも身体大丈夫?」
これこれこれっ!
これが夫婦、伴侶ってもんだろぉぉぉぉぉ!
「ジオルド、表情が五月蠅い」
「っ!!!!!」
ジル、それ兄に言う言葉かっ!?
「お詫びに、巷で美味しいと有名なエールを買ってきたから、昼食時に報告がてら飲もう?」
「うんっ!!」
あああああっ!
とびっきり可愛い笑顔です事!!!
スイは見送りにも来なかったから、相当なダメージだったのだろう。
「昨日伺ったフィルハート帝国第二騎士団団長エリアス・グラスゴーだが」
「お聞きしております。ご案内いたします。どうぞこちらへ」
我々が通された箇所は昨日エリアスが通された間と同じだという。
確かに違和感がある。
豪華な内装をしていても拭えない何かがある。
出されたカップにしろ、お茶にしろ、茶菓子にしろ、あまり高級な物とは思えない。
「すみません、王族の方々をお待たせいたしまして」
現われたのは、私たちと同年代であろう青年が綺麗な礼で私たちに挨拶をしたのだった。
「いや、こちらこそすまない。ところで、こちらの当主は?」
「父は3年ほど前から行方不明となっており、私が後を継いでおります」
「そうだったか。すまない。ところで・・・・・・」
「ああ、殿下たちが感じていらっしゃる通りです」
ここからまさかの展開があろうとは・・・・・。
「ここにあるのは安物ばかりの張りぼてです。約3年前から『瘴気』が発生し、それを祓うために私財を投入して参りました。しかし、限界が近づいております」
「何故『3年前』なのだ?」
全ての事が『3年前』から始っていることを不思議に感じる。
「はい、東の国から来たという放浪者がこのホルシオに『清掃など金にならない』と宣ったそうです。それから、領民が変わってしまった」
バーミリアと同じ事がこのホルシオでも起きていたのだ。
キーワードは『東の国』。
「そうか、それで祭事を行う資金も無く、今に至るのだな?」
「お恥ずかしながらその通りです」
それが本当ならば、否、本当であろう。
何故ならこの屋敷の者の衣服は皆贅沢な生地ではなく、安物の生地を綺麗に繕っているだけだからだ。
「資金はこちらで用立てる。祭りを、海の神に関する祭りを週末に開け!あと、領民に『清掃がどれほど重要か』を説くのだ」
私はスイや精霊たちから教えて貰った『瘴気が発生する原因』を伝えると、
「え、あ、ああっ!あの異国の放浪者はいったい!この都市をどうしようとっ!?」
確かにだ。
このホルシオをどうしようと企てていたのか・・・・・・・。
ただ、このホルシオだけに留まらないのだろうことは見当がつく。
何故ならその東の国の放浪者がこの土地にもういないのだから。
「すぐに手配を致します!ご配慮、本当に感謝致します、殿下!!」
「いや、私たちではなく、私たちの・・・・・伴侶に言ってくれ。アレは大層喜ぶぞ」
「『奥様』ですか?『奥様』は何がお好きでしょうか?こちらでご用意できるものであれば・・・・」
「いや、それはいい。今は自分の領民の事だけ考えよ。私たちの、な、ジルフォードなんか言ってくれないか?」
「いえいえ、兄上が全てお話されておりますから、私如きがね~~~」
「え、あ、ジル、額に青筋が・・・・・」
「あっ!では、私から一つ貴殿に頼みたい事がある」
「何でございましょうか?」
「我々の伴侶は、魚介類が本当に好きでな。こちらに来ることを本当に楽しみにしていたのだ。だから、美味い物、屋台でいいから領民たちが作る物を食べさせてやってくれ」
「「「「・・・・・っ!!!」」」」
「は、はいっ!!!手を尽くします!!!」
領主は何を言われるのか冷や冷やしていた分、割と普通のことだったので拍子抜けしてしまい、腰を抜かしてしまった。
「ははは。そんなに身構えるな。お前は領民を大切にしている領主であることが、精霊たちからわかる。悪いようにはしない。君は帝国の誇り高い領主の一人である事を誇っていい」
「あ、あ、あぁぁっ!」
青年は今までどれだけ苦しんだのだろう。
自分が不甲斐ないせいで、と、どれだけ思い込んでいたのだろう。
ジルフォードが彼の背を優しく撫でる。
その彼は、雄叫びはさすがに上げないが、嗚咽を漏らし、自分の衣服を掻きむしる。
その姿にジルは、抱きしめるのは「スイだけ」と決めているので、自分の手持ちのハンカチで涙を拭いてあげたのだった。
報告するためにホテルに戻ると、
「え、そうなの!?じゃ、今度そこ連れてってよっ!」
「ええ、スイが行きたいのなら、是非!ね、兄様」
「団長が気に入るものがあるかわかりませんが」
「楽しみ!!」
受け側3人がリビングで楽しそうに団欒していたのだ。
「あ、お帰り、皆!」
「お帰りなさいませ」
「上着、お預かり致します」
レインとレイフォードが、上着をハンガーにかけてくれる。これを伴侶がしてくれたら嬉しいのだが、スイはまずしないだろう。
なぜなら、自分のですらレインがしてしまうからだ!
夫婦のコレ、必要作業じゃない?と、夢を見ている歳ではないか。
「スイ、昨日はごめんね。もう大丈夫?」
「ん、平気。俺もごめん、怒っちゃって。そっちも身体大丈夫?」
これこれこれっ!
これが夫婦、伴侶ってもんだろぉぉぉぉぉ!
「ジオルド、表情が五月蠅い」
「っ!!!!!」
ジル、それ兄に言う言葉かっ!?
「お詫びに、巷で美味しいと有名なエールを買ってきたから、昼食時に報告がてら飲もう?」
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