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第二章
6.清廉と黄金の谷間
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近くに汚い下水が流れる細い路地の薄暗い場所に皆を連れてきた。
そこには小さな荒ら家が建っており、中には汚れた子供たちの姿が見える。
この近辺には大人の気配は全くない。人通りもなければ、子供たちの息遣い以外何もない箇所だ。
そして、俺には見えるが、皆には薄暗い場所のためはっきりとは見えないらしく、『瘴気』が渦巻いているのが感覚で分かるのだろう、この状況であれば。そのため表情が硬くなってしまっている。
「レイン、お前の『風』の力ならばこの家を綺麗にできるはずだ」
「???ですが、『瘴気』は私には祓えませんよ?」
「いや、この『瘴気』は綺麗にすればいいだけの物。色が違うだろう?と、言ってもわからないか。これは人間の心で出来た『瘴気』ではないんだ。人間のエゴによるものだけど。だけど、これは水質汚染やゴミなどの異臭で発生した『瘴気』だから、レインの力で祓える。それにレインの力には『清廉』が宿っているから、レインが指定した範囲は綺麗になる。ま、攻撃の力もお前は凄いけどな」
「っ!!ほ、褒められた!褒められましたよっ!エリアス!!」
「あ、ああ!興奮するなよ。お前本当スイが好きだな」
「ええっ!もう大好きすぎて、離れたくないくらいです!」
「・・・・・俺は?」
「・・・・・・心の小さい男は嫌いです」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
気の毒すぎる、新婚なのに。
「なんか、エリアス、ごめん。こいつ何か拗らせてるな?」
「ああ、もうスイを神聖化してる。正直ちょっと怖い」
「はは、ははは・・・・・・・・。ま、とりあえず、レイン、やれ」
「はいっ!!!」
レインは両手に風を興し、それを優しい風にまで整える。
そして、それを家に孤を描くように解き放つ。
「綺麗だ・・・・・・」
「ああ、綺麗だな・・・・・・」
エリアスの率直な意見は、俺たち皆も思ったことで、口から「綺麗」という言葉が絶え間なく出ていることすら、俺たちは把握していなかった。
キラキラと風が七色の光を纏って、家の『瘴気』を無色化していく様は、素晴らしいの一言だ。
こんな力をレインは持っていたのに、今まで使えなかったことは、本当に悔やまれる。
家だけでなく、そこに存在する物たちも綺麗に清浄化され、子供たちの顔には溌剌とした表情が浮かんでいる。
しかし、それでも浮かない顔の子がいる。その子の視線を追うと、奥に寝かされている子たちがいた。
「ジオルド殿下、レイ、治癒をしてあげてくれるか?」
「ああ、わかっている」
「私の力も役立てないと」
「俺は、この猫を助けないとな」
入り口付近に寝かされた、猫の親子。
母猫が怪我と病気を患っているらしく、子供たちが一生懸命に乳を吸うもまともにご飯を食べられていないせいで、母乳が出ないようだ。
子猫が必死に鳴いて、泣いて・・・・・・・・。
「ジルフォード殿下、こちらに転移用魔法石を持ってこられてますか?」
「あ、ああ。あるぞ、ここに」
「よかった。・・・・・・・君をこれから治してあげる。だから、警戒しなくていい」
元気も体力もないはずなのに、子供を護ろうと俺に牙を見せてくる母猫。
そっと身体を摩ると、それで伝わったのか、くたりと身体から力を抜いてくれた。
「ん、良い子だ。ほら、もう治っているよ?」
母猫の怪我はなくなり、そして、病も元々『瘴気』でなった病なのですぐに治してやれた。
「ここでは君たちは暮らし辛いだろう?どうだろう?俺たちの家に来るかい?温かい布団にご飯を用意できるよ?」
「・・・・・にやぁ~~~」
母猫は俺の言葉を信用してくれたのか、手のひらに頭を擦りつけてくる。
「ん。ジルフォード殿下、ここの子供たちと猫の親子を帝都に連れて帰りますので、転移をお願いしてもよいですか?」
「あ、ああ、それは構わないが、兄上たちに先にお伝えしないと」
「それは大丈夫ですよ。ナルミア様が動いてくださっていますから。新婚旅行が終わり次第、全てお話しします」
二度とここには戻って来られないこと、今後のことを簡単に子供たちに説明して、大切な物だけを家の中かから持ち出してもらい、そして、
跡が残らないように俺の炎で家を燃やした。
子供たちの顔には「後悔」も「寂しい」も浮かんでいなくて、逆に今後の生活に期待を込めた目を俺たちに向けてきた。
それでいい。
前を向いて生きてくれたら、それでいいのだ。
俺は猫の家族を抱いて、ジオルドとレイは動けなかった子供を抱いて、そして、他の子供たちはジルたちに手を繋がれて、一気に帝都へ!!
「あらあら、スイ。やっぱりこうなるのね~~~。予想が外れなかったことは残念だけど、用意はしてあるから」
「ナルミア王女殿下、感謝いたします!」
「「「「「?????」」」」」
「姉上??」
「ふふふ、ジオルドもジルもまだ楽しんでいらっしゃい。休暇はまだまだあるんだし。この子たちのことは任せて頂戴。スイに頼まれていることだしね」
「ええ、ナルミア様に頼って本当に良かったです」
「っ!!!」
姉上は口元を押さえたかと思うと、いきなり
「スイ!あなたって子は!ああ、なんて可愛いのかしら!!」
「ぐっぐるじぃ・・・・・・」
いつかスイがこっそりと『黄金の谷間』と称したナルミア姉上の谷間に顔面を全て埋め尽くされて、悶えてはいるようだけど、手の動きが些かいかがわしい!!
「スイ、お仕置き決定だから!」
「ふぐぅぅぅぅっ!!!」
ビクリと肩を振わせて、必死に姉上の谷間から抜け出そうとするけど、もう遅い。
ほら、ジルだってヤル気満々だよ?
そこには小さな荒ら家が建っており、中には汚れた子供たちの姿が見える。
この近辺には大人の気配は全くない。人通りもなければ、子供たちの息遣い以外何もない箇所だ。
そして、俺には見えるが、皆には薄暗い場所のためはっきりとは見えないらしく、『瘴気』が渦巻いているのが感覚で分かるのだろう、この状況であれば。そのため表情が硬くなってしまっている。
「レイン、お前の『風』の力ならばこの家を綺麗にできるはずだ」
「???ですが、『瘴気』は私には祓えませんよ?」
「いや、この『瘴気』は綺麗にすればいいだけの物。色が違うだろう?と、言ってもわからないか。これは人間の心で出来た『瘴気』ではないんだ。人間のエゴによるものだけど。だけど、これは水質汚染やゴミなどの異臭で発生した『瘴気』だから、レインの力で祓える。それにレインの力には『清廉』が宿っているから、レインが指定した範囲は綺麗になる。ま、攻撃の力もお前は凄いけどな」
「っ!!ほ、褒められた!褒められましたよっ!エリアス!!」
「あ、ああ!興奮するなよ。お前本当スイが好きだな」
「ええっ!もう大好きすぎて、離れたくないくらいです!」
「・・・・・俺は?」
「・・・・・・心の小さい男は嫌いです」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
気の毒すぎる、新婚なのに。
「なんか、エリアス、ごめん。こいつ何か拗らせてるな?」
「ああ、もうスイを神聖化してる。正直ちょっと怖い」
「はは、ははは・・・・・・・・。ま、とりあえず、レイン、やれ」
「はいっ!!!」
レインは両手に風を興し、それを優しい風にまで整える。
そして、それを家に孤を描くように解き放つ。
「綺麗だ・・・・・・」
「ああ、綺麗だな・・・・・・」
エリアスの率直な意見は、俺たち皆も思ったことで、口から「綺麗」という言葉が絶え間なく出ていることすら、俺たちは把握していなかった。
キラキラと風が七色の光を纏って、家の『瘴気』を無色化していく様は、素晴らしいの一言だ。
こんな力をレインは持っていたのに、今まで使えなかったことは、本当に悔やまれる。
家だけでなく、そこに存在する物たちも綺麗に清浄化され、子供たちの顔には溌剌とした表情が浮かんでいる。
しかし、それでも浮かない顔の子がいる。その子の視線を追うと、奥に寝かされている子たちがいた。
「ジオルド殿下、レイ、治癒をしてあげてくれるか?」
「ああ、わかっている」
「私の力も役立てないと」
「俺は、この猫を助けないとな」
入り口付近に寝かされた、猫の親子。
母猫が怪我と病気を患っているらしく、子供たちが一生懸命に乳を吸うもまともにご飯を食べられていないせいで、母乳が出ないようだ。
子猫が必死に鳴いて、泣いて・・・・・・・・。
「ジルフォード殿下、こちらに転移用魔法石を持ってこられてますか?」
「あ、ああ。あるぞ、ここに」
「よかった。・・・・・・・君をこれから治してあげる。だから、警戒しなくていい」
元気も体力もないはずなのに、子供を護ろうと俺に牙を見せてくる母猫。
そっと身体を摩ると、それで伝わったのか、くたりと身体から力を抜いてくれた。
「ん、良い子だ。ほら、もう治っているよ?」
母猫の怪我はなくなり、そして、病も元々『瘴気』でなった病なのですぐに治してやれた。
「ここでは君たちは暮らし辛いだろう?どうだろう?俺たちの家に来るかい?温かい布団にご飯を用意できるよ?」
「・・・・・にやぁ~~~」
母猫は俺の言葉を信用してくれたのか、手のひらに頭を擦りつけてくる。
「ん。ジルフォード殿下、ここの子供たちと猫の親子を帝都に連れて帰りますので、転移をお願いしてもよいですか?」
「あ、ああ、それは構わないが、兄上たちに先にお伝えしないと」
「それは大丈夫ですよ。ナルミア様が動いてくださっていますから。新婚旅行が終わり次第、全てお話しします」
二度とここには戻って来られないこと、今後のことを簡単に子供たちに説明して、大切な物だけを家の中かから持ち出してもらい、そして、
跡が残らないように俺の炎で家を燃やした。
子供たちの顔には「後悔」も「寂しい」も浮かんでいなくて、逆に今後の生活に期待を込めた目を俺たちに向けてきた。
それでいい。
前を向いて生きてくれたら、それでいいのだ。
俺は猫の家族を抱いて、ジオルドとレイは動けなかった子供を抱いて、そして、他の子供たちはジルたちに手を繋がれて、一気に帝都へ!!
「あらあら、スイ。やっぱりこうなるのね~~~。予想が外れなかったことは残念だけど、用意はしてあるから」
「ナルミア王女殿下、感謝いたします!」
「「「「「?????」」」」」
「姉上??」
「ふふふ、ジオルドもジルもまだ楽しんでいらっしゃい。休暇はまだまだあるんだし。この子たちのことは任せて頂戴。スイに頼まれていることだしね」
「ええ、ナルミア様に頼って本当に良かったです」
「っ!!!」
姉上は口元を押さえたかと思うと、いきなり
「スイ!あなたって子は!ああ、なんて可愛いのかしら!!」
「ぐっぐるじぃ・・・・・・」
いつかスイがこっそりと『黄金の谷間』と称したナルミア姉上の谷間に顔面を全て埋め尽くされて、悶えてはいるようだけど、手の動きが些かいかがわしい!!
「スイ、お仕置き決定だから!」
「ふぐぅぅぅぅっ!!!」
ビクリと肩を振わせて、必死に姉上の谷間から抜け出そうとするけど、もう遅い。
ほら、ジルだってヤル気満々だよ?
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