不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

文字の大きさ
上 下
59 / 227
第二章

5.団長’s

しおりを挟む
目立つマントは取って、騎士服だけを着て港に行くと、先ほどは気付かなかったけど、
「ゴミが多いな」
「ああ、それが瘴気の原因の一つだな」
「一つ?まだあるのか?」
「多分、アルバート、この街で『祭り』が行われたのはいつか調べてくれないか?それも『海』に関係ある祭りだ」
「了解だ。じゃあ、エリアスはこのホルシオを統括する領主に、謁見する手はずを整えてくれ。俺は辺境伯の人間でもそういうことは全て兄上に頼ってるから手順を知らないんだよ」
「わかった。すぐにする。スイはどうするんだ?」
「俺は、ここを片付けられる範囲で掃除するから。終わったら手伝ってくれ」
「「了解。無理だけはするなよ?」」



砂浜に降りると、砂は綺麗なのに、その中に小さなゴミが混じっているのがわかる。
大きいゴミで木屑はわかるが、靴や瓶、空き缶などが流れ着いている。ちなみにこの世界にも缶詰は存在する。前の世界とは異なる製法だけど、味は保証する。
結局前の世界と変わらないゴミの種類。ないのはプラスチックゴミだろうか。
俺は集められる範囲でゴミを一箇所に纏めていく。
その姿を漁港の人たちが見ているが、誰も手伝おうとはしない。
騎士服を着ている俺がしていてもだ。
ゴミ拾いを蔑んだ目で見ている。
この偏見意識こそ変えなければならない。



ホルシオの役所で、最後の祭りがいつ行われたか受付嬢に確認する。
暫く待っていると、番号を呼ばれたため俺は席を立つ。
そこで告げられたのが、
「かれこれ3年は海に関する祭りだけではなく、全ての行事が行われていません」
とのこと。
この答えは「正しい」のか「間違っている」のか。
真実はスイしかわからないが、俺の考えでは「間違っている」。



ホルシオの領主の館で、手続きを行う。
「明日、時間をもらえるか?」
「旦那様に確認をいたしますので、暫くこちらでお待ちください」
応接室に通された俺は、不躾に室内を見渡す。
品がいいのか悪いのか、正直言って俺にはよくわからないが、ただ違和感を感じる。
しかし、これだけの贅沢品。
何か隠していることでもあるのか?
調べる必要性がありそうだ。
暫く待っていると、先ほどの執事が入ってきて、
「旦那様より明日の午前中でしたら時間が取れるとのことですが、いかがいたしましょうか」
「そうか。ならば、明日9時に第三・第四王子殿下、並びに私と第三か第四の団長が共に訪れる。そう伝えよ」
「っ!!!殿下方もですかっ!?し、失礼いたしました!畏まりました。旦那様にお伝えいたします」
「ああ、頼んだぞ」
執事のあの狼狽ぶりは、いささか不自然すぎる。
確実に何かを隠しているな。



「あ、アルバート。そっちは調べがついたのか?」
「エリアス!ああ、少しきな臭いぞ?」
「俺の方もだ。ま、ホテルに帰ってから報告としよう。さて、スイを手伝うかっ!」
見えてきた浜辺でスイを見つけると、子供たちと楽しそうに掃除をしていた。
その子供たちの衣服はボロボロで、髪も手入れされていない。
どこの子たちなのか?
「あっ!アルっ!エリアスっ!早くっ!あ、こらそれは危ないから駄目だよ!!」
子供に振り回されているスイが、可愛らしい。
殿下たちが『可愛い可愛い』と口癖のように言うのも納得だ。
「スイ、この子たちは?」
「そうそう!この子たち・・・・・・親がいないんだって」
「孤児か?」
「うん、そうみたい・・・・・・」
おかしい、と思う。
このホルシオは港町として栄え、貧富の差が少ない都市だと把握している。
だが、現実に『孤児』がいるのだ。
館で見たあの違和感とアルバートが持って帰った情報を照らし合わせると、何かがわかるはずだ。
とりあえず、俺たちは粗方片付けが済んでいることを確認して、ホテルに戻ろうとしたのだが。
「スイ?」
「ん、レインを連れてきてくれないか?」
「レインを?」
「ああ、そうだ。レインならば綺麗にしてくれるから」
「?????わかった。すぐ呼んでくるから、ホテルの近くで待っていろ」
スイに言われたとおり、俺はレインを起こしに行くが、既に皆がノロノロと起きていて、事情を話すと、サッと自分の立場を切り替えた。

「スイ団長!お待たせしました!」
「悪いな、体調悪いときに」
「いえっ!団長が私が必要だとおっしゃるのならば、この身引きずってでも参上いたします」
「・・・・・あのな、レイン。自分の身体を第一に考えてくれ。そこまで言ってくれるのは有り難いし、嬉しいけども」
スイ団長は顔を赤らめて、そっと顔を伏せられた。
ふふふ、耳まで真っ赤。
本当に愛らしい方だ。
「それで、私に用とは?」
「あ、ああ。ジオルドとレイもいるから丁度いいや。ついてきてくれ」
「私たちは『ついで』なのか?」
と、ジオルド殿下から若干不満げな声が聞こえたが、無視することに決めた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ
BL
異世界に飛ばされた健(たける)と大翔(ひろと)の、食堂経営スローライフ。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

処理中です...