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第二章

4.祝い酒

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「お前たち大丈夫か?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
受け側は皆、ソファーにグッタリと身体を預けているだけ。
声も出ないほど憔悴している。
「アルバート、聞きたいのだが、そのままあそこで?」
「いえ、それはないですよ。さすがに・・・・・・」
俺たちの後を追って、4人もすぐに引き上げ、そのままこのスイートの3つあるベットルームの2つで事に及んでいたらしい。
全く気付かなかった。
「スイ、食事はどうする?」
「ん~~食べる。魚が食べたい、タコが食べたい、カルパッチョ」
「「全くブレないね・・・・・」」
「わかったよ、ここに持ってきて貰うよう手配しよう。沢山の魚料理をお願いしようか?」
「・・・・・・・・・・・いい。だって漁出来ていないのに魚ないから。今日は肉でいい・・・・・・」
それもそうだ。漁港は閉まり、ホルシオと言えば『市場』といえる場所が閉鎖されていたのだから。
「了解。じゃ、俺が行ってくるからジオルド、スイたちを頼んだぞ?」
「お待ちください、ジルフォード殿下。我々が行きますよ」
「そうですよ、わざわざ殿下が行く必要はないですよ。私たちが行ってきますので、レインたちを頼みます」
「ああ、ありがとう。助かる。で、お前たち、ここの酒だけではどうせ足りないのだろう?スイもかなり飲むから、お前たちが飲みたい酒を追加してきてくれ」
「おおおおおおおおおっ!ありがたい!!では、遠慮なく」
「とりあえず、俺超冷たいビールが飲みたい!」
「了解だ、スイ。ここはビールの種類も豊富だ。お薦めを頼んでくるから、レイフォードたちと休んでてくれ」
「ああ、サンキュー」
アルバートとエリアスが出て行くと、徐にスイは立ち上がり、
「さてと、テーブルのセッティングしますか!レインとレイフォードは邪魔だから、ベッドで寝てこい。料理が来たら起こしてやるから」
「「はい、お言葉に甘えます」」
二人の足取りはフラフラなのに、スイはもう大丈夫なようだ。
俺たちとあいつらのセックスの濃厚さが違うのか、それともスイの体力のゲージが俺たちより一回り以上大きいのか。
一度あいつらのセックスの内容を聞いてみたいと思っていたら、ジオルドと目があって、同じ事を考えていたらしい。
やはり双子だ。


スイのセッティングは完璧だった。
この新婚旅行もとい視察は、私たちの新婚旅行も兼ねているのだが、実は私たちの結婚を期に、アルバートとレイフォード、エリアスとレインも結婚せざるを得なくなったのだ。
強制的に!
私たちもだが、この四人も兎に角モテる。
お互いに相手がいることを知っていてもご令嬢方のアプローチがウザいのだ。
それが騎士たちに悪い方向で蔓延し、あまりいい状況とはいかなくなってきてしまったのだ。
それを見かねた兄上たちが
『お互いを好き合って、愛し合っているんだから、結婚な』
と、どの家の了承も勝手に得て、強制的に夫婦となった。
ま、このくらいしないと、この者たちは一生恋人のままだった気がするのは私だけではないはず。
なので、この2つのカップルも新婚旅行に当てはまる。
帝国としては「やっとか」と胸をなで下ろしたとか。
それほどまでの『愛』だったようだ。
それをどこで知ったのかスイが
『あいつらも新婚夫婦なのだから祝ってやろう』
と言うので、実は私たち3人でこの2つのカップルにプレゼントがあるのだ。
それは、3日後のお楽しみ。

料理を入り口で受け取ると、スイがそれを並べていく。
ホテルの者にサーブを頼んでも良いのだが、スイが「折角の新婚旅行なんだから、他人は入れないでおこう」というので、任せることにしたのだ。
それにしても肉料理が多いな。
野菜が少なくて、物足りないと感じる。
以前はそんなこと思ったことなかったんだが。
これもスイの『食育』のおかげかな?
「あ、これ、メッセージカードが付いてるけど?」
と、ワインクーラーから取り出したボルトを私に渡すので送り主を見ると、アシュレイ家からだったので、レイに渡した。
上等なシャンパンで、これも私たちは口にしたことはない。
冷やされていたシャンパンは他にもあった。
それにはメッセージカードが付いていないが、それでも贈り物だとわかるようにボトルに花が添えられ、またグラスゴー家が管理する土地の特産で作られた上質なシャンパンだと言うことが判明した。
そして、美しいグラス。これも祝いの品だという。
これはシュタイン領の特産品ガラス細工だ。とても美しく、品があり、透明なシャンパンに合うグラスであろう。
各々の家が子供たちの結婚を喜んで、贈っていることに嬉しく思う。
あとは、気になったのが、
「スイ、もう一本ボトルがあるようだけど?」
「あ、これはワインだな?メッセージがついてるな。俺用意してるからレイン読んで」
「あ、はい」
レインは受け取ると、そのメッセージカードを開き、

『スイレン・フウマ様

突然のメッセージ失礼いたします。
本来直接お目にかかり、お礼を申し上げるべきところ、ご多忙であらせられると息子たちから聞き、メッセージを認めた所存です。
レイン・アシュレイおよびエリアス・グラスゴーを共にお救いくださったこと、心より感謝いたします。
レインからスイレン様はお酒を嗜まれるということで、アシュレイ家およびグラスゴー家が協力し合い作りあげたワインをお楽しみ戴けたら幸いです。
また、折りを見てお伺いいたしますので、それまで息子たちをよろしくお願いいたします。
              アシュレイ家、グラスゴー家一族より』

「と・・・・・・・・。って!!私の実家っ!?」
「兄様、落ち着いてください。あ、エリアス義兄様も!」
レインは狼狽えているし、エリアスはゴツンとテーブルに頭をぶつけて動かなくなった。
「あ、うん、ご両親によく言っといてくれ。感謝は有り難く受け入れると」
「「はい・・・・・・」」


「うわっ!美味しい!料理によく合う、このシャンパン!!」
「本当だな!これらを取り寄せようか、スイ」
「おう!貯蔵しておこう!地下のワインセラーでいいのかな?」
「こちらのワインも素晴らしい!アルバート、俺が両方取り寄せるわ。俺の家の領地のだし。その代わり、これらに合うグラスをあのハウス全員分用意できるか?」
「もちろんだ!領地の良いガラス製品の自慢ができる機会だ!」
「おお、超楽しみ!!じゃ、料理は俺に任せとけ!」
と、盛り上がっているのは、俺たち団長だけで、殿下もアシュレイ兄弟も酒に呑まれ、グッタリとしている。
料理もまだ途中なのに!
「ジオルド、ジルフォード。疲れから酔いが早いんだろう?休んできたら?」
「ああ、そうさせてもらう・・・・・・。スイは楽しんでて」
「くれぐれも羽目を外さない程度にな」
「はいはい」
俺は二人を見送る。アシュレイ兄弟はパートナーに腰を支えられながら部屋に連れて行かれていた。



「でさ、俺これ食べたら、街を見てくるわ。気になることあるんだよな」
外に視線を向ける。
「海か?」
「そう・・・何であんな巨大なタコが出来上がったのか。そして海の生物に『瘴気』が集まる原因とは何か考えてさ」
「では、俺たちも行くわ。人数がいた方がいいだろう」
「ああ、助かる。でも、まじで、美味いわ、このシャンパン!殿下もレインたちも酒に弱くて気の毒だな」
「「・・・・・・いや、我々が異常なのだと思う」」
「?????」
机に転がる瓶はたかだか12本だぞ?
「そうか??」
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