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第二章

1.タコ

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「「お前たち、新婚旅行に行ってこい!」」



第三騎士団の執務室に集まっていた6人。
このフィルハート国の第三・第四王子殿下ジオルドとジルフォード、第三騎士団団長アルバート・シュタイン、その副官レイフォード・アシュレイ、第四騎士団団長の俺、スイレン・フウマとその副官レイン・アシュレイ、そして、第二騎士団団長エリアス・グラスゴーが優雅にお茶を飲みながら休憩していると、突如、第一・第二王子殿下のオーガストとキュアリスが乱入してきて、いきなり上記の発言をして、俺たちの優雅な時間を破壊してくれたのだった。
それにもはや「命令」だった。
異議を唱えることも敵わず、俺たちはこの発言からたった2日後、兄殿下たちが『一度視察に行かないといけない』と言っていたという港町『ホルシオ』に旅たった。
旅立つ前にオーガスト殿下からの餞別の言葉が、
『現在ホルシオでは巨大な生物が邪魔をして漁ができないという書状が届いたから、旅行がてら退治してきて?』
と・・・・・・・・・。
要は手っ取り早い、対処だったのだろう。
『「ただで」とはもちろん言わないよ?ホルシオで最高級ホテルのスイートを予約してあるからね、一週間!退治が終わったらじっくりゆっくりまったり楽しんでおいでよ』
と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ま、言葉に含みは多分にあるが、最高級ホテル。これには感謝だが、殿下たちの顔には「これで一つの仕事が片付いた」というありありと判る安堵の表情が綺麗な顔を完全に台無しにしていた。
それに気付いた王妃サーシャ様は、扇でペシリと二人の頭を叩いたのだった。




「で、聞いてないんだけど、俺?」
「私もだ」
「俺もだよ・・・・・・・」
俺たちは現在ホルシオの漁港に来ている。
漁が出来ないため、嘗ては活気があった港も今では閑散として、とてもとても寂しい!
「美味い魚が食えないなんて、俺聞いてないんだけど?」
「「「「「「そっちかよっ!!!」」」」」」
「ん???」
別に変なこと言ってないだろう、俺?
それにしても息ピッタリすぎないか?
「とりあえず、兄上がおっしゃっていた巨大な生物を探さないか?」
「「「「「「っ!!!!????」」」」」」
「ん?」
ジオルドが海に背を向けて、俺たちに提案していると、ギョロリと大きな目玉が海面に浮かんで、そして、

ザッパーーーーーーーーンッッッ!!!!!

大きな音と波から現われた、巨大なタコ!!!
さすがにこれはないわ~と、俺たちは呆然とソレを見る。
でも、復活は早かった。
特に攻め側の男共がだ。
「「触手」」
「うねうね」
「ぬるぬる」
そして、お互いのパートナーを見る。
アシュレイ兄弟は呆れて、パートナーに蹴りや腹パンを食らわせていた。
俺はそもそも無視。
だって、
「おい、レイン、これ持ってろ」
マントを取って、レインに投げ渡すと、俺はタコに向かって飛び上がり、
「たこ焼き、タコ天、タコ飯!万歳!!!」
「「「「「「っ!それを食べる気なのかーーーーーーーーっ!!!!!!」」」」」」
呆れられた言葉など聞こえない。
うん、全く聞こえない。
今の俺は、
「カルパッチョも食べたいんだーーーーーーーー!!!」
「「「「「「っ!!!食い気が凄すぎるっ!!!!!!」」」」」」
左手に炎を纏い、そして、

「灰燼となせっ!!」

その炎をタコの頭に叩き込むと、「グォォォッ!」と苦しみ悶え、墨を撒き散らす。
その墨は当然埠頭に呆然と立っている殿下たちに降り注ぐ。
炎に焼かれるタコは海に潜ってしまい、火を消そうと躍起になっている。
が、この炎は簡単に消されるような柔な炎ではない。
浄化作用がある炎なのだ。
『浄霊清流』は対象に被害を与えないが、この技は相手を燃やすのだ。つまり、浄化しつつ殺すことを念頭においた技だ。
この技には利点があって副作用がないのだ。
今回のこのタコは何が理由で巨大化したのかわからないが、『瘴気』に充てられていたのは一目瞭然だったため、この技を使用した。
タコは段々と勢いが弱くなり、そして、分裂して、小さなタコたちが海を漂い始めた。
纏っていた『瘴気』が晴れ、分裂したことにより、炎が跡形もなく消え去った。
そこには巨大なタコの姿は最早ない。
これにて
「一件落着!!」
なのはいいのだが、俺はもちろん・・・・・・

ドボンッ!

と海に墜落した。
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