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第一章
51.もう一つの問題
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そして、もう一つの問題対象を忘れてはいけない。
処刑の次の日には、宮殿でもう一つ罪が暴かれた。
「オークレイ罪人、貴様は何の瑕疵もない子供や動物の命を奪った罪、どう申し開きする?」
「っ!そんなこと、私はっ!」
「『していない』とは言わせん!貴様の力の片鱗が現場に残されており、また、貴様の毛髪も見つかっている!」
オークレイの姿は、俺の団長試験の時に立ち向かってきた生気溢れる男とはほど遠く、今は見る影もないくらいに窶れている。
ただ、痩せて窪んだ眼光は爛々と輝き、復讐に燃えているように捉えられる。ま、そうなんだろうが。
誰に対してって、『俺』にだけどな。
「貴様の腕に現われた爛れた証は、現第四騎士団副団長レイン・アシュレイに刻まれた刻印と酷似している。アシュレイ副団長からその刻印が消えた途端、貴様にその文様が現われたのはどうしてだ?」
「っ!!!そ、そんなんことっ!!!そこの男が何かしたに決まっている!」
と、両手を拘束されているがため、顎で俺を指し示す。
「ならば、エリアス・グラスゴー前へっ!」
「はっ!!」
「なっ!?」
呼ばれた彼は、俺の後ろから現われて、オークレイの横で最上の敬礼を取る。
オークレイはエリアスの存在に気付いていなかったのだろう。かなりの動揺ぶりだ。
「スイレン団長、この者の『呪い』を解けるな?」
「はっ!」
エリアスの腕を取り、
呪解返呪
「ぐぁぁぁぁっぁっ!!」
「おごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁがっあああああっ!」
エリアスの苦痛の叫びが聞こえないほどに、オークレイの上げる悲鳴が会場を振るわせる。
「はっはっ」と荒い息をつくエリアスに対し、オークレイはその場にのたうち回り、腕を頻りに床に押しつける。
刻印がまだ刻まれていなかった逆の腕はグツグツと煮えるように滾り、印を刻んでいく。
この光景を見ても、誰も彼を助けようとはしない。
「オークレイ、これでお前がこの二人から力を奪ったことが証明された。スイレン団長が『お前に』何かをした?と思うだろうが、そもそも彼にはそれを行う『理由』が全くない。また、アシュレイ副団長は、貴様の腕に刻印が成されて以降力を取り戻したのだ。グラスゴー、其方ももう力を使えるはずだ。見せてみよ」
「はい・・・・・・」
エリアスの言葉には疑りの感情が入っていた。だが、
「えっ!あ、力がっ!」
そう、普通に本来のエリアスの力『炎』が手から出せているのだ。
「発言をお許しください、陛下」
「許す」
俺はエリアスに近寄り、
「貴方はバーミリアで『火』の精霊たちに護られていたから精神が保っていられた。だが、その精霊たちは無事ではない。だけど、貴方を加護する精霊は強い子たちだ。『闇』に飲まれながらも貴方を護っていた。つまり、貴方は『闇』の力も使えるようになっている。呼びかけてください、精霊たちに」
「っ!!!君は一体・・・・・・・あ、何かが俺の身体の中に入って・・・・・」
「うん・・・・・・・もう貴方は大丈夫・・・・・・陛下、私からグラスゴー殿にお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「スイレンの頼みだ。わしが拒否するわけがあるまい。許す!」
「有り難き幸せ。ではっ!エリアス・グラスゴー!本日付けで貴殿を第二騎士団団長へ復帰させる!レイン・アシュレイ副団長、貴殿が第二に戻りたいならば手配をする。ま、ヴォルフ副団長には申し訳ないが、第四の副団長に就いて貰うが」
「いえ、その必要はございません、スイレン団長。私はスイレン団長に救われました。そして、貴方を尊敬し、絶対に裏切ることは致しません!何卒、貴方のお側で仕えさせてください」
「スイレン団長、貴殿の力添え本当に感謝する!私たちは別の団であろうが、構わない。私たちの心が離れないのならば」
「・・・・・・・ん、では、ヴォルフ・ミルバートン副団長、第四への異動はなしだ。くれぐれもエリアス団長を頼んだぞ?」
「え、あ、はっ!つか、俺、副団長にもなっていない時期からグラスゴー団長に仕えていたんですけど・・・」
「・・・・・・・よしっ!というこで、オークレイ、貴様の処刑の日取りを決めようか?」
「ひっ!!」
痛みに悶絶しながらも、俺たちの会話に耳を傾けていたのには賞賛に値する。が、貴様はそれだけの罪を犯したのだ。
「本日、午後、広場にて処刑を行う!準備せよ!」
そうして、その日の午後、俺の手にした刃により、処刑が執行されたのだった。
その時に俺が『第四騎士団団長スイレン・フウマ』と紹介をされ、国民に畏怖を与えたのは別の話だ。
処刑の次の日には、宮殿でもう一つ罪が暴かれた。
「オークレイ罪人、貴様は何の瑕疵もない子供や動物の命を奪った罪、どう申し開きする?」
「っ!そんなこと、私はっ!」
「『していない』とは言わせん!貴様の力の片鱗が現場に残されており、また、貴様の毛髪も見つかっている!」
オークレイの姿は、俺の団長試験の時に立ち向かってきた生気溢れる男とはほど遠く、今は見る影もないくらいに窶れている。
ただ、痩せて窪んだ眼光は爛々と輝き、復讐に燃えているように捉えられる。ま、そうなんだろうが。
誰に対してって、『俺』にだけどな。
「貴様の腕に現われた爛れた証は、現第四騎士団副団長レイン・アシュレイに刻まれた刻印と酷似している。アシュレイ副団長からその刻印が消えた途端、貴様にその文様が現われたのはどうしてだ?」
「っ!!!そ、そんなんことっ!!!そこの男が何かしたに決まっている!」
と、両手を拘束されているがため、顎で俺を指し示す。
「ならば、エリアス・グラスゴー前へっ!」
「はっ!!」
「なっ!?」
呼ばれた彼は、俺の後ろから現われて、オークレイの横で最上の敬礼を取る。
オークレイはエリアスの存在に気付いていなかったのだろう。かなりの動揺ぶりだ。
「スイレン団長、この者の『呪い』を解けるな?」
「はっ!」
エリアスの腕を取り、
呪解返呪
「ぐぁぁぁぁっぁっ!!」
「おごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁがっあああああっ!」
エリアスの苦痛の叫びが聞こえないほどに、オークレイの上げる悲鳴が会場を振るわせる。
「はっはっ」と荒い息をつくエリアスに対し、オークレイはその場にのたうち回り、腕を頻りに床に押しつける。
刻印がまだ刻まれていなかった逆の腕はグツグツと煮えるように滾り、印を刻んでいく。
この光景を見ても、誰も彼を助けようとはしない。
「オークレイ、これでお前がこの二人から力を奪ったことが証明された。スイレン団長が『お前に』何かをした?と思うだろうが、そもそも彼にはそれを行う『理由』が全くない。また、アシュレイ副団長は、貴様の腕に刻印が成されて以降力を取り戻したのだ。グラスゴー、其方ももう力を使えるはずだ。見せてみよ」
「はい・・・・・・」
エリアスの言葉には疑りの感情が入っていた。だが、
「えっ!あ、力がっ!」
そう、普通に本来のエリアスの力『炎』が手から出せているのだ。
「発言をお許しください、陛下」
「許す」
俺はエリアスに近寄り、
「貴方はバーミリアで『火』の精霊たちに護られていたから精神が保っていられた。だが、その精霊たちは無事ではない。だけど、貴方を加護する精霊は強い子たちだ。『闇』に飲まれながらも貴方を護っていた。つまり、貴方は『闇』の力も使えるようになっている。呼びかけてください、精霊たちに」
「っ!!!君は一体・・・・・・・あ、何かが俺の身体の中に入って・・・・・」
「うん・・・・・・・もう貴方は大丈夫・・・・・・陛下、私からグラスゴー殿にお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「スイレンの頼みだ。わしが拒否するわけがあるまい。許す!」
「有り難き幸せ。ではっ!エリアス・グラスゴー!本日付けで貴殿を第二騎士団団長へ復帰させる!レイン・アシュレイ副団長、貴殿が第二に戻りたいならば手配をする。ま、ヴォルフ副団長には申し訳ないが、第四の副団長に就いて貰うが」
「いえ、その必要はございません、スイレン団長。私はスイレン団長に救われました。そして、貴方を尊敬し、絶対に裏切ることは致しません!何卒、貴方のお側で仕えさせてください」
「スイレン団長、貴殿の力添え本当に感謝する!私たちは別の団であろうが、構わない。私たちの心が離れないのならば」
「・・・・・・・ん、では、ヴォルフ・ミルバートン副団長、第四への異動はなしだ。くれぐれもエリアス団長を頼んだぞ?」
「え、あ、はっ!つか、俺、副団長にもなっていない時期からグラスゴー団長に仕えていたんですけど・・・」
「・・・・・・・よしっ!というこで、オークレイ、貴様の処刑の日取りを決めようか?」
「ひっ!!」
痛みに悶絶しながらも、俺たちの会話に耳を傾けていたのには賞賛に値する。が、貴様はそれだけの罪を犯したのだ。
「本日、午後、広場にて処刑を行う!準備せよ!」
そうして、その日の午後、俺の手にした刃により、処刑が執行されたのだった。
その時に俺が『第四騎士団団長スイレン・フウマ』と紹介をされ、国民に畏怖を与えたのは別の話だ。
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