52 / 227
第一章
51.もう一つの問題
しおりを挟む
そして、もう一つの問題対象を忘れてはいけない。
処刑の次の日には、宮殿でもう一つ罪が暴かれた。
「オークレイ罪人、貴様は何の瑕疵もない子供や動物の命を奪った罪、どう申し開きする?」
「っ!そんなこと、私はっ!」
「『していない』とは言わせん!貴様の力の片鱗が現場に残されており、また、貴様の毛髪も見つかっている!」
オークレイの姿は、俺の団長試験の時に立ち向かってきた生気溢れる男とはほど遠く、今は見る影もないくらいに窶れている。
ただ、痩せて窪んだ眼光は爛々と輝き、復讐に燃えているように捉えられる。ま、そうなんだろうが。
誰に対してって、『俺』にだけどな。
「貴様の腕に現われた爛れた証は、現第四騎士団副団長レイン・アシュレイに刻まれた刻印と酷似している。アシュレイ副団長からその刻印が消えた途端、貴様にその文様が現われたのはどうしてだ?」
「っ!!!そ、そんなんことっ!!!そこの男が何かしたに決まっている!」
と、両手を拘束されているがため、顎で俺を指し示す。
「ならば、エリアス・グラスゴー前へっ!」
「はっ!!」
「なっ!?」
呼ばれた彼は、俺の後ろから現われて、オークレイの横で最上の敬礼を取る。
オークレイはエリアスの存在に気付いていなかったのだろう。かなりの動揺ぶりだ。
「スイレン団長、この者の『呪い』を解けるな?」
「はっ!」
エリアスの腕を取り、
呪解返呪
「ぐぁぁぁぁっぁっ!!」
「おごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁがっあああああっ!」
エリアスの苦痛の叫びが聞こえないほどに、オークレイの上げる悲鳴が会場を振るわせる。
「はっはっ」と荒い息をつくエリアスに対し、オークレイはその場にのたうち回り、腕を頻りに床に押しつける。
刻印がまだ刻まれていなかった逆の腕はグツグツと煮えるように滾り、印を刻んでいく。
この光景を見ても、誰も彼を助けようとはしない。
「オークレイ、これでお前がこの二人から力を奪ったことが証明された。スイレン団長が『お前に』何かをした?と思うだろうが、そもそも彼にはそれを行う『理由』が全くない。また、アシュレイ副団長は、貴様の腕に刻印が成されて以降力を取り戻したのだ。グラスゴー、其方ももう力を使えるはずだ。見せてみよ」
「はい・・・・・・」
エリアスの言葉には疑りの感情が入っていた。だが、
「えっ!あ、力がっ!」
そう、普通に本来のエリアスの力『炎』が手から出せているのだ。
「発言をお許しください、陛下」
「許す」
俺はエリアスに近寄り、
「貴方はバーミリアで『火』の精霊たちに護られていたから精神が保っていられた。だが、その精霊たちは無事ではない。だけど、貴方を加護する精霊は強い子たちだ。『闇』に飲まれながらも貴方を護っていた。つまり、貴方は『闇』の力も使えるようになっている。呼びかけてください、精霊たちに」
「っ!!!君は一体・・・・・・・あ、何かが俺の身体の中に入って・・・・・」
「うん・・・・・・・もう貴方は大丈夫・・・・・・陛下、私からグラスゴー殿にお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「スイレンの頼みだ。わしが拒否するわけがあるまい。許す!」
「有り難き幸せ。ではっ!エリアス・グラスゴー!本日付けで貴殿を第二騎士団団長へ復帰させる!レイン・アシュレイ副団長、貴殿が第二に戻りたいならば手配をする。ま、ヴォルフ副団長には申し訳ないが、第四の副団長に就いて貰うが」
「いえ、その必要はございません、スイレン団長。私はスイレン団長に救われました。そして、貴方を尊敬し、絶対に裏切ることは致しません!何卒、貴方のお側で仕えさせてください」
「スイレン団長、貴殿の力添え本当に感謝する!私たちは別の団であろうが、構わない。私たちの心が離れないのならば」
「・・・・・・・ん、では、ヴォルフ・ミルバートン副団長、第四への異動はなしだ。くれぐれもエリアス団長を頼んだぞ?」
「え、あ、はっ!つか、俺、副団長にもなっていない時期からグラスゴー団長に仕えていたんですけど・・・」
「・・・・・・・よしっ!というこで、オークレイ、貴様の処刑の日取りを決めようか?」
「ひっ!!」
痛みに悶絶しながらも、俺たちの会話に耳を傾けていたのには賞賛に値する。が、貴様はそれだけの罪を犯したのだ。
「本日、午後、広場にて処刑を行う!準備せよ!」
そうして、その日の午後、俺の手にした刃により、処刑が執行されたのだった。
その時に俺が『第四騎士団団長スイレン・フウマ』と紹介をされ、国民に畏怖を与えたのは別の話だ。
処刑の次の日には、宮殿でもう一つ罪が暴かれた。
「オークレイ罪人、貴様は何の瑕疵もない子供や動物の命を奪った罪、どう申し開きする?」
「っ!そんなこと、私はっ!」
「『していない』とは言わせん!貴様の力の片鱗が現場に残されており、また、貴様の毛髪も見つかっている!」
オークレイの姿は、俺の団長試験の時に立ち向かってきた生気溢れる男とはほど遠く、今は見る影もないくらいに窶れている。
ただ、痩せて窪んだ眼光は爛々と輝き、復讐に燃えているように捉えられる。ま、そうなんだろうが。
誰に対してって、『俺』にだけどな。
「貴様の腕に現われた爛れた証は、現第四騎士団副団長レイン・アシュレイに刻まれた刻印と酷似している。アシュレイ副団長からその刻印が消えた途端、貴様にその文様が現われたのはどうしてだ?」
「っ!!!そ、そんなんことっ!!!そこの男が何かしたに決まっている!」
と、両手を拘束されているがため、顎で俺を指し示す。
「ならば、エリアス・グラスゴー前へっ!」
「はっ!!」
「なっ!?」
呼ばれた彼は、俺の後ろから現われて、オークレイの横で最上の敬礼を取る。
オークレイはエリアスの存在に気付いていなかったのだろう。かなりの動揺ぶりだ。
「スイレン団長、この者の『呪い』を解けるな?」
「はっ!」
エリアスの腕を取り、
呪解返呪
「ぐぁぁぁぁっぁっ!!」
「おごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁがっあああああっ!」
エリアスの苦痛の叫びが聞こえないほどに、オークレイの上げる悲鳴が会場を振るわせる。
「はっはっ」と荒い息をつくエリアスに対し、オークレイはその場にのたうち回り、腕を頻りに床に押しつける。
刻印がまだ刻まれていなかった逆の腕はグツグツと煮えるように滾り、印を刻んでいく。
この光景を見ても、誰も彼を助けようとはしない。
「オークレイ、これでお前がこの二人から力を奪ったことが証明された。スイレン団長が『お前に』何かをした?と思うだろうが、そもそも彼にはそれを行う『理由』が全くない。また、アシュレイ副団長は、貴様の腕に刻印が成されて以降力を取り戻したのだ。グラスゴー、其方ももう力を使えるはずだ。見せてみよ」
「はい・・・・・・」
エリアスの言葉には疑りの感情が入っていた。だが、
「えっ!あ、力がっ!」
そう、普通に本来のエリアスの力『炎』が手から出せているのだ。
「発言をお許しください、陛下」
「許す」
俺はエリアスに近寄り、
「貴方はバーミリアで『火』の精霊たちに護られていたから精神が保っていられた。だが、その精霊たちは無事ではない。だけど、貴方を加護する精霊は強い子たちだ。『闇』に飲まれながらも貴方を護っていた。つまり、貴方は『闇』の力も使えるようになっている。呼びかけてください、精霊たちに」
「っ!!!君は一体・・・・・・・あ、何かが俺の身体の中に入って・・・・・」
「うん・・・・・・・もう貴方は大丈夫・・・・・・陛下、私からグラスゴー殿にお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「スイレンの頼みだ。わしが拒否するわけがあるまい。許す!」
「有り難き幸せ。ではっ!エリアス・グラスゴー!本日付けで貴殿を第二騎士団団長へ復帰させる!レイン・アシュレイ副団長、貴殿が第二に戻りたいならば手配をする。ま、ヴォルフ副団長には申し訳ないが、第四の副団長に就いて貰うが」
「いえ、その必要はございません、スイレン団長。私はスイレン団長に救われました。そして、貴方を尊敬し、絶対に裏切ることは致しません!何卒、貴方のお側で仕えさせてください」
「スイレン団長、貴殿の力添え本当に感謝する!私たちは別の団であろうが、構わない。私たちの心が離れないのならば」
「・・・・・・・ん、では、ヴォルフ・ミルバートン副団長、第四への異動はなしだ。くれぐれもエリアス団長を頼んだぞ?」
「え、あ、はっ!つか、俺、副団長にもなっていない時期からグラスゴー団長に仕えていたんですけど・・・」
「・・・・・・・よしっ!というこで、オークレイ、貴様の処刑の日取りを決めようか?」
「ひっ!!」
痛みに悶絶しながらも、俺たちの会話に耳を傾けていたのには賞賛に値する。が、貴様はそれだけの罪を犯したのだ。
「本日、午後、広場にて処刑を行う!準備せよ!」
そうして、その日の午後、俺の手にした刃により、処刑が執行されたのだった。
その時に俺が『第四騎士団団長スイレン・フウマ』と紹介をされ、国民に畏怖を与えたのは別の話だ。
12
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる