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第一章

42.ミイラと長い一日

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残すは城だけとなり、城外で保護されていた人物たちから俺が『瘴気』を祓う。何故か、スラムより『濃い』かったのだ。あと少し遅ければ、発狂し、死んでいたと思われる。
俺はギリギリのラインでこの世界に召喚されたのだな。
そして、ジオルドとレイフォードに『癒し』を施して貰い、食べられそうな物を少量ずつ与えた。
俺は気づいた。『瘴気』がどこから産まれたか。どうして『瘴気』になったのかっ!
今、俺たちが施しをしているのは捕らわれていた者たちだ。その者たちへの理不尽な扱いが『呪い』となり『瘴気』まで達したのだ。それを集約し、『精霊の住まう森』に流したっ!
その方法を知っている『何か』がここにはいたということだ。

「俺に喧嘩を売ってきたということは、覚悟できているんだろうな~?」

「スイ?」
俺はジルフォードが声をかけてくれたのも気付かず、その者の気配が感じる所まで、怒りのままに走った。


辿り着いた先には、生きた目当ての人物は見当たらず、干からびたミイラが祀られていた。
過去には花や食べ物、酒などのお供えもあったのだろう。
それが今では廃れ、朽ち果てる寸前だ。
しかし、それが何か俺には判る!
「おい、テメーこっちの世界でも好き勝手してんじゃねーよっ!風磨 黒蓮!俺がこっちに来たから、テメーには消えてもらう!お前が俺の『親父』だと思うと反吐が出る!!」
『国』に蔓延る『邪』の基(もと)ことミイラを朱雀の炎で消し去る。そこに一切の善なる想いはなかった。
「はっ!「神に愛されなかった者」が俺に勝てるとでも?お前は間違った。実の息子を妾や義弟と協力し俺を嵌めたこと、恨んでねーわけねーだろう?」
まさか、数年ほど前から生死不明だった『親父』がこの世界でミイラとなって祀られていたとは、思いもよらなかった。



もう一度城に戻ると、ジルフォード殿下が瘴気を祓い、ジオルド殿下が清浄をしている最中だった。
ただ、規模は全体的には及んでいないので、俺はまだ祓われていない箇所を綺麗にしていく。
全てが完了すると、『呪い』も含めた人的被害を及ぼすモノは消え去って、清々しい空気が城を満たしている。
保護された人々は地下の暗く、ジメジメとしたとても衛生的とは言えない箇所になんと1年ほど監禁されていたそうだ。
それもこれもあの『馬鹿親父』のせいらしい。
詳しい話は後ほど落ち着いてから聞くとして、保護された中にはやはり第二王子と王妃様が大変草臥れたお姿で、それでも凜とされていて、とても、お労しい。
「とりあえず、全ての浄化は終わったから俺と殿下たちは一旦、保護された人々をフィルハートに送り届け、罪人を牢にぶち込んでくるわ。あと、マジ、休ませて。もうそろそろヤバそうなんだよ」
下腹部が熱さを増してきており、あと数分で狂い始めることが予想される。
「ああ、わかった。こちらはスイたちが戻ってくるまで、民と協力してまだ見つけられていないご遺体の回収や復興の手伝いなどを進めておく」
「助かる、アル。レイ、お前の水は癒されるから少量でいい、スラムの人たちに飲ませてやってくれ」
「わかりました、スイ団長。こちらのことはお任せください。お疲れでしょうからごゆっくり・・・・・できはしないでしょうが、発散してきてください」
「ぐっ!!言うようになったな、レイも。やっぱりレインと兄弟だわ」
「ふふふ、それはお褒めの言葉ですよ」
「あ、そう。じゃ、また明日来るわ」



たった一日で人々を苦しめていた『瘴気』を祓い、王族を退け、バーミリアはフィルハートの傘下に下ったのだ。
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