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第一章
39.神格化
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「凄いですね、スイ団長。もう『瘴気』を払ってしまった」
「ああ、我々もグズグズしてはいられないのだが、これではな・・・・・・・」
城下に住まう民が、属国になることに異を唱え、混乱しているのだ。
『瘴気』よりそれを優先させる浅はかな考えは、我が国には必要ないのかもしれない。
キツい言い方かもしれないが。
だが、スイが『結界』らしき物を張った瞬間を見ていた民も当然いる。
一様に口をポカーンと開けて固まった。そして、すぐに『瘴気』が払われると、安堵と困惑の表情が代わる代わる現われ、そして、行き着く先には自分たちが行ったスイに対する暴言と行動だ。
後悔しても既に遅い。
ならば、これからどう行動するかを考えて欲しい。
私は固まっていた民の言葉を辛うじて聞き取れた。
「あいつ、無能じゃなくて、神だったのか・・・なんということを」
「ああ、私たちはあのお方に大変失礼なことを。助けてなんて烏滸がましくて、言えない」
「綺麗・・・・・・『瘴気』がない空ってこんなに綺麗だったかな?スイ様、どうか私たちに謝罪の機会をお与えください」
自分たちの行いを恥じ、スイを敬い、謝罪の機会を設けて欲しいと訴える民を放置するのは王族としてはしてはならないことだが、こればかりはどうしようもない。
スイがこちらに戻ってこなければ。
でも、その光景を見ておらず、我々に苦情ばかりを言っている民は『瘴気』があの位置だけ晴れたことに気づいていない。なんと愚かなことなのだろう。
私はこの得体のしれない民をどうしたらよいのか、本当に困る。
「ジオルド、ここを放置して俺たちは城に戻らないか?そっちの浄化作業を先にした方がよくないか?」
「ジルが言いたいことはわかるけど、スイがどう行動するか全く判らないから、動けないんだよね」
「スイめ。格好良すぎるのはよいのだが、後のことも考えて行動してくれ」
「全くだ」
私とジルの意見が一致した。
お互いに大きな溜息を一つ。
と、その瞬間、
「お前たち、スラム街の瘴気を晴らしてくれたのがあのお方なんだぞ!」
「いい加減、態度を改めて、あの方に謝罪なりなんなりしなければならないのがわからないのか!」
あの瞬間を見ていた民たちが、未だ文句を言う民たちに立ち向かう。それで自分の愚かさに漸く気付いたのだ。
愕然と立ちすくみ、そして、ガクガクと膝を鳴らし立っていられなくなる者、泣きわめいている者、泡を吹いて倒れている者、様々な愕然の仕方が見れるこの場はなんとも愚かしい。
「このバーミリアに『神』が御降臨されておられたのか」
「私たちはなんと不敬なことを・・・・・」
「ああ、神様っ!」
あの愚かな態度から一変。
スイはもはや「神」として崇められ始めた。
何とも勝手なものだと、冷めた目で見る。
私たちのスイは「神」でも「女神」でも「聖女」でもない。
ただの、心優しい「最強の騎士」なだけなのだ。
「ああ、我々もグズグズしてはいられないのだが、これではな・・・・・・・」
城下に住まう民が、属国になることに異を唱え、混乱しているのだ。
『瘴気』よりそれを優先させる浅はかな考えは、我が国には必要ないのかもしれない。
キツい言い方かもしれないが。
だが、スイが『結界』らしき物を張った瞬間を見ていた民も当然いる。
一様に口をポカーンと開けて固まった。そして、すぐに『瘴気』が払われると、安堵と困惑の表情が代わる代わる現われ、そして、行き着く先には自分たちが行ったスイに対する暴言と行動だ。
後悔しても既に遅い。
ならば、これからどう行動するかを考えて欲しい。
私は固まっていた民の言葉を辛うじて聞き取れた。
「あいつ、無能じゃなくて、神だったのか・・・なんということを」
「ああ、私たちはあのお方に大変失礼なことを。助けてなんて烏滸がましくて、言えない」
「綺麗・・・・・・『瘴気』がない空ってこんなに綺麗だったかな?スイ様、どうか私たちに謝罪の機会をお与えください」
自分たちの行いを恥じ、スイを敬い、謝罪の機会を設けて欲しいと訴える民を放置するのは王族としてはしてはならないことだが、こればかりはどうしようもない。
スイがこちらに戻ってこなければ。
でも、その光景を見ておらず、我々に苦情ばかりを言っている民は『瘴気』があの位置だけ晴れたことに気づいていない。なんと愚かなことなのだろう。
私はこの得体のしれない民をどうしたらよいのか、本当に困る。
「ジオルド、ここを放置して俺たちは城に戻らないか?そっちの浄化作業を先にした方がよくないか?」
「ジルが言いたいことはわかるけど、スイがどう行動するか全く判らないから、動けないんだよね」
「スイめ。格好良すぎるのはよいのだが、後のことも考えて行動してくれ」
「全くだ」
私とジルの意見が一致した。
お互いに大きな溜息を一つ。
と、その瞬間、
「お前たち、スラム街の瘴気を晴らしてくれたのがあのお方なんだぞ!」
「いい加減、態度を改めて、あの方に謝罪なりなんなりしなければならないのがわからないのか!」
あの瞬間を見ていた民たちが、未だ文句を言う民たちに立ち向かう。それで自分の愚かさに漸く気付いたのだ。
愕然と立ちすくみ、そして、ガクガクと膝を鳴らし立っていられなくなる者、泣きわめいている者、泡を吹いて倒れている者、様々な愕然の仕方が見れるこの場はなんとも愚かしい。
「このバーミリアに『神』が御降臨されておられたのか」
「私たちはなんと不敬なことを・・・・・」
「ああ、神様っ!」
あの愚かな態度から一変。
スイはもはや「神」として崇められ始めた。
何とも勝手なものだと、冷めた目で見る。
私たちのスイは「神」でも「女神」でも「聖女」でもない。
ただの、心優しい「最強の騎士」なだけなのだ。
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