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第一章
38.スラム
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「ここは・・・・・・・・」
「騎士様、こっち!!」
兄弟が俺の手を引いて、案内をする。
道は瓦礫やゴミが散乱し、そして、子供が見て良い光景ではない多くの『腐乱死体』があちこちに存在している。
「君たち、ここは・・・・・・・」
「スラムだよっ!僕たちはこの国に捨てられたゴミなんだ」
「っ!!!!」
子供が自分たちを『ゴミ』だと言う。そんなことあって言い訳がない。
「こんな国、クソ食らえだ」
俺はとことんこの国を滅ぼしてやろうと決心した。
行く道中で息が辛うじてある者には軽くだが『治癒』を施していく。俺がこれから使用する術を考えると、体力的に『軽い治癒』でないと瘴気を払えないのだ。それくらいこのスラムは死んでいる。
軽い『治癒』でも、レインたちが到着すれば、治癒師が引き継いでくれるだろうし、腹が減っているだけの者もいるから、食べるだけで回復する者もいるだろう。
正直泣きたい、こんな光景を子供が平気で見ている事に。
慈善を続けていると、子供たちにせっつかれるので、仕方なしに子供が誘導する家、否、荒(あば)ら家(や)に入ると異臭と屍臭が充満している。
しかし、小さな呼吸音が辛うじて聞こえる。この屍臭は『死に神の鎌に捕まってしまった』ためだろう。そこから逃げ出させれば助け出せる。
「ご両親の様な方はこのスラムには多いのかい?」
「うん・・・・・・ほとんどだよ・・・・・友達の父ちゃん死んじゃった・・・ひぅ・・・」
「ああ、泣かないで!君たちのご両親はまだ間に合うから!」
「うぅ・・・・・兄ちゃんっ!うわぁぁぁっん」
俺に縋り付いてくる二人の小さな身体をギュッと抱きしめて、俺は決める。
「俺はここを少し離れるよ。空を見ておいて。俺がすることを目に焼き付けて。その光景を二度と見ない世界を望んで」
「「・・・??うん」」
俺は、外に出て、
「朱雀っ!力を貸してくれ!!!」
『何だ、スイ?我に用か?』
「ああ、悪いけど、俺を連れて飛んでくれないか?空から結界を四方に張る」
『ああ、わかった。この汚れた場所を囲うのか?』
「そうだ。あっちで俺を馬鹿にした奴らは今は助けない。自らの愚かな思考を変えない限り」
『了解した』
朱雀は、他の鳥たちと共に飛ぶために小さくしていた身体を俺を乗せるため巨大な姿へと変える。
子供たちから「格好いい!」と賞賛され、朱雀は満更でもないようで、羽でその兄弟の頭を優しく一撫でし、俺を背に乗せ飛び上がる。
『スイ、このくらいの高さからなら、結界張れるか?』
「ああ、大丈夫だ!」
懐から5本の苦無を取りだし、スラムの周りに投げて突き刺す。
五(ご)星(しょう)結界
苦無からバリバリという音と共に金の光、否、雷の様な光が線を成していく。全てを描き終わると、陰陽道で使用される五芒星が現われ、そして、苦無で示した空間を白の帳(とばり)が覆った。
これで、俺が認める者以外は中に入れないし、出ることもできない。
つまり邪魔が入らないということだ。
そして、もう一つこの技には利点がある。
清浄化するのだ、囲んだ中を。
この汚れたスラムを少しでも呼吸のしやすい場所に変えてやりたかったのだ。
「ありがとう朱雀。俺はこのまま飛び降りるから、後は遊んでていいよ」
『怪我はするなよ、我らが愛し子よ』
「平気だって!でも、ありがとうな」
朱雀の背から俺は身を投げ出した。
兄弟たちの前に着地すると、腰を抜かしてへたり込んでしまった。
「騎士様、け、けがは・・・・・」
「ないよ?俺は超強いからね。へっちゃらさ!さ、皆を助けるよ!!ちょっと離れててな」
俺は集中し、『瘴気』がどこまで広がっているか把握して、
浄霊清流
結界を張った場所から、一気に瘴気が綺麗になくなる。
子供たちは目を瞬かせ、呆然としているが、兄の方が「はっ!」と何かに気付いて、家に入っていく。
「父ちゃんっ!母ちゃんっ!!!」
そして、喜びの声が聞こえてきたから、彼らは大丈夫なのだろう。
そして、この結界がある限り、清浄が続けられる。
身体の中に溜まった悪の塊は、徐々になくなるだろう。
このスラムにいる人々からはだが。
漸く、俺に追いついたレインたちが結界の外に見えるので、彼らが結界内に入ることを許可する。
「団長っ!!勝手に行動しないでください!!」
「いや~~優秀な副官がいると楽だわ~~~」
「ス・イ・団・長!!!」
「あ、はい、ごめんなさい。説教は後で聞くから、治癒が使える者は民の具合を見てくれ!力仕事が得意な者は、瓦礫などを一箇所に集めてくれ!あと、炊き出しの準備をっ!腹一杯食わせてやってくれ!」
「「「はっ!!!」」」
とりあえず、スラムについての『瘴気』は一件落着だ。
あとは、城と城下町だな。
「騎士様、こっち!!」
兄弟が俺の手を引いて、案内をする。
道は瓦礫やゴミが散乱し、そして、子供が見て良い光景ではない多くの『腐乱死体』があちこちに存在している。
「君たち、ここは・・・・・・・」
「スラムだよっ!僕たちはこの国に捨てられたゴミなんだ」
「っ!!!!」
子供が自分たちを『ゴミ』だと言う。そんなことあって言い訳がない。
「こんな国、クソ食らえだ」
俺はとことんこの国を滅ぼしてやろうと決心した。
行く道中で息が辛うじてある者には軽くだが『治癒』を施していく。俺がこれから使用する術を考えると、体力的に『軽い治癒』でないと瘴気を払えないのだ。それくらいこのスラムは死んでいる。
軽い『治癒』でも、レインたちが到着すれば、治癒師が引き継いでくれるだろうし、腹が減っているだけの者もいるから、食べるだけで回復する者もいるだろう。
正直泣きたい、こんな光景を子供が平気で見ている事に。
慈善を続けていると、子供たちにせっつかれるので、仕方なしに子供が誘導する家、否、荒(あば)ら家(や)に入ると異臭と屍臭が充満している。
しかし、小さな呼吸音が辛うじて聞こえる。この屍臭は『死に神の鎌に捕まってしまった』ためだろう。そこから逃げ出させれば助け出せる。
「ご両親の様な方はこのスラムには多いのかい?」
「うん・・・・・・ほとんどだよ・・・・・友達の父ちゃん死んじゃった・・・ひぅ・・・」
「ああ、泣かないで!君たちのご両親はまだ間に合うから!」
「うぅ・・・・・兄ちゃんっ!うわぁぁぁっん」
俺に縋り付いてくる二人の小さな身体をギュッと抱きしめて、俺は決める。
「俺はここを少し離れるよ。空を見ておいて。俺がすることを目に焼き付けて。その光景を二度と見ない世界を望んで」
「「・・・??うん」」
俺は、外に出て、
「朱雀っ!力を貸してくれ!!!」
『何だ、スイ?我に用か?』
「ああ、悪いけど、俺を連れて飛んでくれないか?空から結界を四方に張る」
『ああ、わかった。この汚れた場所を囲うのか?』
「そうだ。あっちで俺を馬鹿にした奴らは今は助けない。自らの愚かな思考を変えない限り」
『了解した』
朱雀は、他の鳥たちと共に飛ぶために小さくしていた身体を俺を乗せるため巨大な姿へと変える。
子供たちから「格好いい!」と賞賛され、朱雀は満更でもないようで、羽でその兄弟の頭を優しく一撫でし、俺を背に乗せ飛び上がる。
『スイ、このくらいの高さからなら、結界張れるか?』
「ああ、大丈夫だ!」
懐から5本の苦無を取りだし、スラムの周りに投げて突き刺す。
五(ご)星(しょう)結界
苦無からバリバリという音と共に金の光、否、雷の様な光が線を成していく。全てを描き終わると、陰陽道で使用される五芒星が現われ、そして、苦無で示した空間を白の帳(とばり)が覆った。
これで、俺が認める者以外は中に入れないし、出ることもできない。
つまり邪魔が入らないということだ。
そして、もう一つこの技には利点がある。
清浄化するのだ、囲んだ中を。
この汚れたスラムを少しでも呼吸のしやすい場所に変えてやりたかったのだ。
「ありがとう朱雀。俺はこのまま飛び降りるから、後は遊んでていいよ」
『怪我はするなよ、我らが愛し子よ』
「平気だって!でも、ありがとうな」
朱雀の背から俺は身を投げ出した。
兄弟たちの前に着地すると、腰を抜かしてへたり込んでしまった。
「騎士様、け、けがは・・・・・」
「ないよ?俺は超強いからね。へっちゃらさ!さ、皆を助けるよ!!ちょっと離れててな」
俺は集中し、『瘴気』がどこまで広がっているか把握して、
浄霊清流
結界を張った場所から、一気に瘴気が綺麗になくなる。
子供たちは目を瞬かせ、呆然としているが、兄の方が「はっ!」と何かに気付いて、家に入っていく。
「父ちゃんっ!母ちゃんっ!!!」
そして、喜びの声が聞こえてきたから、彼らは大丈夫なのだろう。
そして、この結界がある限り、清浄が続けられる。
身体の中に溜まった悪の塊は、徐々になくなるだろう。
このスラムにいる人々からはだが。
漸く、俺に追いついたレインたちが結界の外に見えるので、彼らが結界内に入ることを許可する。
「団長っ!!勝手に行動しないでください!!」
「いや~~優秀な副官がいると楽だわ~~~」
「ス・イ・団・長!!!」
「あ、はい、ごめんなさい。説教は後で聞くから、治癒が使える者は民の具合を見てくれ!力仕事が得意な者は、瓦礫などを一箇所に集めてくれ!あと、炊き出しの準備をっ!腹一杯食わせてやってくれ!」
「「「はっ!!!」」」
とりあえず、スラムについての『瘴気』は一件落着だ。
あとは、城と城下町だな。
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