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第一章
37.汚れた子供
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殿下たちとレインを連れて市井に行くと、阿鼻叫喚な事態となっていた。
興奮する民衆、それを宥めようとする我が騎士団。
怒号が飛び交う中、一人の男が俺に気付いた。
「あああっ!テメーは異世界からきた無能じゃねーかっ!!」
その男の大声で、一気に俺に視線が集まる。
だが、一人の女が
「で、でもっ!団長を示すマントとエギュレットがあるわ!!」
「はぁっ!?フィルハートは狂ったのか!?」
ビキッ
「あんな優男っ!国を救えるわけないじゃないっ!!」
ビキキッ
「あんな男を団長にするなんてフィルハートもたいしたことねーな!」
ビキキキッ
ドッと笑いに包まれる市井。
俺は怒りを通り越して、顔から表情がなくなった。
それに気づいたレインが小さく「ひっ!」と漏らす。
「フィルハート騎士団、こいつらの面倒はどうでもいい。後回しだ。助ける必要もないくらいこの国の民は愚劣だったってことだ」
「す、スイ団長・・・・・・・・」
レインが俺を気遣おうとするも、俺の威圧に後ずさる。
それを片目で捕えると、片端に小さな2人の子供がこの非常識な輪から外れる位置に立っていた。
遠くだが目を凝らして見ると、衣服は汚れ、髪はザンバラで、身体は痩せこけているのがわかる。
俺はその子たちの目の前に一瞬で立って見せた。
「君たちはどうしてここにいるの?」
俺はなるべく怖がらせないように、優しい声で問うた。
兄弟なのだろうか、小さい子の方が大きい子の背中に隠れてしまった。
背中を使われてしまった男の子は、俺が怖いのだろうか、小刻みに震えている。
「大丈夫、大丈夫だよ。お兄ちゃんは何もしないから」
「・・・ほんと?」
「うん、嘘はつかないよ。あっ!たまには言っちゃうけどね」
「ぷっ!騎士様面白いね・・・・・あ、あのね、父ちゃんと母ちゃん、動かなくなっちゃった!助けてっ!皆死んじゃう!」
「・・・・・・・うん、そこまで案内してくれるかい?」
「助けてくれるの?」
「お兄ちゃんが出来る範囲ならね。ほら、お兄ちゃんに捕まって!」
俺は左右の腕にこの兄弟を抱き上げると、
「うわっ!すげーーーーっ!父ちゃんにもしてもらったことない!」
「兄ちゃんっ!高いよっ!」
抱き上げられたことが相当嬉しいようで、俺の首に腕を回してはしゃいでいる。
「このくらいなら俺だって出来るんだよ!さて、案内頼むよ!振り落とされないよう、俺のマントをしっかり握りしめてろよ」
「「うんっ!!」」
ただ、抱き上げた兄弟は見た目よりかなり軽く、痩せこけている。
もしかして、この子たちは・・・・・・・
「レイン!一個小隊と共に多くの物資を持って俺が行く方へ来い。物資の選定はお前に任せる!ただ食料を多めだ!殿下たちはこちらの対処を!シュタイン団長、殿下たちをお願いいたします」
「了解した!スイレン団長も気をつけてくれ!」
騎士団全体で俺に敬礼を贈る。その光景を見た兄弟たちは、俺の代わりに敬礼を返してくれた。
殿下たちの表情は見えなくとも、優しく笑ったのが気配でわかる。
そして、鈍い温かみが下腹部を満たすのだ。
興奮する民衆、それを宥めようとする我が騎士団。
怒号が飛び交う中、一人の男が俺に気付いた。
「あああっ!テメーは異世界からきた無能じゃねーかっ!!」
その男の大声で、一気に俺に視線が集まる。
だが、一人の女が
「で、でもっ!団長を示すマントとエギュレットがあるわ!!」
「はぁっ!?フィルハートは狂ったのか!?」
ビキッ
「あんな優男っ!国を救えるわけないじゃないっ!!」
ビキキッ
「あんな男を団長にするなんてフィルハートもたいしたことねーな!」
ビキキキッ
ドッと笑いに包まれる市井。
俺は怒りを通り越して、顔から表情がなくなった。
それに気づいたレインが小さく「ひっ!」と漏らす。
「フィルハート騎士団、こいつらの面倒はどうでもいい。後回しだ。助ける必要もないくらいこの国の民は愚劣だったってことだ」
「す、スイ団長・・・・・・・・」
レインが俺を気遣おうとするも、俺の威圧に後ずさる。
それを片目で捕えると、片端に小さな2人の子供がこの非常識な輪から外れる位置に立っていた。
遠くだが目を凝らして見ると、衣服は汚れ、髪はザンバラで、身体は痩せこけているのがわかる。
俺はその子たちの目の前に一瞬で立って見せた。
「君たちはどうしてここにいるの?」
俺はなるべく怖がらせないように、優しい声で問うた。
兄弟なのだろうか、小さい子の方が大きい子の背中に隠れてしまった。
背中を使われてしまった男の子は、俺が怖いのだろうか、小刻みに震えている。
「大丈夫、大丈夫だよ。お兄ちゃんは何もしないから」
「・・・ほんと?」
「うん、嘘はつかないよ。あっ!たまには言っちゃうけどね」
「ぷっ!騎士様面白いね・・・・・あ、あのね、父ちゃんと母ちゃん、動かなくなっちゃった!助けてっ!皆死んじゃう!」
「・・・・・・・うん、そこまで案内してくれるかい?」
「助けてくれるの?」
「お兄ちゃんが出来る範囲ならね。ほら、お兄ちゃんに捕まって!」
俺は左右の腕にこの兄弟を抱き上げると、
「うわっ!すげーーーーっ!父ちゃんにもしてもらったことない!」
「兄ちゃんっ!高いよっ!」
抱き上げられたことが相当嬉しいようで、俺の首に腕を回してはしゃいでいる。
「このくらいなら俺だって出来るんだよ!さて、案内頼むよ!振り落とされないよう、俺のマントをしっかり握りしめてろよ」
「「うんっ!!」」
ただ、抱き上げた兄弟は見た目よりかなり軽く、痩せこけている。
もしかして、この子たちは・・・・・・・
「レイン!一個小隊と共に多くの物資を持って俺が行く方へ来い。物資の選定はお前に任せる!ただ食料を多めだ!殿下たちはこちらの対処を!シュタイン団長、殿下たちをお願いいたします」
「了解した!スイレン団長も気をつけてくれ!」
騎士団全体で俺に敬礼を贈る。その光景を見た兄弟たちは、俺の代わりに敬礼を返してくれた。
殿下たちの表情は見えなくとも、優しく笑ったのが気配でわかる。
そして、鈍い温かみが下腹部を満たすのだ。
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