不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第一章

35.侵攻開始

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そして、侵攻当日。
約百名の騎士が集まった。
第三騎士団の人数は約30名。ということは、他の団から約70名もが協力してくれるのだ。
失敗は許されない。
皆の命は俺が預かる。
「集まった騎士たちよ!感謝する!今日という日は、辛く悲しい一日になることは必至であろう!だが、これから侵攻するバーミリアの民たちはもっと理不尽な目にあっている!必ず助けられる命は救い出す!だが、救い出す条件は『我が国の大切な君たちの命が護られている』場合のみだ!危機や不調を感じたならば、必ず身近の者に伝え、城砦の外で待機だ!しかし、そのような事態になった自分自身に腹が立つ者もいよう!そこで、スイレン団長が用意してくれた『瘴気を取り込んでも緩和する飲料』を飲んでくれ!苦みはあるが、効果は絶大だ!材料は第一騎士団の農園で作られたハーブだ!安心してくれ!」
ジオルドが、レイフォードとレインにその薬剤を配ることを命令する。
多めに作ったから多分足りるはず。
「2本取ってくれ!1本はここで飲んでいく物、もう1本は現地で瘴気により不調を感じたときに飲む物だ!飲みすぎると下痢などの症状が現われるとのことなので、2本までだ!」
アルバートが声を張り上げているが、拡声器もないのにこの声量。
まじ、すげーーーーーー!!!
しかし、俺もすげーーーーーー!!
あの短時間でよく用意できた物だ。
朱雀が『これ、瘴気に効く薬効成分があるようだぞ?』と言ったのが始まりだった。
しかし、それは特定の条件が必要だと精霊が教えてくれた。
それはいとも簡単な条件だったのだ。
『活性』と『治癒』の力を含んだ水を『迷いのない炎』で沸騰させ、そこにハーブを入れ、『癒し』の力を持つ風で冷ます、というものだった。
そんな条件簡単だろう?
レイフォード、ユーステス、アルバート、レインに頼めば、「はい、できあがり」。
つまり俺は何もしていないのだけど、俺の功績になった。
ま、いいや。
「では、これよりバーミリアへ転移魔法石を利用し移動する!」
今回の転移魔法石はジオルド、ジルフォード、そして第三王女ヘルミアのを利用する。
侵攻する人数が多いため、一つの魔法石ではとてもじゃないが、耐久に問題があるらしいのだ。
ゾロゾロと移動を開始する。俺と朱雀は最初にジオルドに続いて転移する。そして、全ての騎士が『精霊の住まう森』に到着するまでの間、朱雀に三種類の転移魔法石をバーミリア城砦前に置いて貰う手はずなのだ。

『スイ、置いたぞ。いつでもこちらに来られる』
「ありがとう、朱雀。終わるまで空を飛んでいていいよ」
『ああ、そうする』
設置が完了したので、一気にバーミリアまでフィルハート軍は移動する。
フィルハート軍がバーミリア城砦前にゾクゾクと集う光景にバーミリア軍は恐れ戦き、俺らに向かって弓矢を放つ。
「殿下、お一つ質問をしてもよろしいでしょうか」
「・・・スイが気持ち悪い・・・」
「・・・・・・・・・お仕置きなしな」
「あ、すみません!俺が悪かったから許してくれ!」
どんだけ必死なんだよ、ジルフォード殿下。
「ま、いいや。じゃ、ジル殿下が望む言葉で話そう。な~フィルハートと違ってバーミリアは加護を使用できないのか?」
俺は気になっていたのだ。
この世界に来たときは特に不思議には思わなかった。しかし、フィルハート帝国に着いて、加護を知り、皆がその力を使用しているのに、バーミリアでは俺に石を投げ、弓矢を放ったのだ。
炎や水で俺を攻撃しようとする者はいなかったのだ。
「加護は使えるはずなのだが、この『瘴気』だ。汚染されて使えなくなっているのかもしれない」
「そういえば、宮殿内で精霊を見なかったな」
今も殿下たちの周りには多くの精霊たちが騎士を護るように飛んでいる。とても愛らしい姿をバーミリアでは一切見なかった事に今更ながらに気がついた。
「精霊たちの消息を確認しないと」
「ああ、俺たちの生活を助けてくれるとても大切なパートナーなんだ。精霊たちも助けてやってくれ」
「言われなくも。では、これより第三・第四殿下ならびに第二皇女殿下、そして第四騎士団及び皇女殿下の騎士団は宮殿へ。民への対応は第三騎士団団長ならびに副団長に一任する!第二皇女殿下の騎士以外はシュタイン団長およびアシュレイ副団長の指示に従ってくれ!首謀者を捕え次第、両殿下及び第四は市井で作業に徹する!皆の力でバーミリアを助けるぞ!」
「「「おおおおおおおおっ!!!」」」
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