不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

文字の大きさ
上 下
29 / 227
第一章

28.可愛い寝顔

しおりを挟む
「ん・・・・・・・」
鳥の囀りが聞こえる・・・・・
光が入ってきている・・・・・・・・・・・
「んん??」
俺はばっちり目が覚めました!
既に気持ちの良い朝でした!
風呂場で気絶したんだろう、二人が俺をベッドに運んでくれていた。
その二人は俺を挟んで、スヤスヤともう三十路前か?と思えるほど、あどけない顔で眠っている。
とっても、
「可愛い!!」
頬をプニプニしたいが、起こしてしまうと可哀想だ。
ただ、日に日に濃くなっていったジオルドの目の下の隈はなくなっているし、ジルフォードもあの光景を見た後なのに、穏やかに寝ているので一安心だ。
起こさずに、俺はベッドから抜け出すと、とりあえず、
もう一度、風呂だ!!
中にまだ二人のモノが入っている感覚があり、歩きにくいが、それでも愛された証が残っていて嬉しく思う。



風呂から出ても、二人は相当疲れていたのだろう、まだ寝息を立てている。
それも、
兄弟が裸で抱き合って!!
これ、サーシャ様が見たら、発狂するな。
と、噂をすればサーシャ様の足音がするぞ?
ノックで二人が起きてしまうのは可哀想だから、先に俺が扉を開けて、迎い入れる。
「スイ、あの二人は?」
「寝室で寝ておりますよ?それもとびっきり可愛くね」
「まぁっ!それは見なければっ!」
「あっ!起こさないようにお願いします。相当疲れているみたいですから」
「それもそうね。では、抜き足差し足で突撃しましょうか?」
いや、抜き足差し足なのに「突撃」したら駄目でしょうに。
しかも抜き足差し足って言ってたわりには、スキップだし。
二人が起きないことを祈るしかない。

サーシャ様の小さな突撃にも起きず、母親に寝顔を見られる双子。
「か、可愛い!!しかも、抱き合っているなんて!裸ってのがポイントね!ああ、小さい頃の可愛さのままだわ!陛下を呼んできましょう!」
と、俺の制止の声も待たず、侍女を遣わし、そして数分後には陛下がすっ飛んできた。
しかも、第一・二殿下、そして王女二人も連れて。
「うわ~~可愛い!この子たち、こんなに可愛かったかしら?」
「うんうん、私たちにとっては可愛い弟たちだろう」
「それもそうね~~。しかし、幸せそうに寝てるわね~」
「スイがいないのにな」
と、そこで俺を見ないでください。というか、ジオルドとジルフォードが気の毒です。
つか、いい加減起きろよ、この双子!
「子供の成長は早いものだね、サーシャ」
「ええ、本当ですわね、陛下。この歳になって息子たちのこの姿を見れたこと、本当に嬉しいですわ」
と、親の言葉としては当然なのだが、サーシャ様の口元は違う意味での笑みがあって、怖い。
頭の中でどんな妄想が繰り広げられているんだろう?
「さ、隣の部屋に朝食を用意させたから、皆で食べよう!スイもだよ?」
「え、いや、ご家族の団欒を邪魔するわけにはいかないので、私は少し「いや、君にも話しておくことがあるから、食べなさい」
「あ、はい・・・・・・・」
凄い威圧感です。逆らえません。
そして、勝手にジルフォードの部屋で朝食を摂らないでください。


「で、話というのが食事の席ですることではないのだが、スイが『精霊の住まう森』で捕えた二人組が漸く「バーミリアの王から依頼を受けた」と自供した。しかも、家族を人質に捕られているらしい」
「そうですか。・・・・・少し、人選を考え直さなければならないかもしれません。というのも、第三・第四殿下には城下で浄化作業に徹して貰おうと思っているのです。しかし、バーミリアの城内には、フィルハートの王族が誰も残らないことになってしまいます。しかし、こちらの国の兵力を減らすわけにはいかない。バーミリアに進行中に、他の国が仕掛けてくる可能性だってあるのですから」
俺が言いたいのはつまり、
「つまり、スイが言いたいのは、『バーミリア城にいる王侯貴族以外の人間を保護し、浄化はできなくても回復ができ、且つそれを見届けるフィルハートの王族が必要』ということね?」
「はい、その通りです、ナルミア様。此度の件については、フィルハートの王族の証言があってこそ、成り立つ事柄であると判断しております。そして、城内に冤罪や何かしらの理由で捕えられている方々もいるはずです。私が召喚された間には女性の姿がありませんでした。つまり、どこかに王妃も監禁されている可能性もあるのです。その方々を救援するのも王族の職だと考えます」
「その通りね。帝国の王族たる私たちの証言は『真実』だから。だから、私たちが必要なのよね、理屈や常識が通用しないあの様な国には。あと、バーミリアには第二王子もいたはず。では、私、第二王女ヘルミアが行きましょう。私は少しではありますが浄化できるのですよ」
ふふふふふ、と笑う姿は天女様!
ああ、俺って向こうの世界では華美でなく、質素で慎ましい『大和撫子』系の女性が好きだったんだよな。
どこでどう間違ったのか、超美形で清涼感溢れるキラキラした男のあの殿下たちに好意を寄せられて、俺も・・・・・。言葉は貰ってないけど。
ちゃんと女性が好きだったはずなんだけど、あの二人は何か違うんだよな。元々身体が一つだったような感じがするの!
ま、これが所謂、
「夫婦ね!」
と、サーシャ様が俺をキラキラの目で見つめております。
ということは、
「声に出てました?」
「ええ、ばっちり!!」
「ああ、孫が楽しみだわ~~~!オーガストもキュリアスも子供が今年産まれてね~~~。もう、超ベッタベタに甘やかしているのよ」
「気持ち悪いくらいにね。お兄様たちがあんな表情するとは思ってもおりませんでしたわ」
「ええ、全く。あのお顔、世間にはお見せできないですわ!」
「「ええっ!!そこまで??」」
仲良く兄弟げんかが始りましたが、
「あの~孫って?」
ここで問いかけるの間違ってないよな?
「あら、スイ、こちらの国では・・・・・・・」
サーシャ様が説明をされようとしたのに、寝室から
「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」」
という、殿下たちの叫び声がこちらにまで響き渡ったのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった

藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。 毎週水曜に更新予定です。 宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ
BL
異世界に飛ばされた健(たける)と大翔(ひろと)の、食堂経営スローライフ。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

平凡くんの学園奮闘記

nana
BL
平凡男子の真城 紡(ましろ つむぎ)が、頑張って王道学園で生活するお話。

処理中です...