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第一章

22.原因は清掃不足?

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宮殿に戻り、全ての報告をジオルドとジルフォードに任せ、俺たちは第一騎士団の畑に赴いた。
もちろん第一騎士団以外の精霊たちは俺の元に戻したけどね。
で、感想は・・・・・・・・。
「果物が欲しい」
だった。
「アラベスク団長、精霊たちが『果物や花を植えて欲しい』と言ってますよ」
「『レオ』でいい、俺も『スイ』と呼ぶから。果物か。リンゴやオレンジということか?」
「ええ、そうです。精霊たちにとって花の蜜は飲み物なのですが、果実は人間と同じく食べ物なのです。『野菜ばっかり飽きた!フルーツが食べたい』って訴えてますよ?」
「っ!?そうだったのかっ!フルーツは植えたことがないのだが・・・・・・。よしっ!リンゴ、オレンジとブドウだな。それとレモンもいいな。料理に使えるしな」
「はい、とりあえずはそれで良いでしょう。で、ユーステスはこの畑の水やり係な!植物によって加減が違う。調節するのも訓練だ。そして、君の水の力はレイの『癒し』とは異なって『活性』だ。理解出来なくても良いが、お前の力は皆の力を活性化させる作用があり、また植物たちの生育を助ける力もある。ユーステスの力はレイと同じ後衛向きだな。ま、第一は畑仕事をすることで精霊の加護が増すから頑張ってくれ。あとの者は、ビシバシしばく、じゃなかった!しごくから覚悟しておけよ!」
そこに報告を終えた殿下たちが兄公たちであろう二人を連れてこられたのだ。
つうか、この国には美形しかいないのか?
俺たちはその場に忠義の礼を取る。
「何で私とジルにはしないのに兄上たちにはするんだ、私たちの騎士団は」
というジオルドの言葉なんて無視だ。
だって、余りに神々しすぎて目が痛い!
「皆面を上げよ。邪魔をした我々が悪いのだからな」
と、言われても上げられるか!上げたが最後、眩しい光に目が潰れるわ!!
「スイ殿、我々も仲間に入れてくれないか?ジオルドとジルに私たちより強くなって貰っては、私たちの面子が立たんのだ」
「はっ!それは構いませんが、遠慮はしない性格なので、無礼を働くかもしれませんが、それでも構いませんでしょうか?」
「構わない。それより、その畏まった話し方は止めてくれないか?君がジオルドと話している姿はとても愛らしくて、好ましい。その話し方で構わない」
「え、は?愛らしい?え??」
俺、この国に来て耳が本当におかしくなってない?
何が愛らしいの?え、俺が?目、大丈夫ですか?後で治癒を施した方がよいかな?
「そういうことで、我々はどうしたらよい?」
混乱した頭をさっと切り換える。
第一殿下はさすがレオの仕える人物だけあって、この方もあとは精霊と心を通わせるだけで良さそうなので、この畑を手伝うことを提案した。
第二殿下は・・・・・・・アルバートたちと共にしごく!
と伝えると、第二殿下は思いっきり
「はははははっ!私もしごかれるとは!よしっ!暴れて、憂さ晴らしできる機会だ!存分に我々をしごき倒せっ!はははははは」
ええ、もう、それは、本当に憂さ晴らしなのだろう、俺の言葉を聞いた途端ウキウキと身体を動かし始めたのだから。どれだけストレス溜まってんの?
あ、そっか!第二って・・・・・・・。
「オークレイ団長の事ですね?」
「ああ、全くその通りだよ。右腕が酷く爛れており、治癒術も効かんのだ。全くどうしてこうなったモノなのかな、スイ殿?」
「あは?あはははははは。バレました?」
「ジオルドから全て聞きました!本当にとんでもないことをしでかしてくれたものだ。ヤルなら殺(や)ってくれたほうがよかったのに・・・・・・」
おいおいおいおいおいおいおいっ!
「あ・に・う・えっ!全責任をスイに押しつけないでください!そもそも兄上の団の事にスイが手を貸しただけなのですから!」
「そうですよ、全く。俺の騎士団長に対して失礼です!兄上でも許しませんよ!」
「ああ、はいはいわかってるわかってるって!お前らがどれだけスイ殿が大好きなのかわかってるから、そのレイピアを下げてくれ!!」
兄に刃を向ける兄弟喧嘩って、俺の家族と似たり寄ったりだな。ま、こっちの兄弟は愛情があるみたいだけど、俺の家族はそんなものなかったしな~。つか、家族だったっけ?程度だな。
「オークレイの腕の痛みは何とか和らいだらしいが、治る見込みはないだろうというのが医術院の見解だった。それに加護が今後使えるかどうかも不明だそうだ。そんな者を団長にしておくわけにはいかんからな。解雇だ、解雇!!」
「兄上、しかし、あいつには他に罪があるはずですが」
「ああ、それを明るみにしてからになる。本人には解雇の事も含め、言うなよ。というか、この場にいる者全員に伝える!この事は他言無用だ!この場だけの内容であると心得よっ!」
「「「はっ!!!」」」
ま、弟殿下を含めた俺たち騎士団は判るけど、
「おいおい、俺お前の兄なんだけど、一応?」
「兄って言っても双子なんだから変わらないじゃないか」
ん?んん??
「スイ、兄上たちも双子なんだよ。ついでに私たちより3歳上なだけ」
「それに王女も双子だな。王女は1つ上だ」
「王族は双子が多いのでしょうか?」
「「「「いや、本当にたまたまだ」」」」
殿下たちが声を揃えて反論しても現実味がないのが、この場面だな。
「それと、スイに伝えねばならないことがあった」
「オーガスト殿下、それは何でしょうか?」
「ああ、今朝の朝市の件だ。騎士たちの調べによると、路地裏や地下水道などから発生しているらしい」
「やっぱり」
「「「やっぱり???」」」
俺の考えは当たっていた。この帝都の『瘴気』は・・・・・・・・。
「さ、街中掃除しよっか!」

「つまり、ただ掃除してないだけ!忙しいのか、それとも頻繁に発生する『瘴気』のせいで手が回らないのか知らないけど、自然の『瘴気』は汚い場所に溜まるんだ!裏路地はゴミが散乱していたり、下水道はヘドロが溜まっていたり、そんなんだろう。だから、騎士も協力して街中掃除を開催しようっ!」
「「「お、おおう???」」」
疑問系ながら協力はしてくれるようだ。
「でも、何故人が多い時間帯に『瘴気』は発生していたんだ?」
「ちっちっち!ヴォルフ君はまだまだ考えが足りないみたいですね~。明日3キロ追加な!」
「うげっ!余計な事言わないでおこう」
「それがいいぜ、今はさ」
副団長同士仲がよろしいもんで。
「人は街中で買い物をし、そのゴミを所定の場所に捨てるのならまだしも、多分ポイ捨てしてんだろうな。しかも、普段人が通らないような場所にさ。マナーがなっていないな、全く。新しい制度を作った方が良いんじゃない?罰則を設けるとかな」
「陛下に進言しよう。それと明日は女性騎士団も含めた騎士団全体で街中掃除を開催することも陛下に私から伝えておこう。キュリアス、一緒に来てくれ。強くなるのはもちろんだが、先に民のことを優先しよう。スイ殿、ジオルドとジルを頼んだよ!」
「はっ!オーガスト殿下、キュリアス殿下、よろしくお願いいたします」
二人は俺たちに背を向けて、歩き出したが、見えた表情は既に為政者で格好良かった。このことはジオルドには秘密にしておこう。
「ということで、残った者はさ~~楽しい楽しいしごきの時間ですよぉ~~」
ニコリと笑った俺の表情は、そこに降臨した悪魔のようだったと後にレインから聞いて、俺は彼が煎れてくれた紅茶をジルフォードに向かって吹いてしまったのだった。
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