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第一章
20.かわいい食事
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食堂にはちらほらと夜番の騎士たちが見える。
クタクタになりながらも食事を口に運ぶ姿が、昔の俺を思い出させる。
食事はビュッフェ形式らしく、俺はバランス良く取っていくが、ジオルドは「ザ☆肉」のオンパレードになっているので、ジオルド分の野菜も沢山俺が取ってやる。
つか、夜によく肉食えるな、と感心する。俺の胃袋はそんなに頑丈ではない。
「スイ、肉食べないと力出ないだろう?」
「俺言っただろう?嫌いじゃないけど、肉はあまり食べないって」
「あ、初めて会った時言っていたね、体臭がどうのこうのって」
「そうそう。俺の仕事って本来『暗殺』だったから、匂いなどで感知されるわけにはいかないんだよ」
「でも、この世界では関係ないだろう?」
「う~~ん、関係なくはないし、実際あんまり肉は必要としないんだよな~。鶏肉やソーセージなどは好きだけどね。あ、魚肉は大好きだぜ!」
「魚ね~。うん、バーミリアの件が片付いたら、我が国最大の港『ホルシオ』に行ってみるかい?兄上が『視察に行かないといけないのに時間がない』ってぼやいていたから、代わりに私が名乗りをあげようか?」
「え、いいの!?行く行く!!魚、魚!!」
「スイは本当に可愛いよ」
軽く頬に落とされるキスを俺は払うこともなく、受け入れてやった。どうせ見ている人間なんていないだろうし。
と、ラウンジを見渡すと、そうでもなかった。まばらしかいない騎士の視線を全身に浴びていました。
ジオルド、更に3キロ追加な!
時間が時間なので、いくらでも席は空いている。夜空が綺麗に見える窓側の席に着く。
この世界の星は綺麗だ。日本より多くの星が煌めき、流星も多く見られる。願い事なんていくらでも叶いそうな数の流れ星。
そんな中で俺の大切になった人と二人で食事。
乙女思考になっているのはわかるけど、格好いい俺の王子と星を見ながら食事なんて。ロマンチックでしかなくない?
不運からこの世界に来てしまったけれど、大切な人が増えて、そして、大好きな人もできて、幸せを感じる俺って、もうこっちの世界に順応しているんだな。
「ジオルド殿下、野菜が足りないからこれな」
ドンと目の前に置いてやる、多くの種類が入った野菜ボウル。
「っ!!こ、こんなに食べないと駄目か?」
「そんなに肉食ってんだから、当たり前の量だと俺思うけど?」
「ぐぐぐ。仕方ない、折角スイが選んでくれたんだ。食べよう」
「もしかして野菜嫌いなわけ?」
「いや、嫌いではないが、この国の騎士は皆、野菜や魚より肉に重きを置くからな~」
「じゃ、この機会に野菜食べような。それとも俺に無理矢理食べさせられたい?」
「っ!!!食べさせてくれるのは嬉しいが、無理矢理はちょっと・・・・・・」
「だろ?だったらバランス良く食べる!」
「はいっ!!」
俺はジオルドの皿から少し大きめに切られた肉を取り、その上にタマネギのスライスとプチトマトを置いてレタスで巻く。それをジオルドの口元に持っていって、
「ほら、こうすると食べやすいだろう?」
「っ!!!!!」
いきなり顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。
金魚みたいで可愛い。
「す、スイっ!?ああああ、私の為にっ!じゃなくて、じ、自分で食べられるからっ!」
「ま、遠慮するな。こんなことしてやるの、最初で最後かもしれないだろう?な?」
「ぐぬぬぬぬっ!わ、私の負けだな・・・・・・」
観念して、俺の手からレタス巻きを食べる姿は、さながら大きなハムスターだ。
「可愛い~」
「・・・・・・スイの可愛さに比べたら私なんて」
赤い顔のまますねる姿も可愛いのだけど、これ以上すねられても困るので、言わないで心に止めておく。
『おい、俺ら何見せられてんの?』
『知るかよっ!』
『あの二人できてたんだな』
『そのようだな・・・・・・・。ジオルド親衛隊の今後の動向が気になるな』
『そんなのあったのかよ・・・・・・』
『あったんだよな~これが・・・・・。つか、スイ団長、可愛いな』
『それな!あの強さ見せられたら怖い人かと思ってたけど、そうでもなさそうだな』
『ああ、気さくに声かけても怒られね~かな』
『俺、明日の朝のジョギング参加してみようかな?』
『お、俺も寝る前に参加してみるかな。丁度朝市の時間だろうし』
『だな』
『ああ』
全部聞こえてますよ、騎士さんたち。
ええ、是非ともジョギング参加してください。
ビシバシしばき倒しますから!
いつの間にか食堂は、和やかな雰囲気に包まれていたのに、それを消すほどの慌ただしい足跡が廊下から響いてくる。
『オークレイ団長が担ぎ込まれた!急いでミルバートン副団長に知らせを!』
『はっ!』
と言う声を拾う事ができた。それはジオルドも同じ事で、
「スイ、何かしたのか?」
「あ、気付いた?レインに施したあの術、実は術者に返す技なんだよ。しかも、倍増しでね」
「はぁ~~~つまり『術者にそっくりそのまま返すし、挙げ句プラスして呪うので、副作用はなし』という解釈でいいのか?」
「当たり!それが正解だ。ま、痛みに我慢ならんかったんだろう。今の今までよく我慢したもんだ。というか、ジオルド、ヴォルフに知らせようとしている兵を止めたげて?別にいらないだろう、俺たちが知っていれば」
「それもそうだな。わざわざヴォルフを起こす必要はないな。ましてやあんなヤローのために」
「うっわ、汚い言葉!王子のくせに」
「私だってたまには使うさ。こんな私は嫌いかい?」
「そのくらいで俺の気持ちは変わんねーよ」
クタクタになりながらも食事を口に運ぶ姿が、昔の俺を思い出させる。
食事はビュッフェ形式らしく、俺はバランス良く取っていくが、ジオルドは「ザ☆肉」のオンパレードになっているので、ジオルド分の野菜も沢山俺が取ってやる。
つか、夜によく肉食えるな、と感心する。俺の胃袋はそんなに頑丈ではない。
「スイ、肉食べないと力出ないだろう?」
「俺言っただろう?嫌いじゃないけど、肉はあまり食べないって」
「あ、初めて会った時言っていたね、体臭がどうのこうのって」
「そうそう。俺の仕事って本来『暗殺』だったから、匂いなどで感知されるわけにはいかないんだよ」
「でも、この世界では関係ないだろう?」
「う~~ん、関係なくはないし、実際あんまり肉は必要としないんだよな~。鶏肉やソーセージなどは好きだけどね。あ、魚肉は大好きだぜ!」
「魚ね~。うん、バーミリアの件が片付いたら、我が国最大の港『ホルシオ』に行ってみるかい?兄上が『視察に行かないといけないのに時間がない』ってぼやいていたから、代わりに私が名乗りをあげようか?」
「え、いいの!?行く行く!!魚、魚!!」
「スイは本当に可愛いよ」
軽く頬に落とされるキスを俺は払うこともなく、受け入れてやった。どうせ見ている人間なんていないだろうし。
と、ラウンジを見渡すと、そうでもなかった。まばらしかいない騎士の視線を全身に浴びていました。
ジオルド、更に3キロ追加な!
時間が時間なので、いくらでも席は空いている。夜空が綺麗に見える窓側の席に着く。
この世界の星は綺麗だ。日本より多くの星が煌めき、流星も多く見られる。願い事なんていくらでも叶いそうな数の流れ星。
そんな中で俺の大切になった人と二人で食事。
乙女思考になっているのはわかるけど、格好いい俺の王子と星を見ながら食事なんて。ロマンチックでしかなくない?
不運からこの世界に来てしまったけれど、大切な人が増えて、そして、大好きな人もできて、幸せを感じる俺って、もうこっちの世界に順応しているんだな。
「ジオルド殿下、野菜が足りないからこれな」
ドンと目の前に置いてやる、多くの種類が入った野菜ボウル。
「っ!!こ、こんなに食べないと駄目か?」
「そんなに肉食ってんだから、当たり前の量だと俺思うけど?」
「ぐぐぐ。仕方ない、折角スイが選んでくれたんだ。食べよう」
「もしかして野菜嫌いなわけ?」
「いや、嫌いではないが、この国の騎士は皆、野菜や魚より肉に重きを置くからな~」
「じゃ、この機会に野菜食べような。それとも俺に無理矢理食べさせられたい?」
「っ!!!食べさせてくれるのは嬉しいが、無理矢理はちょっと・・・・・・」
「だろ?だったらバランス良く食べる!」
「はいっ!!」
俺はジオルドの皿から少し大きめに切られた肉を取り、その上にタマネギのスライスとプチトマトを置いてレタスで巻く。それをジオルドの口元に持っていって、
「ほら、こうすると食べやすいだろう?」
「っ!!!!!」
いきなり顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。
金魚みたいで可愛い。
「す、スイっ!?ああああ、私の為にっ!じゃなくて、じ、自分で食べられるからっ!」
「ま、遠慮するな。こんなことしてやるの、最初で最後かもしれないだろう?な?」
「ぐぬぬぬぬっ!わ、私の負けだな・・・・・・」
観念して、俺の手からレタス巻きを食べる姿は、さながら大きなハムスターだ。
「可愛い~」
「・・・・・・スイの可愛さに比べたら私なんて」
赤い顔のまますねる姿も可愛いのだけど、これ以上すねられても困るので、言わないで心に止めておく。
『おい、俺ら何見せられてんの?』
『知るかよっ!』
『あの二人できてたんだな』
『そのようだな・・・・・・・。ジオルド親衛隊の今後の動向が気になるな』
『そんなのあったのかよ・・・・・・』
『あったんだよな~これが・・・・・。つか、スイ団長、可愛いな』
『それな!あの強さ見せられたら怖い人かと思ってたけど、そうでもなさそうだな』
『ああ、気さくに声かけても怒られね~かな』
『俺、明日の朝のジョギング参加してみようかな?』
『お、俺も寝る前に参加してみるかな。丁度朝市の時間だろうし』
『だな』
『ああ』
全部聞こえてますよ、騎士さんたち。
ええ、是非ともジョギング参加してください。
ビシバシしばき倒しますから!
いつの間にか食堂は、和やかな雰囲気に包まれていたのに、それを消すほどの慌ただしい足跡が廊下から響いてくる。
『オークレイ団長が担ぎ込まれた!急いでミルバートン副団長に知らせを!』
『はっ!』
と言う声を拾う事ができた。それはジオルドも同じ事で、
「スイ、何かしたのか?」
「あ、気付いた?レインに施したあの術、実は術者に返す技なんだよ。しかも、倍増しでね」
「はぁ~~~つまり『術者にそっくりそのまま返すし、挙げ句プラスして呪うので、副作用はなし』という解釈でいいのか?」
「当たり!それが正解だ。ま、痛みに我慢ならんかったんだろう。今の今までよく我慢したもんだ。というか、ジオルド、ヴォルフに知らせようとしている兵を止めたげて?別にいらないだろう、俺たちが知っていれば」
「それもそうだな。わざわざヴォルフを起こす必要はないな。ましてやあんなヤローのために」
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