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第一章
18.副団長
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第四騎士団の執務室に戻り、俺がスカウトした男をまじまじと見る。どこかレイフォードに似ているような?
「スイ、いえ、スイ団長。この者は私の兄のレイン・アシュレイです」
「あ、な~るほど。だから似てんのか」
すんげ~似てて驚いたわ。目の色は緑色で力は「風」。この世界って瞳の色と加護の色が同じらしい。
「スイ、その者は加護が使えないのだ」
アルバートの言葉に皆俯き、表情が硬くなる。そして、
「全ては!全ては、オークレイが悪いんです!あいつさえいなければ!!!」
ユーステスが本心から憎いとそれを顔に表せ、声を荒げる。
「どういうことだ。詳しく話せ」
強い口調で、命令をする。誰でも良い答えろと。
「・・・・・・私から申し上げます、スイ団長。私は嘗て第二騎士団副団長でした。団長のエリアス・グラスゴーと共に日々研鑽しておりました。その際、加護の発動を誤ったオークレイに我々は重傷を負わされ、加護が使えなくなってしまったのです。団長は、バーミリアに飛ばされ、私は騎士団から除籍されました。しかし、騎士を諦めきれず、それにいつかは団長を迎えに行きたく、日々訓練をしているのですが、やはり・・・ぅ・・・・」
唇を噛みしめ、涙を堪えるレイン。
「スイ団長!!オークレイはわざと失敗したのです!!!証拠はありませんが、『邪魔者が消えた』など他の団員が聞いているのです!!」
「ロッテ副団長、落ち着け。俺にもわかる、これはわざとだとな」
レインの袖を捲ると、そこには酷く爛れた痕が残されていた。
「これはな、呪いだ。俺にしか、あ、いや、違うな、今はジルフォード殿下も訓練すれば浄化できる呪いだ。今回は俺がするが、ジルフォード殿下、俺の手の周りをよく見ていてください。殿下の周りにいる精霊たちよ、殿下に加護を」
『うん!わかったよっ!』
精霊たちは殿下の頬にキスをして、そして、
「え、あ、ああっ!見える!見えるぞ!精霊たちが舞っている姿が!!」
「ええ、本来貴方は見えるのです。これから成長していきましょう。では、俺の手元を見ていてください。細かい部分は殿下とは異なりますが、大まかには同じなのです。ジオルド殿下、今晩空けておいてくださいね」
「わかった。スイ団長、どうかレインを助けてやってくれ」
「御意に」
呪解返呪
彼の腕から真っ黒の靄が浮き出てきて、それが玉になっていく。ジルフォード殿下とサーシャ妃に行った術式と似ているが、今施しているのは全体ではないため、術を受けている最中に身体が燃えるように熱くなることはないのだ。全ての靄が球体になったところで、それを消し去る。
レインの腕からは痣が取れ、そして、
「うあぁぁぁぁっぁあっ!」
動くことさえ出来なかった動力機関が急に動き出したため、心臓近くが燃えるように疼くのだろう。悲鳴はすぐに終わったが、荒い息は止まらない。
はぁはぁ、と呼吸音だけがする室内。
俺は、
「今の話から推測するに、オークレイは数日の間に俺を亡き者にしようとしてくるだろう。多くの観衆の前で恥をかかされたのだからな。ということで、夜は与えられた自室で休む。騎士専用の部屋なのだろう?奴は団長なのだから、俺がどの部屋で休んでいるのかくらい調べられるだろう?殿下たちは自室で休んでください。翌日が大変になりますから。他の者たちは自室に灯を灯らせ、自分は自室にいるということアピールしてくれ。実際は俺の部屋の隣などに潜んで、動向を見ていてくれ。襲ってきたら俺が対処をする。その現場を目撃したら捕えろ」
「わかった。スイに従おう」
「第一も協力をする。ユーステス異論は?」
「もちろんありません!!」
「ヴォルフ、よかったですね。一つ貴方の気に病んでいたことが解決しました」
「うん、うんっ!!!」
ヴォルフが泣き出してしまったため、レイフォードが隣の部屋から温かい紅茶を運んでくれた。
そうだった、第三の執務室と繋がっているんだったわ。
「スイ、無理はするな。私の見ていないところで怪我もするな。したら許さない!お前を俺の自室に縛り付けるからな!」
「ジオルド、冷静に。ドードー。しかし、スイ、俺からもジオルドと同じ意見だ。無茶だけはするなよ?」
「はっ!心得ております」
二人に忠義の礼をすると、他の面々も倣った。
ジルフォードは、
「レイン・アシュレイ、貴殿を本日付で第四騎士団副団長を任せる!」
「はっ!このご恩忘れません!!」
「『恩』はスイにだろう?俺には不要だ。まだ、お前に何も報いていないのだから」
「いえ、私を団に入れてくださっただけでも『恩』です。これでグラスゴー団長を助けられる希望が広がりました!」
「そうか、それはよかった」
レインは本当にグラスゴーが好きなんだな~~と思っているとそれが表情に出ていたのか、レイフォードに「二人は恋人でした」と爆弾を落とされました。
「レイン、君のマントはすぐに用意させる。それとすぐに居住をスイと共に移せ。今日中にな。夜、スイはジオルドの所だろう?」
「ぐっ!そうなりますね。そうなるけど、言わないで欲しかったな~~~と思うのは男としてのわずかなプライドでしょうか?」
で、案内された居住地は各団の団長副団長が住む一軒屋、もとい豪邸でした。
一階部分はダイニングルームや風呂やトイレの水回り。そして、来客用スペース。二階の左側部分は第一騎士団用フロア、右が第二騎士団用フロア、三階の左が第三で逆が俺たち。ちなみに地下もありました。そこは聞かれては不味い内容などの作戦ルームだったらしいのですが、何故か遊び場になっておりました。あとは、少しばかりの反省部屋らしきものが。
部屋の中は広くて、一応自室に簡易ながらもユニットバスが付いていて、めっちゃ助かる構造でした!
殿下の部屋の様な豪奢なベッドではないけれど、フカフカで大満足!
「俺、ココに住んでいいんですかね、本当に・・・・・」と心配するくらい、本来の世界での生活品より質が良くてびびっています。
「着替えなどは衛生班に準備させます。しかし、それでは足りないでしょうから、明日でも買いに行かれると良いですよ。レイン兄様お願いできますか?」
「もちろんだ。団長に美味い定食屋も紹介する!」
兄弟仲は元々良いようで、俺は本当に安心しました。
「では、とりあえず、今日はお開きにしましょう。スイもそろそろでしょう?」
「ぐっ!ううう、うん、そうなんだよね~~。ということで、俺ジオルド殿下の所に戻るから、また明日な」
レイフォードに促されて、俺は部屋の外で待ってくれていたジオルドと共に初日に訪れた彼の部屋へと転移用魔法石を利用して戻ったのだった。
「スイ、いえ、スイ団長。この者は私の兄のレイン・アシュレイです」
「あ、な~るほど。だから似てんのか」
すんげ~似てて驚いたわ。目の色は緑色で力は「風」。この世界って瞳の色と加護の色が同じらしい。
「スイ、その者は加護が使えないのだ」
アルバートの言葉に皆俯き、表情が硬くなる。そして、
「全ては!全ては、オークレイが悪いんです!あいつさえいなければ!!!」
ユーステスが本心から憎いとそれを顔に表せ、声を荒げる。
「どういうことだ。詳しく話せ」
強い口調で、命令をする。誰でも良い答えろと。
「・・・・・・私から申し上げます、スイ団長。私は嘗て第二騎士団副団長でした。団長のエリアス・グラスゴーと共に日々研鑽しておりました。その際、加護の発動を誤ったオークレイに我々は重傷を負わされ、加護が使えなくなってしまったのです。団長は、バーミリアに飛ばされ、私は騎士団から除籍されました。しかし、騎士を諦めきれず、それにいつかは団長を迎えに行きたく、日々訓練をしているのですが、やはり・・・ぅ・・・・」
唇を噛みしめ、涙を堪えるレイン。
「スイ団長!!オークレイはわざと失敗したのです!!!証拠はありませんが、『邪魔者が消えた』など他の団員が聞いているのです!!」
「ロッテ副団長、落ち着け。俺にもわかる、これはわざとだとな」
レインの袖を捲ると、そこには酷く爛れた痕が残されていた。
「これはな、呪いだ。俺にしか、あ、いや、違うな、今はジルフォード殿下も訓練すれば浄化できる呪いだ。今回は俺がするが、ジルフォード殿下、俺の手の周りをよく見ていてください。殿下の周りにいる精霊たちよ、殿下に加護を」
『うん!わかったよっ!』
精霊たちは殿下の頬にキスをして、そして、
「え、あ、ああっ!見える!見えるぞ!精霊たちが舞っている姿が!!」
「ええ、本来貴方は見えるのです。これから成長していきましょう。では、俺の手元を見ていてください。細かい部分は殿下とは異なりますが、大まかには同じなのです。ジオルド殿下、今晩空けておいてくださいね」
「わかった。スイ団長、どうかレインを助けてやってくれ」
「御意に」
呪解返呪
彼の腕から真っ黒の靄が浮き出てきて、それが玉になっていく。ジルフォード殿下とサーシャ妃に行った術式と似ているが、今施しているのは全体ではないため、術を受けている最中に身体が燃えるように熱くなることはないのだ。全ての靄が球体になったところで、それを消し去る。
レインの腕からは痣が取れ、そして、
「うあぁぁぁぁっぁあっ!」
動くことさえ出来なかった動力機関が急に動き出したため、心臓近くが燃えるように疼くのだろう。悲鳴はすぐに終わったが、荒い息は止まらない。
はぁはぁ、と呼吸音だけがする室内。
俺は、
「今の話から推測するに、オークレイは数日の間に俺を亡き者にしようとしてくるだろう。多くの観衆の前で恥をかかされたのだからな。ということで、夜は与えられた自室で休む。騎士専用の部屋なのだろう?奴は団長なのだから、俺がどの部屋で休んでいるのかくらい調べられるだろう?殿下たちは自室で休んでください。翌日が大変になりますから。他の者たちは自室に灯を灯らせ、自分は自室にいるということアピールしてくれ。実際は俺の部屋の隣などに潜んで、動向を見ていてくれ。襲ってきたら俺が対処をする。その現場を目撃したら捕えろ」
「わかった。スイに従おう」
「第一も協力をする。ユーステス異論は?」
「もちろんありません!!」
「ヴォルフ、よかったですね。一つ貴方の気に病んでいたことが解決しました」
「うん、うんっ!!!」
ヴォルフが泣き出してしまったため、レイフォードが隣の部屋から温かい紅茶を運んでくれた。
そうだった、第三の執務室と繋がっているんだったわ。
「スイ、無理はするな。私の見ていないところで怪我もするな。したら許さない!お前を俺の自室に縛り付けるからな!」
「ジオルド、冷静に。ドードー。しかし、スイ、俺からもジオルドと同じ意見だ。無茶だけはするなよ?」
「はっ!心得ております」
二人に忠義の礼をすると、他の面々も倣った。
ジルフォードは、
「レイン・アシュレイ、貴殿を本日付で第四騎士団副団長を任せる!」
「はっ!このご恩忘れません!!」
「『恩』はスイにだろう?俺には不要だ。まだ、お前に何も報いていないのだから」
「いえ、私を団に入れてくださっただけでも『恩』です。これでグラスゴー団長を助けられる希望が広がりました!」
「そうか、それはよかった」
レインは本当にグラスゴーが好きなんだな~~と思っているとそれが表情に出ていたのか、レイフォードに「二人は恋人でした」と爆弾を落とされました。
「レイン、君のマントはすぐに用意させる。それとすぐに居住をスイと共に移せ。今日中にな。夜、スイはジオルドの所だろう?」
「ぐっ!そうなりますね。そうなるけど、言わないで欲しかったな~~~と思うのは男としてのわずかなプライドでしょうか?」
で、案内された居住地は各団の団長副団長が住む一軒屋、もとい豪邸でした。
一階部分はダイニングルームや風呂やトイレの水回り。そして、来客用スペース。二階の左側部分は第一騎士団用フロア、右が第二騎士団用フロア、三階の左が第三で逆が俺たち。ちなみに地下もありました。そこは聞かれては不味い内容などの作戦ルームだったらしいのですが、何故か遊び場になっておりました。あとは、少しばかりの反省部屋らしきものが。
部屋の中は広くて、一応自室に簡易ながらもユニットバスが付いていて、めっちゃ助かる構造でした!
殿下の部屋の様な豪奢なベッドではないけれど、フカフカで大満足!
「俺、ココに住んでいいんですかね、本当に・・・・・」と心配するくらい、本来の世界での生活品より質が良くてびびっています。
「着替えなどは衛生班に準備させます。しかし、それでは足りないでしょうから、明日でも買いに行かれると良いですよ。レイン兄様お願いできますか?」
「もちろんだ。団長に美味い定食屋も紹介する!」
兄弟仲は元々良いようで、俺は本当に安心しました。
「では、とりあえず、今日はお開きにしましょう。スイもそろそろでしょう?」
「ぐっ!ううう、うん、そうなんだよね~~。ということで、俺ジオルド殿下の所に戻るから、また明日な」
レイフォードに促されて、俺は部屋の外で待ってくれていたジオルドと共に初日に訪れた彼の部屋へと転移用魔法石を利用して戻ったのだった。
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