不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第一章

8.チーズ

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「ジオルド殿下・・・・・・・助けてやる。その代わり、俺の性処理頼むぞ?」
「「「っ!!!!!!」」」
「覚悟は受け取ったから。だから俺もそれに応えてやる。だから、見返り「見返りなんて!!!」
俺の言葉を最後まで聞かず、ジオルドは
「君の身体を私に預けてくれるなんて、光栄だ!君の身体は私が預かる!」
「うん、そうしてくれ。ま、一人で頑張れないようならアルバートとレイフォードに手伝って貰ってくれ。多分、俺、中々満足しないぞ?弟公以外に助けなければならない・・・・・・殿下の「お母様」も関係あるからな」
「「「っ!!!!!!」」」
特定の人物だけではない繋がりが俺には見えていた。
繋がりが最も深い、母君で。
「スイ、とりあえず私は湯あたりしそうだ。一旦湯から出て話そうか、私たちの関係を」
俺を抱きしめていた腕を放し、湯から出て行く殿下のお姿。
美しすぎる!
俺とは違う綺麗な筋肉!!!
しかも、その後を追うアルバートの筋肉量!
羨ましすぎるだろぉぉぉぉぉ!!!!!
じゃなくて、
「俺タオルないから、レイフォードあっち向いててくんない?精霊たちが風で吹き飛ばしてくれるって言ってるから」
「それは必要ないですよ、スイ。タオルは多めに持ってきておりますから、私どものをご使用ください。団長!タオル1枚取ってください!」
「ん?ああ、スイのか。ちょっと待ってろ。スイ、お前好き嫌いはないか?アルコールは好きか?」
「え、好き嫌いは基本ないけど、肉は余り食べないな。体臭が強くなるからな。でも。嫌いじゃないよ。あと、酒は超好き!仕事終わりの一杯って本当に美味いよな!」
「お、スイはいける口か!よかった。多めにワイン持ってきて」
と、アルバートがリュックサックからワインを取り出すも、そのリュックサックの容量にどうやって入っていたという本数を取り出したのだ。
「団長・・・・・・アルバートは大の酒好きなんですよ。ま、私たちも飲ませて貰ってますから文句は言いませんけどね」
「レイのその言い方は、文句言っているのと同じではないか?」
「いえいえ、飲み過ぎだなんて一言も言っていないですよ?頼みますから、体調だけは気をつけてください」
「言っているじゃないか・・・・・・・・・。体調は気をつけるから小言は止めてくれ」
「はいはい。あ、スイ、拭いたタオルはこちらに。後で、洗濯いたしますから」
「いやいやいやいや、俺がするって!!ん?ああああああっ!それ、チーズ!!」
「そうですが?」
「やったーーーーー!俺大好きなんだよ、チーズ!しかも、今日まじで何も食ってなくてさ!任務の時間よりかなり早くお嬢に叩き起こされて、朝食抜いて、そして、異世界。で、飲まず食わずの一日!その最後に俺の大好きなチーズ!ありがとぉぉぉぉっぉ!で、このチーズどうすんの?」
どうすんの?って聞くってバカじゃないのって思うじゃん?だけど、大きい丸いチーズがデーーーーンとあるんだぜ?
聞いちゃうでしょ?
「チーズフォンデュにしようかと思って、腸詰めやトマトにズッキーニなど用意していますよ」
「~~~~~~~~っ!!!!!!!!!レイフォード最高!!!」
思いっきりレイフォードに抱きついたら、ベリッと音がするんじゃないかと思うくらい、勢いよく俺たちは離された。
「つか、今更なんだけど俺食べて良いの?今何もないんだけど?」
うん、こいつらの動力機関やなんたらかんたらを治したのは、こいつらの国に戻ってから請求してやろうと思っていたのだが、
「構わない。明日で犯人は分かるのだろう?それに私がここにいるならば、城に戻って食料をすぐに持ってくることは容易いからな」
俺は殿下たちがどのようにしてここに来たのか詳しく聞いて、「なら、俺、国まで奔らなくていいんだ」という安堵が感情に表れてしまった。
それで漸く気付いたらしく、
「スイよ、バーミリアからどれだけ走るのが速い人間でも丸3日はかかる距離だぞ?どうやって辿り着いたのだ?」
「あれ、今更聞く?」
「・・・・・・・すまん。俺の無礼とレイを助けてくれたことで満足していた」
「いいよ、アルバート。ちゃんと謝ってもらったし。そうだな~ま~走り方にコツがあるのと、訓練だな。俺は物心つく前から訓練の日々だったから、普通の人間ができない神業とかもできるよ?さっきも言ったけど、俺向こうの世界では「人間兵器」だったからね。しかも超特級の!俺をこっちに召喚したこと自体が本当は凄いことなのに、「聖女」や「巫女」でないならいらな~~~いって、バッカじゃねーの?って感じ。俺がどれだけ使える人間かわかりもしないでさ」
「それはすまん、スイ」
アルバートが俺の頭をくしゃりと撫でる。
大きくて気持ちいい手だな。暖かい・・・・・・・・・。
じゃなくて!
「あ、ごめん!愚痴になった!責める気持ちは全くないからな!というか、お前らを責めても意味ねーし。俺が言いたいのは、『俺、超強い』ということ」
「ほ~、じゃ、俺と勝負するか?」
アルバートは剣をすらりと抜く仕草をするが、俺は手をひらひらと左右に振る。
「別に良いけど、俺は倒せないよ?その力量じゃあさ。ん~~~、国に行って、機会があれば手合わせしよう」
「馬鹿にしてくれるもんだな。だが、お前の言うことだ。俺の力はまだお前には及ばないのであろう」
「殿下とレイフォードと協力しても俺を倒すことはできないな。でも、強くなる方法はいくらでもある」
「「「っ!!!」」」
クツクツと煮立ってきたチーズにトマトをディップし、熱い白い煙を纏わせる物を口に入れると、
「っ!!!!!甘い!え、何、このトマト!めっちゃ美味い!ん?どうした?」
精霊が俺の肩に乗って『それはね~土の加護を持った騎士さんが作ったんだよぉ』と。
「ほ~~~、会ってみたいなその者に」
「???どうしたんです、スイ?」
「ん?いや、精霊がさ、このトマト「土の加護を持つ騎士が作った」って言ってたから会ってみたいなと」
「あ~~~それは多分第一騎士団の団長ですね。彼の趣味は農業ですから」
「はぁ~~~?農業ぅぅぅぅ!!!」
納得だ。土の精霊に愛された者ならばな。しかし、ここまで甘いトマトを作るとなると、土の精霊の信頼を一心に受けているんだろうことはわかる。土の加護で攻撃や防御が出来るからと言って精霊が力を貸しているわけではないようだからだ、この世界は。
「そいつとも手合わせしてみてーな。ま、精霊と会話できる俺がお前たちに負けるわけないだろう?」
「・・・・・・ご尤も」
「てか、俺の話はこの際どうでもいんだよな。お前らの話を聞かせろ。でないと、対処のしようがない」
「ああ、そうだったな・・・・・・・・」

パチパチとチーズを温める薪が小さく跳ね、火の形を崩していく。
「私の双子の弟ジルフォードは『闇』の力を持って産まれた。この世界で『闇』は「悪の象徴」で災害や天災などを引き起こすとしていて恐れられている。その力を持っているのがジルフォードで、神官たちがジルフォードの力を封印したのだ。そして、勝手に封印を解くことを許しはされず、禁を破らないよう母様に呪いの楔を打ち込んだのだ。ジルフォードは自室から一歩も出ることができず、母様も城内から一歩たりとも、庭園にすら出られなくなってしまったのだ。ジルフォードの幼少期はまだ私たちが彼の部屋に足を運んで遊ぶこともできたが、成人してからは各々の仕事がある故、弟を蔑ろにしてしまっていたんだ。そして、ついに弟は気力が持たず、体調を崩し、寝込むことが多くなった。母様も同様だ。二人とも外に出て日を浴びることが叶わないのだからな。私は二人を助けたいのだ。だから、スイ、助けてくれ。君が欲しいもので私が用意できるものなら何でも言ってくれ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「スイ、頼む。俺たちの幼なじみを助けてくれ」
「頼みます、スイ。お二人とも私たちには大切な方々なのです!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
3人の力強い純粋な目が俺に向けられる。
手を貸してくれではなく、
助けてくれと
救ってくれと
ならば、俺のすることはただ一つ。


「俺の望みはただ一つ。俺の身体、頼むな?」
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