不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

文字の大きさ
上 下
8 / 227
第一章

7.助けて・・・

しおりを挟む
俺にとって一番相性の良い加護持ちは『光』か『闇』だ。そして、この2種は俺には察知し辛い加護。
普通の人間はこのような力は持っていない。持つとしたら精霊や妖精、神や仏に愛された者だけだ。
俺はその一人なのだが、俺は超が付くほど特殊人間で、俺の子孫を残せる人物など本来はいないのだ。
だけど、ここにいた、ジオルドが。
否、ジオルドともう一人・・・・・・・・・・。
「王子、否、殿下!貴方の親族に『闇』の者がいますね?」
「「「っ!!!」」」
三人がヒュッと息を呑み、目を逸らす様を見て、それは正解だったのだと知った。
「・・・・・・・・私には双子の弟・・・・・・・『闇』の力を持ったジルフォードがいる」
俺は彼の言動、行動で理解した。
この世界でも『闇』は悪なのだと・・・・・・・。
「な~、お前の弟どうしてんの?『闇』が悪だからってだけで拘束してんの?」
「っ!!あぁ、そうだ。自室から出ることが出来ないよう軟禁している」
「っ!!!」
この言い様だと「王子だから軟禁だけですんでいる」と言っているようなモノ。
普通の人だとどうなってたんだよ!投獄?処刑?
本当に腹が立つ!
本質も知ろうとしないでっ!
一息肺に綺麗な空気を入れて、
「で?本当にお前らは『闇』を悪だと思ってんの?」

俺にとってどの種の要素も加護も『悪』ではない。俺の持つ力の五要素は少々こちらとは異なるようで、「地」「水」「火」「風」「空」の全ての五要素を持っている。「空」という要素は聞いたことがない人も多いだろう。実際ゲームなどでは「空」ではなく、「光」と「闇」の六加護。だけど、この「空」は「光」と「闇」を併せ持つのだ。もちろん「空」だ。天候も左右させることができる。落雷や霰、嵐なども起こせてしまう危険な要素だ。
この要素だけは精霊や神など人が崇める全ての者の信用、信頼、全てがないと持ち得ない特殊能力で、俺が前の世界で疎まれたのもこれが最大の要因だ。これが使えるだけで、一国は墜とせると言われるほどの脅威なのだ。だからこそ「人間兵器」だったのだから。
でも、この異世界は違う。「光」と「闇」に分離している。
ということは、ゲームなどでよくある「闇は悪」が蔓延していてもおかしくはない。実際、今この三人は「悪」だと表明した。
巫山戯んな!誰が好き好んで「悪」になりたがろうかっ!
「悔しい・・・・・・何で、わからないんだよ、どいつもこいつも・・・・・」
「スイ??」
殿下は俺の身体をギュッと抱きしめてくる。本当に身体の相性は良いのだろう、安心する。
だけどっ!
「スイ、頼みがある。私の弟を助けてくれ」
「っ!!!」
殿下の声音は本当に寂しくて、辛い感情が交じっていて。
この人・・・・・・・・
「私だって嫌なんだ、弟と・・・・・自由に遊べないのが!私、アルバート、レイフォード、そして弟は幼なじみなはずなのに!なのに!弟だけ事実上幽閉だっ!『闇』の力を持っていただけで!何も悪いことしていないのに!」
俺を抱く力が更に増した。
縋り付くのを通り越して、俺に願っている。
『スイならどうにかできるのではないのか?』と・・・・・・・・・・。
本当に本当に心の底から弟公を思っていらっしゃる・・・・・・・・・光の色。

見えた!!!

この色が見たかった!
絶対に助けてと、藁にもすがる思いの色を!
人が悪いと思うだろう、だけど!
助けて、その後は?となっては俺の打つ手はない。
俺の手が届かないところで何かあっては嫌だ。
だけど、この思いの色で「助けよう」と思える。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった

藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。 毎週水曜に更新予定です。 宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

【連載】異世界でのんびり食堂経営

茜カナコ
BL
異世界に飛ばされた健(たける)と大翔(ひろと)の、食堂経営スローライフ。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

アズ同盟

未瑠
BL
 事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。  一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。  アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て  ……いや、お前は誰だ?  やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。  アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

処理中です...