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第一章
4.険悪な出会い
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『ね~ね~お兄さん、誰かこの森に入ったよ?』
俺は程よい湯に浸かって『ふは~~~』と深く息を吐き、疲れと『アレ』を取っていると、こっちの世界での妖精?いや、精霊が声をかけてきたのだ。
この綺麗な子たちが出てくると言うことは、『瘴気』の浄化が完了し、辛うじて生きていた動植物の生命が回復したと言うことなのだ。
本当に嬉しくて、声をかけてきた子を手に乗せて、ちょっと泣いた。
『も~~泣いてちゃだめ!私たちを助けた人が泣いちゃだめ!こっちが泣きたいくらいに貴方に感謝してるんだからね!だから、この森にいるうちは私たちが貴方を護るわ!』
と、もう、マジで超嬉しいことを言ってくれるんだよっ!
じゃなくてね!
「大丈夫だよ、俺は。だって、俺超強いからね?マジ強い人間だから。そんじょそこらの人間にはやられないよ?」
『そんなことわかってるわ!この森を救ってくれた人だもの!!でも、お兄さん異世界人でしょう?力の使い方違うんでしょ?だって、こっちの魔法とは異質な力を感じるもの!』
「ん、正解!俺は異世界の人間だよ?もうね、超ね、酷い目に遭っちゃったんだよ!でもね、君たちに逢えて、今俺超幸せだからね!君たちを助けられて、本当に良かったって思ってるよ!」
『うわっ!超良い人間!私が人だったら絶対に嫁になるのに!じゃなくって、誰か近づいて・・・・・・・』
精霊が言葉を詰まらせ、凝視している方に目を向けようとすると、頭の上に影が出来て・・・・・・・・。
「う、う、うわぁぁっぁあぁぁぁっぁぁぁっぁつ!だ、誰っ!?」
緋色の髪をワイルドに刈った野獣系美形のご尊顔が俺の目の前にあったのだ。
この俺が人の気配を感じないなんて!忍びとしてあってはならないことだ!!
だが、この森が『優しい』のであれば別の話だ。
自然は『心が清い人を許す』。俺はここの自然に許された人間だが、許される人間が俺だけとは限らない。ましてや、俺に危害を加えようとしてくる人間をこの森は許すはずがないので、これはわざと俺に気配を分からせないようにしたのだ。
森の気持ちは俺にはわからないが、ただ一つ。この人間は俺を穢す人間ではないとはっきりとしている。
「貴様、ここで何をしている」
ワイルドな男が俺に話してくるけど、いきなり『貴様』っ!?失礼でしょ、これ!
「俺がここで何をしていようが、テメーには関係ねーだろ?つか、見てわかれよ?風呂入ってんの?邪魔すんじゃねーよ」
「っ!貴様、私にそのような口をよくきけた物だな!」
「???その前にあんた誰?」
「っ!!!!!!」
男は真顔で、キラリと剣を閃かせる。
ふ~~ん、って感じ。だって、こいつに俺を斬る意志を感じないからな。
「それで俺を脅そうっての?ありえねんだけど」
そこで俺は気付く。こいつの後ろにまだ2人いることに。
そして、
「おい、そこの騎士の格好した白髪?銀髪なのか?暗くてよく分からんが、お前この風呂に浸かれ!穢されきってるぞ!!」
俺が指名した騎士風の若者はキョトンとした顔をし、俺と対面している男と同じくレイピアだろう物を閃かせる。
が、隣のまたしても暗くてよく分からんが金髪?の王子様ルックの男がそれを制し、
「この者の何が『穢れている』と思うのだ?」
と。
俺には判るのだ、特殊な人間だから。だから、前の世界でも疎まれた、嫌われた、そしてこの世界に堕とされた!!
でも、後悔はしていない。一生懸命に俺なりに生きた。そして、今はその力の恩恵を受けているのだから、文句なんて言える立場ではないのだ。
「俺にはわかんだよ、魂の色がな。つか、この世界どうなってんだ?心臓とは違う位置に何かあるのが普通なのか?ま、いいか。つか、それが黒い靄で覆われてんだよな。おい、手を出せ」
俺は自分の手をそいつに向けるが、野獣系騎士がその手を撥ね除ける。
「気安く触るな!どこの者とも分からぬ者が我らに気安く声をかけるなど笑止!」
「ふ~~~ん。じゃ、いいや。俺さ、男に裸見られる趣味ねーの。だから、どっか行ってくんない?」
湯から出ていた肩を深く湯に潜らせると、ソッと手を目の前に出された。
「ん?」と手の持ち主を見ると、俺が気にしていた騎士だった。
「あ、綺麗な銀髪だ・・・・・・・」
「ふふふ、ありがとうございます。この髪を気に入ってくださったようで」
「ん、本当に綺麗だな・・・・・・」
俺はそっと彼の横髪に触れると、『助けて』と小さな呟きが彼の体内から聞こえた。咄嗟に彼の手を掴み、そして目を閉じると、本来彼が持っている『水色』が暗く濁り、力を出し切れていないのがわかった。
彼の持つ能力は『治癒』だ。治癒をし続け、自分のこの動力機関であろう箇所が汚れても治癒を続けなければいけない環境。そして、ついに・・・・・・
「あんた、もう『治癒能力』を使えていないな?」
「「「っ!!!!!」」」
3人の驚き様が確信に変わる。
「とりあえず、文句言わず、まじでこの湯に浸かれ!俺と同じが嫌なら出るからさ。って俺まだ出られないけど・・・・・・・。う~~ん、あと、って!」
その男は衣服を脱ぎ、俺と同じ湯に浸かってきたのだ。
「あ、な、何、この湯・・・・・・・・・・」
男の身体から黒い靄が溢れ出てきて空気に消えていく。
「うん、そのまま浸かってろ。そこの精霊がその靄が取れたとき教えてくれ、え、何?はぁ?お前たちの姿ってこっちでも見えないの?!まじか~~~~。じゃ、取れたらお兄さんの髪の毛引っ張ってあげてくれるか?」
精霊は『いいよ~~~』と言って、彼の肩に止まって鼻歌を歌っている。機嫌が良いみたいだ。
「あの、貴方は見えるのですか、ここに住まう精霊たちが?」
「ん?ああ、『幽霊』以外は見えるよ?というか、こっちでも精霊って言うのか、自然に存在する人には見えない生命は俺には見えるんだよな~。俺の特殊能力の一つだな」
「っ!!!あ、あの、そこの二人もこの湯に入っても問題はないのですか?」
「ん?問題はねーよ。だが、この湯はあんたみたいな力を使いすぎて動力機関が疲弊している人に有効なんだ。野獣系のこの人はその機関は疲れているようだけど、何かで憂さ晴らししてんだろう?女?酒?ま、適度に発散しているみたいだから汚れてはないな」
「っ!女を買いに行く暇なんてない。酒だ、酒!」
「あ、そ。で、そっちの王子様系は、機関より身体と心が疲弊しているな。睡眠と美味しい物を食べたらすぐに回復する・・・・・あ、俺持ってるわ。風呂から出たら俺特性の秘薬飲んでみ?一気に調子が良くなるはず。あ、駄目か。こっちの世界で同じ薬草が生えているのかわからんし、あげることできねーな。う~~ん、ま、ここで縁を切るなら渡すか。うん、ま、いいや」
「一人で納得するな。私は貴殿とここで縁を切るつもりはないぞ?」
「えええええええええええええええええええええええええええええええっ!」
それは困る!俺は一人で生涯をここで生きようと考えていたのに!風呂に入ったあと、誰もこの森に近づけないよう結界を張って、しかも、森の姿を見られないようにしようと思っていたのに!
「そこまで見抜ける貴殿を私が手放すとでも思ったのか?」
うっわ~~超美形王子様?に凄まれちゃいました。
「で、俺をどうすんの?脅す?飼い慣らす?それとも傀儡にすんの?」
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
「???だって、剣やレイピアを閃かせたあんたらを信用なんてできねーだろ?」
「ぐ、確かに。それは謝るが・・・・・・」
「それに開口一番が『貴様』だからな~。完全に敵扱いじゃんか。そんな人に従う気は更々ねーけど?」
「それはこちらが悪いな。謝罪の言葉しかない」
いきない王子様?は服を脱いで、俺たちと同じ湯に入ってきた。
「「「へ????」」」
この「へ?」には俺が含まれるからな!
「アルバート、お前も入れ。気持ちいいぞ、この湯」
王子は手で湯を掬い、顔にかけている。
うっわ~~~水も滴るいい男っぷり!
銀髪の騎士も超綺麗なんだけどな!!
そして、この野獣だってワイルドで格好いいことには違いないのだ。
ぐぐぐぐ、平凡な俺の姿が悔しい!だけど、日本人特有の黒い目ではない。俺の系譜では強い力を持った者の目は『紫』なのだ。
だからこそ、恐怖の対象として忌み嫌われたのだ。
ま、そんなことはどうでもいい。王子様の命令で、野獣系さんも湯に入ってきた。
あらら、野獣系さんの身体からも靄が少し出てきて消えていった。
「っ!軽い!なんだこれは!?」
重かったであろう内臓の位置を摩り、俺を見る。
「俺特性の秘薬だ。と言っても、自然界に存在する薬草で作った物で、しかも俺の『能力』がないと作れないんだよ。つか、これ俺の常備薬なんだけど、こっちに来て使っちゃったからストックなくなったんだけどな」
「お前の能力?」
「あ~な~ちとさっきから失礼じゃね?『貴様』とか『お前』とかさ。俺の名前は風磨 翠蓮。『スイ』と呼んでくれ。で、そっちは?」
「大変失礼をした。私はフィルハート帝国第三王子ジオルド・フィルハート。こちらの赤髪でスイ殿に失礼を働いたのが帝国宮廷第三騎士団団長アルバート・シュタイン。君が当てた『水』の加護を持つ銀髪の騎士が副団長のレイフォード・アシュレイだ」
「っ!!!!つか、まじで王子と騎士だったのかよぉぉぉぉぉ!めっちゃ俺失礼満載じゃん!あ、いや、この世界を知らん俺だから許せ!」
「『この世界』?スイ殿は何者なのだ?」
「俺に『殿』は必要ないよ?呼び捨てでいい。俺さ、今日こっちに召喚されたの。えっと~あっちの方の国なんて言ったっけ?確か~~~」
地図で見たけど、どうでも良くて覚えきれなかったみたい。
「もしかして『バーミリア』ではないのか?」
「そ、それそれ!そこでさ、俺が『聖女』ではないって知ると、金もくれず城から追い出して、民衆に石を投げられて~怪我をして~~城砦外に出たら命狙われて殺されそうになって~、で、目の前に『瘴気』で生命の危機が迫っているこの森があって~、で浄化して今俺ここにいるんだけどな」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「ん?」
「なんという不運というか、浄化能力?」
「その前に殿下、召喚は国間の規定で行ってはならないと取り決めがあったはずですが」
「ああ、前召喚の際に生じた厄災でな。協定を破り、あまつさえ違えば人間としての尊厳を冒す行動をする国を我々帝国としては見過ごしておけんな。これは陛下に即刻伝えねば!」
俺は全くもって関わりたくないのだが、この人たちが見逃してくれるはずもない。
だって、銀髪のレイフォードだっけ?が、俺をじーーーーーーーーと見張ってるんだからさ。
面倒な事になりそうだな。
と、思っていたのは俺だけで。
俺は程よい湯に浸かって『ふは~~~』と深く息を吐き、疲れと『アレ』を取っていると、こっちの世界での妖精?いや、精霊が声をかけてきたのだ。
この綺麗な子たちが出てくると言うことは、『瘴気』の浄化が完了し、辛うじて生きていた動植物の生命が回復したと言うことなのだ。
本当に嬉しくて、声をかけてきた子を手に乗せて、ちょっと泣いた。
『も~~泣いてちゃだめ!私たちを助けた人が泣いちゃだめ!こっちが泣きたいくらいに貴方に感謝してるんだからね!だから、この森にいるうちは私たちが貴方を護るわ!』
と、もう、マジで超嬉しいことを言ってくれるんだよっ!
じゃなくてね!
「大丈夫だよ、俺は。だって、俺超強いからね?マジ強い人間だから。そんじょそこらの人間にはやられないよ?」
『そんなことわかってるわ!この森を救ってくれた人だもの!!でも、お兄さん異世界人でしょう?力の使い方違うんでしょ?だって、こっちの魔法とは異質な力を感じるもの!』
「ん、正解!俺は異世界の人間だよ?もうね、超ね、酷い目に遭っちゃったんだよ!でもね、君たちに逢えて、今俺超幸せだからね!君たちを助けられて、本当に良かったって思ってるよ!」
『うわっ!超良い人間!私が人だったら絶対に嫁になるのに!じゃなくって、誰か近づいて・・・・・・・』
精霊が言葉を詰まらせ、凝視している方に目を向けようとすると、頭の上に影が出来て・・・・・・・・。
「う、う、うわぁぁっぁあぁぁぁっぁぁぁっぁつ!だ、誰っ!?」
緋色の髪をワイルドに刈った野獣系美形のご尊顔が俺の目の前にあったのだ。
この俺が人の気配を感じないなんて!忍びとしてあってはならないことだ!!
だが、この森が『優しい』のであれば別の話だ。
自然は『心が清い人を許す』。俺はここの自然に許された人間だが、許される人間が俺だけとは限らない。ましてや、俺に危害を加えようとしてくる人間をこの森は許すはずがないので、これはわざと俺に気配を分からせないようにしたのだ。
森の気持ちは俺にはわからないが、ただ一つ。この人間は俺を穢す人間ではないとはっきりとしている。
「貴様、ここで何をしている」
ワイルドな男が俺に話してくるけど、いきなり『貴様』っ!?失礼でしょ、これ!
「俺がここで何をしていようが、テメーには関係ねーだろ?つか、見てわかれよ?風呂入ってんの?邪魔すんじゃねーよ」
「っ!貴様、私にそのような口をよくきけた物だな!」
「???その前にあんた誰?」
「っ!!!!!!」
男は真顔で、キラリと剣を閃かせる。
ふ~~ん、って感じ。だって、こいつに俺を斬る意志を感じないからな。
「それで俺を脅そうっての?ありえねんだけど」
そこで俺は気付く。こいつの後ろにまだ2人いることに。
そして、
「おい、そこの騎士の格好した白髪?銀髪なのか?暗くてよく分からんが、お前この風呂に浸かれ!穢されきってるぞ!!」
俺が指名した騎士風の若者はキョトンとした顔をし、俺と対面している男と同じくレイピアだろう物を閃かせる。
が、隣のまたしても暗くてよく分からんが金髪?の王子様ルックの男がそれを制し、
「この者の何が『穢れている』と思うのだ?」
と。
俺には判るのだ、特殊な人間だから。だから、前の世界でも疎まれた、嫌われた、そしてこの世界に堕とされた!!
でも、後悔はしていない。一生懸命に俺なりに生きた。そして、今はその力の恩恵を受けているのだから、文句なんて言える立場ではないのだ。
「俺にはわかんだよ、魂の色がな。つか、この世界どうなってんだ?心臓とは違う位置に何かあるのが普通なのか?ま、いいか。つか、それが黒い靄で覆われてんだよな。おい、手を出せ」
俺は自分の手をそいつに向けるが、野獣系騎士がその手を撥ね除ける。
「気安く触るな!どこの者とも分からぬ者が我らに気安く声をかけるなど笑止!」
「ふ~~~ん。じゃ、いいや。俺さ、男に裸見られる趣味ねーの。だから、どっか行ってくんない?」
湯から出ていた肩を深く湯に潜らせると、ソッと手を目の前に出された。
「ん?」と手の持ち主を見ると、俺が気にしていた騎士だった。
「あ、綺麗な銀髪だ・・・・・・・」
「ふふふ、ありがとうございます。この髪を気に入ってくださったようで」
「ん、本当に綺麗だな・・・・・・」
俺はそっと彼の横髪に触れると、『助けて』と小さな呟きが彼の体内から聞こえた。咄嗟に彼の手を掴み、そして目を閉じると、本来彼が持っている『水色』が暗く濁り、力を出し切れていないのがわかった。
彼の持つ能力は『治癒』だ。治癒をし続け、自分のこの動力機関であろう箇所が汚れても治癒を続けなければいけない環境。そして、ついに・・・・・・
「あんた、もう『治癒能力』を使えていないな?」
「「「っ!!!!!」」」
3人の驚き様が確信に変わる。
「とりあえず、文句言わず、まじでこの湯に浸かれ!俺と同じが嫌なら出るからさ。って俺まだ出られないけど・・・・・・・。う~~ん、あと、って!」
その男は衣服を脱ぎ、俺と同じ湯に浸かってきたのだ。
「あ、な、何、この湯・・・・・・・・・・」
男の身体から黒い靄が溢れ出てきて空気に消えていく。
「うん、そのまま浸かってろ。そこの精霊がその靄が取れたとき教えてくれ、え、何?はぁ?お前たちの姿ってこっちでも見えないの?!まじか~~~~。じゃ、取れたらお兄さんの髪の毛引っ張ってあげてくれるか?」
精霊は『いいよ~~~』と言って、彼の肩に止まって鼻歌を歌っている。機嫌が良いみたいだ。
「あの、貴方は見えるのですか、ここに住まう精霊たちが?」
「ん?ああ、『幽霊』以外は見えるよ?というか、こっちでも精霊って言うのか、自然に存在する人には見えない生命は俺には見えるんだよな~。俺の特殊能力の一つだな」
「っ!!!あ、あの、そこの二人もこの湯に入っても問題はないのですか?」
「ん?問題はねーよ。だが、この湯はあんたみたいな力を使いすぎて動力機関が疲弊している人に有効なんだ。野獣系のこの人はその機関は疲れているようだけど、何かで憂さ晴らししてんだろう?女?酒?ま、適度に発散しているみたいだから汚れてはないな」
「っ!女を買いに行く暇なんてない。酒だ、酒!」
「あ、そ。で、そっちの王子様系は、機関より身体と心が疲弊しているな。睡眠と美味しい物を食べたらすぐに回復する・・・・・あ、俺持ってるわ。風呂から出たら俺特性の秘薬飲んでみ?一気に調子が良くなるはず。あ、駄目か。こっちの世界で同じ薬草が生えているのかわからんし、あげることできねーな。う~~ん、ま、ここで縁を切るなら渡すか。うん、ま、いいや」
「一人で納得するな。私は貴殿とここで縁を切るつもりはないぞ?」
「えええええええええええええええええええええええええええええええっ!」
それは困る!俺は一人で生涯をここで生きようと考えていたのに!風呂に入ったあと、誰もこの森に近づけないよう結界を張って、しかも、森の姿を見られないようにしようと思っていたのに!
「そこまで見抜ける貴殿を私が手放すとでも思ったのか?」
うっわ~~超美形王子様?に凄まれちゃいました。
「で、俺をどうすんの?脅す?飼い慣らす?それとも傀儡にすんの?」
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
「???だって、剣やレイピアを閃かせたあんたらを信用なんてできねーだろ?」
「ぐ、確かに。それは謝るが・・・・・・」
「それに開口一番が『貴様』だからな~。完全に敵扱いじゃんか。そんな人に従う気は更々ねーけど?」
「それはこちらが悪いな。謝罪の言葉しかない」
いきない王子様?は服を脱いで、俺たちと同じ湯に入ってきた。
「「「へ????」」」
この「へ?」には俺が含まれるからな!
「アルバート、お前も入れ。気持ちいいぞ、この湯」
王子は手で湯を掬い、顔にかけている。
うっわ~~~水も滴るいい男っぷり!
銀髪の騎士も超綺麗なんだけどな!!
そして、この野獣だってワイルドで格好いいことには違いないのだ。
ぐぐぐぐ、平凡な俺の姿が悔しい!だけど、日本人特有の黒い目ではない。俺の系譜では強い力を持った者の目は『紫』なのだ。
だからこそ、恐怖の対象として忌み嫌われたのだ。
ま、そんなことはどうでもいい。王子様の命令で、野獣系さんも湯に入ってきた。
あらら、野獣系さんの身体からも靄が少し出てきて消えていった。
「っ!軽い!なんだこれは!?」
重かったであろう内臓の位置を摩り、俺を見る。
「俺特性の秘薬だ。と言っても、自然界に存在する薬草で作った物で、しかも俺の『能力』がないと作れないんだよ。つか、これ俺の常備薬なんだけど、こっちに来て使っちゃったからストックなくなったんだけどな」
「お前の能力?」
「あ~な~ちとさっきから失礼じゃね?『貴様』とか『お前』とかさ。俺の名前は風磨 翠蓮。『スイ』と呼んでくれ。で、そっちは?」
「大変失礼をした。私はフィルハート帝国第三王子ジオルド・フィルハート。こちらの赤髪でスイ殿に失礼を働いたのが帝国宮廷第三騎士団団長アルバート・シュタイン。君が当てた『水』の加護を持つ銀髪の騎士が副団長のレイフォード・アシュレイだ」
「っ!!!!つか、まじで王子と騎士だったのかよぉぉぉぉぉ!めっちゃ俺失礼満載じゃん!あ、いや、この世界を知らん俺だから許せ!」
「『この世界』?スイ殿は何者なのだ?」
「俺に『殿』は必要ないよ?呼び捨てでいい。俺さ、今日こっちに召喚されたの。えっと~あっちの方の国なんて言ったっけ?確か~~~」
地図で見たけど、どうでも良くて覚えきれなかったみたい。
「もしかして『バーミリア』ではないのか?」
「そ、それそれ!そこでさ、俺が『聖女』ではないって知ると、金もくれず城から追い出して、民衆に石を投げられて~怪我をして~~城砦外に出たら命狙われて殺されそうになって~、で、目の前に『瘴気』で生命の危機が迫っているこの森があって~、で浄化して今俺ここにいるんだけどな」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「ん?」
「なんという不運というか、浄化能力?」
「その前に殿下、召喚は国間の規定で行ってはならないと取り決めがあったはずですが」
「ああ、前召喚の際に生じた厄災でな。協定を破り、あまつさえ違えば人間としての尊厳を冒す行動をする国を我々帝国としては見過ごしておけんな。これは陛下に即刻伝えねば!」
俺は全くもって関わりたくないのだが、この人たちが見逃してくれるはずもない。
だって、銀髪のレイフォードだっけ?が、俺をじーーーーーーーーと見張ってるんだからさ。
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