リアル

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一人残された俺は、頭の中を整理する。

九重は俺の前で殺された。

富澤が追っている連続殺人犯は、九重の前に富士八も殺害したのだろう。

待てよ。

九重が殺された時点で、富澤は「連続殺人」と言っていた。

富士八と九重の2人でも連続殺人だが、もしかすると、更に被害者がいるのかもしれない。

更に、連続殺人というからには、九重の事件と同じ「何か」があるのだろう。

凶器ーーいや、それは判明していないはずだ。

となると、現場に残された痕跡、もしくはシチュエーションか。

九重のPCをインターネットにつないで検索してみる。

【事件 富士八】

珍しい苗字だから必ずヒットすると思ったが、それらしい事件は出てこない。

検討違いなのだろうか。

【事件 九重】

試しに検索したが、こっちもヒットしない。

おかしい。

キーボードに再び指を乗せた時、富澤が部屋に入って来た。

「おい、行くぞ」

「どこにです?」

「まぁ、着いてこい」

富澤は何故かニヤリと笑った。

九重の家を急かすように出た俺は、富澤の車に乗せられる。

「いいか、着くまでに俺の知っている事を話してやるから、耳の穴かっぽじってよく聞け」

アクセルを踏みながら続ける。

「俺と富士八は、ダチだった」

夕暮れ時の空はオレンジに輝いていた。

「富士八は、オカルトマニアだった。幽霊はもちろん、未知の生き物やら、妖怪やら、怪奇現象や都市伝説を調べては、酒のあてとして、よく話をしていた」

「本当に仲が良かったんですね」

オレンジの空がラベンダー色に侵食されつつあるのを眺めながら答えた。

「まあな。そのうち富士八は、誰かに呼ばれている夢を見るようになったんだ。おかげで不眠症気味だってぼやいてた」

住宅街は消え、車は寂れた一本道を進んでいく。

「ある日、あいつは俺に電話をしてきたんだ。だが俺は仕事で、着信に気づいたのは1時間ほど後だった」

一本道のはるか先に、次の街の明かりが見えて来た。

「あいつは着信だけじゃなく、位置情報も送って来ていた。かけ直しても電話に出ないんで、不安を感じた俺は、あいつを探しに行った」

胸ポケットからタバコを取り出すと、富澤は火をつける。

「俺がそこに着いた時には、あいつは棒立ちしたまま、固まっていた」

吐き出された紫煙を気にするように富澤は窓を少し開く。

「あいつの側には、男が死んでいた」

「え?」

「もちろん、あいつーー富士八がやったんじゃないのは、死体を見てすぐに分かった」

「どうしてです?」

「あれだよ。スパンと大きな包丁で体が半分にされたみたいだったからな」

九重と似ている。

「それから、あいつは別人になった。と言っても、酔っぱらうと、あいつだったんだがな」

「どう言う意味です?」

灰皿にタバコを押し付ける。

「そりゃ、肌感っていうのか?俺には、シラフの時の奴と、酔った時の奴は、まさに別人だったんだ」


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