リアル

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一ノ瀬一いちのせはじめ17歳、臨界高校の3年生らしいな」

俺の視界にはところどころ黄ばんだ天井が写っていた。

「聞いてるか?」

暖かく、比較的ツルツルした感触があるのは掛け布団のようだ。

「一ノ瀬さんよぅ、喋れないのか」

目玉を動かすと、中年の男が見えた。

30代後半くらいだろうか。無精髭を生やし、眉間に深い皺を寄せ、何故か心配そうな眼差しを俺に向けている。

「もう少ししたら、親も来てくれるから安心しろ」

ネイビーのスーツは年季が入っているように見えた。

「ところで、腹は減ってないか?」

俺の視線に気づいた男がニヤリとすると同時に、腹の虫がグウと鳴った。

俺は生きている。
そうだ、まだ生きているのだ。

「まずは飯だな」

理解したと言わんばかりに、男は立ち上がると、部屋を出て行った。

ゆっくりと部屋の中を見回す。

空っぽの隣にあるベッドの奥には大きな窓があるり、外からの眩しい日差しがリノリウムの床を照らしている。

反対側を向くと、小さな鏡が付いた洗面台。近くには、先程男が出て行った引き戸が1つ。

ーー病院か。

重たい上半身を持ち上げると、軽い眩暈がした。

「起きて大丈夫か?」

引き戸が開き、男が顔を覗かせる。

「飯食いながらする話じゃないが、話を聞かせてくれないか?」

トレイを手にした男は、ベッドの隣にある椅子に腰をかけた。

「あなたは?」

トレイの上には、親子丼とパックの牛乳が乗っている。

「おお、俺か?」

まるで給食みたいだと思いながら、俺はトレイを受け取った。

「俺は富澤、刑事だ」

「でしょうね」

この状況で俺の側にいるのだから、だいたいの察しはついていた。

九重彩ここのえあや、知り合いか?」

「ここのえ?死んでた人?」

富澤は、ああ、と相槌を打ちながら足を組んだ。

「お前、何であそこにいた?」

スプーンで親子丼をすくい、口に運ぶ。

「覚えてないです」

「それにしては冷静だな。飯も食えるし」

俺に何があったのか思い出せない。

「まぁいい。とりあえず知っている事を話してくれないか?」

「むしろ僕に、何があったか教えてくれませんか?」

ふぅんと深い息を吐いた富澤は、俺の様子を伺いながら話を始めた。
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