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教師の子 7
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俺は母の旧姓になり、転校する事になった。母の実家から近い公立だった。最初は旧姓のせいで父の事は気が付かれなかった。でも、同じ県内で転校したし、父が母の実家に来なかった訳ではないから、俺の父親があの教師だと広まるのはどちらにしろ時間の問題だったのかもしれない。
最初は同級生の母親からだった。
『あの子と遊んじゃいけない』
『いじめをもみ消したあの先生の子どもだなんて』
同級生の親から向けられた憎しみはきつかった。哀れむ様な言葉を言いながら、睨み付けてくる保護者達は確実に俺を嫌っていた。それは何故?俺は何をしたんだろう。俺の中に流れる父さんの血が憎い?俺の後ろに見える父さんの影が憎い?
親の因果は子に報いなきゃいけないの?父さんは俺が苦しんでも、苦しくなんかないよ。俺が苦しんでいる事すら知らないもの。俺の事なんて何とも思ってないもの。
最初は仲良くしてくれていた子達がどんどんと離れてくのは、悲しい。何となく近寄らなくなっていく、話しかけなくなっていく。そしてクラスメイトははっきりとした攻撃に変化していく。
それは通りすがりの悪口から始まった。そして暴言になる。
でも、それがひどくなる前に、久保が俺に手を伸ばした。「一緒にサッカーしようぜ」
最初は二人で遊んでいた。そのうち、妹の藍ちゃんが混じった。藍ちゃんはすごく下手だったけど、一緒にサッカーをした。そのうち藍ちゃんの友達や、他のクラスの久保の友達が混じり始めた。
でも、クラスメイトは近寄ってこなかった。悪口や無視の様な形でのいじめはあったが、それ以上には発展しなかった。それは久保のおかげだった。
ある時、久保が皆の前で言った。「それ以上やったら、お前等だって立派な加害者じゃん。何が違うんだよ、言ってみろ」文句も言い訳もたくさんしていたけど、クラスメイトはそれ以上してこなくなった。そこは俺が我慢出来るギリギリのラインだった。
先生は何も見ず、何も言わず、何もしてくれなかった。父と同じだ。
久保と俺は地元の中学校へと進学した。小学校時代のいじめの加害生徒達の半分は他の中学校へと進学した。残りの数人が俺の噂を広めていった。
いじめを放置して生徒を自殺に追い込んだ教師の子、俺にはえらく長いあだ名が付いた。
いじめはどこからがいじめなのだろう。小学校の時の様に、クラスメイト全員が無視したり、悪口を言ってきたりしてきた訳じゃない。数で言えば、小学校の時の半分。無視をされたり、悪口を言われたり、根も葉もない噂を流されたり、たまに物がなくなったりする事もあった。廊下で思いっきりぶつかってきたけど、サッカー部で鍛えていたお陰で相手の方が痛がっていた。
ニュースで見るいじめはあまりにもひどくて、自分がされた事がいじめだったのか、人としてよくある事なのか、今でも俺には判断出来ない。
でも、辛かった。
通りすがりに舌打ちされ、暴言を吐かれ、ぶつかってきたりする同級生たち。俺が嫌そうな顔をすると、ニヤッと笑う。中にはあからさまに、楽しげに笑う子もいた。
人はどうすれば、他人が苦しんでいる姿を見て喜ぶ様になるのだろう。俺は誰かが苦しむ姿を見て、楽しそうに笑えるだろうか。いや、笑いたくはない。そこに落ちるまで、落ちぶれたくもない。例えそれが俺をいじめた奴らでも、俺はそこにだけは落ちたくない。
最初は同級生の母親からだった。
『あの子と遊んじゃいけない』
『いじめをもみ消したあの先生の子どもだなんて』
同級生の親から向けられた憎しみはきつかった。哀れむ様な言葉を言いながら、睨み付けてくる保護者達は確実に俺を嫌っていた。それは何故?俺は何をしたんだろう。俺の中に流れる父さんの血が憎い?俺の後ろに見える父さんの影が憎い?
親の因果は子に報いなきゃいけないの?父さんは俺が苦しんでも、苦しくなんかないよ。俺が苦しんでいる事すら知らないもの。俺の事なんて何とも思ってないもの。
最初は仲良くしてくれていた子達がどんどんと離れてくのは、悲しい。何となく近寄らなくなっていく、話しかけなくなっていく。そしてクラスメイトははっきりとした攻撃に変化していく。
それは通りすがりの悪口から始まった。そして暴言になる。
でも、それがひどくなる前に、久保が俺に手を伸ばした。「一緒にサッカーしようぜ」
最初は二人で遊んでいた。そのうち、妹の藍ちゃんが混じった。藍ちゃんはすごく下手だったけど、一緒にサッカーをした。そのうち藍ちゃんの友達や、他のクラスの久保の友達が混じり始めた。
でも、クラスメイトは近寄ってこなかった。悪口や無視の様な形でのいじめはあったが、それ以上には発展しなかった。それは久保のおかげだった。
ある時、久保が皆の前で言った。「それ以上やったら、お前等だって立派な加害者じゃん。何が違うんだよ、言ってみろ」文句も言い訳もたくさんしていたけど、クラスメイトはそれ以上してこなくなった。そこは俺が我慢出来るギリギリのラインだった。
先生は何も見ず、何も言わず、何もしてくれなかった。父と同じだ。
久保と俺は地元の中学校へと進学した。小学校時代のいじめの加害生徒達の半分は他の中学校へと進学した。残りの数人が俺の噂を広めていった。
いじめを放置して生徒を自殺に追い込んだ教師の子、俺にはえらく長いあだ名が付いた。
いじめはどこからがいじめなのだろう。小学校の時の様に、クラスメイト全員が無視したり、悪口を言ってきたりしてきた訳じゃない。数で言えば、小学校の時の半分。無視をされたり、悪口を言われたり、根も葉もない噂を流されたり、たまに物がなくなったりする事もあった。廊下で思いっきりぶつかってきたけど、サッカー部で鍛えていたお陰で相手の方が痛がっていた。
ニュースで見るいじめはあまりにもひどくて、自分がされた事がいじめだったのか、人としてよくある事なのか、今でも俺には判断出来ない。
でも、辛かった。
通りすがりに舌打ちされ、暴言を吐かれ、ぶつかってきたりする同級生たち。俺が嫌そうな顔をすると、ニヤッと笑う。中にはあからさまに、楽しげに笑う子もいた。
人はどうすれば、他人が苦しんでいる姿を見て喜ぶ様になるのだろう。俺は誰かが苦しむ姿を見て、楽しそうに笑えるだろうか。いや、笑いたくはない。そこに落ちるまで、落ちぶれたくもない。例えそれが俺をいじめた奴らでも、俺はそこにだけは落ちたくない。
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