無責任な大人達

Jane

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可哀想な子 13

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 父が新しい歯科医院の店舗候補を見に行く日、学校が創立記念日で休みだった。私は久しぶりに父と出かけた。新しい店舗候補は住んでいる家から数駅離れた駅前にあった。駅前の新しいビルの中、大きなガラスの窓からは駅がよく見えた。父と不動産屋さんは店舗の中を隈なく回っている。
 私は退屈のあまり外を見ていた。
息が止まる。
 駅前に藍ちゃんがいた。私服だった。誰かを待っているかのように、辺りをキョロキョロしている。学校はどうしたんだろう。今、どこの学校にいるんだろう。今、何をしているんだろう。
 心臓がどくんどくんと早鐘を打つ。今行けば、謝れるかもしれない。走って行けば。謝りたい。でも、今更謝っても、藍ちゃんはどんな事を言うんだろう。許してくれないかもしれない。私は藍ちゃんに罵られるかもしれない。足が震えている。動けない、動き出す事を何かが拒否しているみたいだ。
 藍ちゃんがにっこり笑う。瀬戸先輩が走って来て、彼女の側に寄る。瀬戸先輩は見た事もない程、嬉しそうな優し気な笑顔を藍ちゃんに向けた。瀬戸先輩が藍ちゃんの手を取った。2人は手を繋いだまま、駅の中へと消えていった。
 藍ちゃんが笑っていた。それは間違いなく嬉しかった。
でも、なんで瀬戸先輩なの?どうして私の好きな人なの。瀬戸先輩に廊下で拒絶されてからも、私は彼の事が好きだった。教室の窓から瀬戸先輩がサッカーをしている姿や、体育をしているところを見ていた。卒業してしまい、地元の大学に進んだのを知ってからはSNSでその姿を追っていた。瀬戸先輩は大学でもサッカーを続けていて活躍していたから、SNSでもその姿を見る事が出来た。だから私はずっと好きなままだった。
 何で藍ちゃんなの。
 藍ちゃんは何でも持っている。グループが出来た頃、私は藍ちゃんが好きだった。優しくて、早紀ちゃんの様に自慢話も悪口も言わなかった。彼女はグループの中の子にはないものをたくさん持っていた。多分、グループの中の子は彼女の何かに嫉妬したんだと思う、それはほんの些細な事で本人たちは認めたくない事。家族の仲が良い事、センスの良いハンドメイドの小物、彼女を好きになってくれる男の子がいて、学校外でも男友達もいる、理由は些細な事だ。
 私たちは後付けの様に藍ちゃんの悪い所を上げたが、そんな事を言ったらグループの子達は最低な事をしていて、悪いところばっかりだ。人を傷付けて、それを見て笑い、嘘を付いて誤魔化し、どの口で人の悪口を言ったのだろう。今思えば嫉妬している自分を隠していたのかもしれない。私は両親から、お兄ちゃんからも愛されている彼女が            羨ましかった、とても。でも、それを認める事ができなかった。
 そう思い出して、また苦しくなった。そして今、彼女は瀬戸先輩からも愛されていた。
 息が出来なくなった。父が叫びながら駆け寄ってきた。

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