無責任な大人達

Jane

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可哀想な子 11

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 古賀先生の言葉は誰にも響かなかった。古賀先生はいじめが駄目だと言ったが、その同じ口で大事にしたくない、と言った。早紀ちゃんたちはそんな先生をバカにしていた。早紀ちゃんだけじゃない、私もだ。私たちは古賀先生が何をしても、庇ってくれるのを知っていた。古賀先生だけじゃない、あの学校は悪い事をしても、私たちを庇ってくれる。
 でも、それはきっと私の為を思っての事じゃない。
 古賀先生はちょっとお世辞を言えば、あり得ない程喜んだ。だから、皆猫なで声ですり寄った。先生と生徒の距離が近いのが我が校の誇り、それが口癖だった。生徒は馬鹿にしていたけど、先生は本気でそう思っていたのかな。
 だから、しばらくすると私たちは違う子に再び繰り返した。早紀ちゃんは「死ね」と言わなくなった、首を絞めなくなった。でも、いじめた。あの学校に先生など、大人などいないのも同じだった。
 私たちのグループは早紀ちゃんもバカにしていた。早紀ちゃんはグループの中心に陣取っていたが、裏ではバカにされていた。早紀ちゃんは自分の家の財力と親の仕事の自慢、人の悪口しか言わない子だった。今思えばそれしかなかったのかもしれない、私もそうだから。
 早紀ちゃんは何時も誰かをいじめよう、傷付けようとしていた。だからグループでは性格ブス、人として終わってる、そうバカにされていた。自分たちだって同じ事をしているのに、私たちは自分の事を棚にあげて早紀ちゃんをバカにして、嫌っていた。
 自分で付いた嘘を自分自身が信じ込んで真実にしてしまう、私は多分嘘つきだ。
 だから今、すごく苦しい。
 私は藍ちゃんに誰かが言っている悪口を伝えた。嘘もたくさんついた。集団無視も一緒にした。悪口も言っていた。睨みつけて、机の中の物を漁って、バカにして、私は加害者だった。許してもらえないのだから、謝罪する事すらしていないのだから、罪を償ってもいないのだから、私は今でも加害者のままだ。
 教室は何時もピリピリしていた。気が付かないのは先生だけで、半数以上の生徒はにやにや笑っているか、私たちのグループよりだった。悪口を言い、睨みつけ、同じ様な事をしていた。
 一部の男子だけが私たちを非難した。一度、その男の子は早紀ちゃんと言い争って、早紀ちゃんは大泣きした。先生はその男子の言い分すら聞かずに怒りだして、私たちに謝れと言った。早紀ちゃんは当然の事だと言った。私たちは被害者だって。先生はその男子も傷付けた。
 藍ちゃんは学校中からいじめられた、先生も間違いなく加害者だった。
 どうして先生は止めてくれなかったの?
 何故私はひどい事をし続けたの?
 苦しくて、苦しくて、そして情けない。母にした事、藍ちゃんにした事、それ以前もっと前から私は何時も誰かにひどい事を言っていた、していた。幼稚園、小学校、習い事、仲の良い友達にさえも。自分が同じ事をされたら泣きわめいて、父に泣きつく癖に。私は色々な人の人生をめちゃくちゃにした。もう二度と取り戻す事が出来ない。
 早紀ちゃんは何故平気な顔で学校に来れたの?何故古賀先生は平気な顔で教師を続けているの?
 ただ、苦しい。息が出来ない程。
 自分のした事の罪の重さを知って怖くなった、有紗ちゃんが言った言葉が何時からか永遠に私の頭の中で回り続ける。藍ちゃんはどうしているんだろう?
 自分が恥ずかしい。そして、私は哀れだ。
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