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ジャック 視点

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  初めに言っておく。俺は女好きではない。
  少し人よりも、振られてからの立ち直りが早いだけの話。
  それも、オリヴィアさんに出会う前までの話だ。

  妹のエレーナに怒られた時に「本気で好き」とは、何かを考えた。
  その時に答えは出なかった。

  その疑問を抱えつつもオリヴィアさんに恋をしていた俺は、オリヴィアさんと付き合う事になった。

  オリヴィアさんは、俺に色々な事を教えてくれた。
  オリヴィアさんと付き合ってから、俺の世界が輝いた気がした。

  俺が剣の稽古を始めると、オリヴィアさんは薬の調合を始めた。

  今までの女の子達は、いつまで稽古をしているのよ!  と、怒り出したがオリヴィアさんはそれが無い。たいてい、終わったの?  頑張ったわね。と返事が返ってくる。
  俺は幸せだった。

  薬の調合に使う薬草を山に取りに付き合った時。手で引っこ抜く事が難しい太さの薬草を、剣で根本近くを切り落とした。それを見たオリヴィアさんは、素敵な笑顔でお礼を述べてくれた。
  とても可愛かった。俺は幸せだった。

  そして調子に乗った俺は、関係無い草や木の枝も切って行った。
  オリヴィアさんに叱られたので、次からは道端に落ちていた、木の枝を剣で切って披露をした。
  オリヴィアさんは、たくさん褒めてくれた。
  俺は幸せだった。

  それなのに……

  オリヴィアさんは、急に俺に別れてを告げて居なくなってしまった。
  ハーヴェス領中探しても見つからない。

  この時はじめて、エレーナの言っていた事が分かった。

  俺は、本気でオリヴィアさんの事が好きだったんだ!

  俺はオリヴィアさんを探したが見つからなかったので、友人のルイスに相談をした。

  そうしたら、重大な手掛かりを掴めた。
  まさか、オリヴィアさんがグリデーラ侯爵家のご令嬢だったなんて……
  オリヴィアさんも言っていなかったし、勉強不足の俺は全く気が付かなかった。

  俺は今グリデーラ侯爵家の客間にいる。先程ルイス達が出ていった。
  室内にはグリデーラ家の使用人が居るが、俺は気にせずに話し掛ける。

「俺、オリヴィアさんと別れたくない」

「ジャック……私もジャックと別れたくないわ。けれど、ジャックには夢を諦めて欲しくないの。私みたいになって欲しくないのよ。私が爵位を継げば、ジャックの助けが必ず必要になるわ」

「俺はずっと騎士になりたかった。けど、今は違うんだ。俺はオリヴィアさんだけの騎士になりたい。薬の調合がやりたいなら、空いた時間を見つけてオリヴィアさんは続けたらいい。俺が勉強を頑張るから。オリヴィアさん一人に負担を掛けないように頑張るから、だから……オリヴィアさんが好きです。俺とずっと一緒にいて下さい」

  オリヴィアさんからすぐに返事が返って来なかったので、俺は不安になった。
  それはほんの少しの時間だったのかもしれないが、今の俺には長く感じられた。
  オリヴィアさんの方から小さな声が聞こえて来た。

「本当に?  本当にいいの?  ジャックと一緒にいられるの?」

「もちろんだよ。俺、勉強も社交も頑張る。二人で頑張れば、薬作りの時間をきっと作れるよ。グリデーラ侯爵に二人で相談に行こう」

「ありがとう、ジャック!  私もジャックが好き。ずっと一緒にいたいわ」

  この時のオリヴィアさんの笑顔を、俺は一生忘れない。
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